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中坂美祐が作る20年代のアイドル像

 最近、読んで面白かった本が2冊あります。
 1冊は評論家の宇野常寛さんが編集した「CITY202X 震災復興から地方創生へ、オリンピックからアフターコロナへ」という「まちづくり」のこれからについてさまざまな対談や記事を集めた雑誌です。
 もう1冊はビルボードジャパンチャートディレクター礒崎誠二さんの「ビルボードジャパンの挑戦 ヒットチャート解体新書 データを読み解きアクションを加速する」というビルボードジャパンが出来るまでから始まり、2023年のデータを元に日本の音楽シーンについて考える1冊です。
 
 まず、「CITY202X」の中で興味深い対談がありました。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の柳瀬博一さん、埼玉大学院人文社会科学研究科教授の宮崎雅人さん、そして、日本総合研究所創発戦略センターエクスパートで内閣府規制改革推進会議専門員の井上岳一さんが、地方創生をテーマに対談した記事です。
 特に印象的だったのが、古い世代の人たちの「豊かな地方」のモデルが更新されておらず、「昔のように豊かにならなければいけない」というモデルに囚われてしまっているということです。そうではなく、ドイツやイタリアの30万人世代の都市の成功例をモデルにしてはどうか、という案を柳瀬さんは提唱しています。ドイツのハノーファには、日本の地方中核都市よりも立派な石造りの建築物やオペラハウスがあるそうです。また、ドイツでは人口30万人以上に都市の規模を大きくし過ぎないという不文律があるところもあるそうです。それ以上人数が増えてしまうとその街の自治がきかなくなり、街が汚れてしまうこともあるからだそうです。つまり、大きな規模ではなく、その都市の規模にあったまちづくりを試してみるのは、どうかということですね。
 そして、井上さんは、「規模の経済」で回っていた工業化の時代の終わりを対談の終盤で語ります。群れで集まって大量生産していれば豊かになるという時代が終わるのだと思うと語ります。確かに日本の人口減少は加速してますもんね。特に地方は。これからは規模ではなく「山の民」や「海の民」のように狩猟採集的に動く「個人の力が重視される世界観」に戻ると語られています。
 これを受けて柳瀬さんは、日本のブランド果実の種子の海外流出を例にだしながら、これからはブランドの概念を「品種」だけに留めるのではなく、「生産地」、「生産農家」、「生産方法」まで広げればいいと語ります。野口さんというレンコン農家の方が作るレンコンは5000円から5万円で売られているそうです。野口さん以外の人がレンコンを5万円で売ろうとしても、一流レストランからは声がかからないわけです。レンコンを買おうと思っている人は、土地や生産者に紐づいているからこそ、このレンコンを使おうと思うわけですね。そして、地域で協力してその地域で個人ブランドを育てていくべきだとも。そうすることで、新しい街のタグが生まれていくんですね。
 
 この本を読みながら、ふと思い浮かんだSKE48のメンバーがいます。それが、チームSの中坂美祐さんです。彼女は、今月、新しい仕事が二つ決まりました。


 

 
 2010年代前半は、SKE48というグループ自体や選抜メンバーがコラボの対象として選ばれてきました。まさに「規模の経済」の攻め方でした。しかし、時代の変化と共にグループアイドルも飽和状態となり、枠もどんどん限られてきました。
 それに対して、今月の中坂さんのこのコラボの案件は、どちらも地元名古屋の関連企業です。SKE48という「地元」があるグループだからこそできるコラボです。愛知県と縁のある企業だからこそ、生まれた縁。そして、中坂美祐さんだからこそ、自分の企業がコラボしたい、応援したいと思わせてくれるものがあるんだろうな、と思います。SKE48というグループとしてのブランド力、信頼もあると思いますが、中坂美祐さん自体のブランド力もあるんだと思います。日本には沢山のアイドルがいますが、その中で彼女が選ばれるわけですから、やはり、この人だからという魅力があるわけです。

