SKE48を更新した日2 チームS編
僕らの日常には、コンテンツが溢れています。
SNSの普及により自分が所属するコミュニティも増えています。
その反面、僕らが自由に使える可処分時間はそこまで増えていません。
できたら時間を無駄にせずに役に立ちそうな情報や自分の好きなものに時間をさきたい。
その結果、どんなことが起きるのか?
稲田豊史さんの「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在系」やレジ―さんの「ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち」、そして三宅香帆さんの「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」など、ここ数年この問題と向き合った良書が発売されています。ちなみに上記の3冊はどれも読みごたえがあり、データもしっかりして書かれているので、おすすめです。
さて、このコンテンツ過多の時代、我々はどう向き合っていけばいいのでしょう?
AIの発達により自分好みの音楽や絵も手に入りやすくなりました。
AIが製作した3分の曲を聴いている間に、別のテイストの3分の曲が20曲ぐらい出来てしまう世界に僕らはいます。また、毎日のように本がリリースされます。最近、自分のデビュー作の関係で毎日Amazonランキングを見ていますが「えっ、こんなに一日で本が出てるの?」と言いたくなるぐらい本も出ています。ネットフリックスなどの配信もそうです。毎週のように映画やドラマ、ドキュメンタリーが増えていきます。
それでも、気合いで追い続けるというのが1つ目の解決策だと思います。
倍速で観たりコンテンツの要約サイトを利用したりというのもこの解決策に繋がると思います。我々の時間は限られています。それを最大限有効に活用するためです。
ただ、僕はこの楽しみ方は、世間話の種としてコンテンツを消費するのには良いかも知れませんが、ちゃんと作品と向き合うにはあまり向いていない方法だと僕は思います。
それでは何か別の方法があるのか、というと一つのコンテンツを深く楽しむ、別の楽しみ方の角度を見つけるということがあると思います。
次々と新しいものを追い求めても、多分、全部は楽しみきれません。
ならば、自分が今、好きなものをより深く愛するのはどうか?
そして、その別の角度を手に入れるために、あえて新しい何かを自分の中に入れてみる。そうすると、自分が可処分時間に入れるコンテンツも大分絞られてくるのではないでしょうか?
さて、前置きが長くなりましたが、最近、僕は自分の中のSKE48を更新するということを始めました。2023年の6月末にあるnoteで「もうSKE48に飽きてしまった」と書いてから、じゃあ、そこでネガティブな感情に支配されるのではなく、2周目を楽しむにはどうしたらいいのか考えて行こう、というのがここ1年がぐらいの僕のnoteの裏テーマでした。
さて、今回更新したいと思うのが、SKE48チームS公演「愛を君に、愛を僕に」公演です。2022年5月28日から始まりました。DMMで初日の配信を観た時、何曲も彼女たちのパフォーマンスに涙を流したのを覚えています。
この公演は、他のチームの新公演よりも長い期間実施されています。その結果、オリジナルメンバーは何人も卒業しています。石塚美月さん、大谷悠妃さん、杉山歩南さん、竹内ななみさん、都築里佳さん、平野百菜さん。ううむ、書いていると懐かしい気持ちになってきますね。個人的にももたんとなーやんは、もう少し見ていたかったという気持ちがあります。そして、Wセンターを務めた青海ひな乃さんは、日本を離れて海外で活躍しています。果たして、今のチームSで感動出来るのか?
何も感じなかったらどうしよう?
そもそも、皆さんは今のチームSの「愛を君に、愛を僕に」公演って、どんな公演ですか?とお友達に聞かれたら、どんな言葉で説明しますか?
僕にも言葉が出てくるか不安でした。
ひょっとすると、ただ無味無臭な1時間40分ほどを過ごし、「や、やばい…。何も書くことがない…」という絶望感の中、「仮面ライダーアマゾンズ シーズン2」のエンディングテーマが流れるという展開もあるかも知れません。
ん、待てよ、「シーズン2」?
皆さんは海外ドラマはお好きでしょうか?
僕もいくつか何シーズンも付き合っている海外ドラマがあります。
ネットフリックスの「ストレンジャーシングス」や「コブラ会」、Amazonプライムの「THE BOYS」は全シーズン観ています。海外ドラマの場合、シーズンごとに人気キャラの退場や魅力的な新キャラの登場があります。これをチームSにあてはめるならば、Wセンターの一角である青海ひな乃さんが海外に行き、若手の才能豊かなメンバーの卒業を受けて、シーズン1が終了。今、まさにシーズン2の真っ最中なのではないか、という見方が出来るのでは、と僕は思います。先ほどの海外ドラマの魅力的な新キャラに当たるのが11期生や12期生組かも知れません。
つまり、「『愛を君に、愛を僕に』公演、シーズン2の主役は誰か?」それを観るという角度から僕は今回の公演を観てみることにしました。
更に、初演から本日までの間にこの公演のプロデュースを行った小室哲哉さんのインタビュー本「WOWとYeah 小室哲哉 時には起こせよムーヴメント」が発売されました( 2024年5月