 それでは、なぜ、中坂美祐さんにはブランド力があるのでしょう?
 そこで2冊目の本「ビルボードジャパンの挑戦 ヒットチャート解体新書 データを読み解きアクションを加速する」をヒントにしていきたいと思います。
 この本の中で、チャートを形成していく要素を時代の流れと共に分析しています。たとえば、オーディションからそのアーティストを好きになっていくファンもいれば、楽曲から好きになるファンの方もいます。たとえば、近年は、顔出しをしなくても楽曲のファンになるところから入る人が増えていますよね。CDを買うのではなくストリーミング中心なのもこのタイプのファンの方に多いそうです。
 更に、この本ではファンには成長モデルがあることが示されます。簡単に分けると4レベルです。
① ホワイト層( アーティストを「知らない」層 )
② グレー層( ラジオやテレビ、SNSなどで「知る」層 )
③ ライトファン層(意識的にテレビや配信を「視聴する」層)
④ コアファン層(CDやダウンロードで「購入する」層、あるいはコンサートやグッズを購入したり、ファンクラブに加入する層)

 皆さんは、今の推しに対して、どの層に属するでしょう?
 僕は中坂さんに関しては、②と③の間を行ったり来たりしていますが、今回のティーンズイベントでは、彼女に1票いれたので、一瞬、④になった日もあるかも知れません。
 そして、この本では④のコアファンのタイプが変わってきたということが書かれています。これまではサービスを享受して消費するだけだったコアファンたちが、マーケットに自律的に関与しようとする「ファンダム」に成長してきたという時代背景もあると語られます。KーPOPのファンダムの成功例がもっと顕著ですが、個人で押していく時代からファン同士で良いシナジーを生んでいく時代が来ているのかも知れません。
 そういえば、SKE48の親会社のゼストさんも「ファンダム」の発表してたけど、あれからどうなったんですかね…( 遠い目 )。
 話を中坂さんにあてはめていくと、まず、中坂さんのコアファンの方々のセンスがいいというのがあると思います。たとえば、僕の雑誌「かける人」でもお世話になった週刊中坂さんは、毎週月曜日に一週間の中坂美祐さんのニュースを1枚の広告にまとめて発信してくださいます。これは④のコアファンだけでなく、僕のような②と③のあたりにいるファンにはありがたい推し事です。他にも積極的にSHOWROOM配信の内容をまとめてくださる方や劇場公演やトーク会での発言などを残してくださる方もします。
 また、N口さんを始めとして、企業側の方もこの人と仕事をしてみたい、応援してみたいと思わせる要素が彼女にはあるんだと僕は思います。その魅力がないと、ファンの方も発信しようと思わないでしょうし、企業の方も「うちの商品やブランド名を託したい」と思わないでしょう。
 僕のようなSKE48村にたまにしか訪れない、山から山へ移動するマタギドライブの人間から観た中坂さんの魅力は、ひたむきさだと思います。普通の人なら飽きてすぐにやめてしまうことも、普通の人なら「わざわざするのは、ちょっと面倒だな」と思うことをやれることだと思います。ボクシングのメイウェザーが「お前らが休んでいるとき、俺は練習している。お前らが寝ているとき、俺は練習している。お前らが練習しているときは、当然俺も練習している」ということをインタビューで語っていましたが、一流の人って、やるべきことから目を逸らさずに考えて行動できる人なんだろうな、と思いました。
 だからこそ、中坂美祐というブランドを信用してみようと思わせてくれるのかも知れません。
 20年代のアイドル像として、グループの看板だけではなく個人で戦える人の時代が来るのかも知れません。そして、その人のファンダムが魅力を可視化できれば、どんどんその魅力は広がっていくのではないか、と思います。先ほどのファンの起因の話でいえば、中坂さんのファンは、彼女が歌う楽曲のファン、持ち歌が増えると更にファン層は増えて行くと先ほど挙げた本のデータに当てはめていくと僕は考えています。

 「ビルボードジャパンの挑戦 ヒットチャート解体新書 データを読み解きアクションを加速する」の最後に「音楽はビジネスを生むが、ビジネスは音楽を生まない」という言葉が登場します。ファンダムの熱はビジネスを生みますが、ビジネスでファンダムの熱を生み出すことはできません。100歩譲って熱は生めても熱狂は生めません。僕の作っている雑誌もこの熱狂が止まり、次の号が出るまで1年かかりました。
 今、あなたの所属しているファンダムに熱はあるでしょうか?
 もし、熱くなれるヒントが欲しいなら、中坂美祐さんに注目してみてください。何気ない毎日の更新の中に熱を帯びるヒントがあると思っています。そして、その発信をファンの方と良い意味でかけ算していくことで、結果が生まれてくるのでは、と思います。
 個人的には、彼女のブタさんの絵が好きなので、いつかブタさんの絵がお仕事につながるといいなあ、と思いながらこの記事を終わります。
 
 
 
 
 




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栄、覚えていてくれ
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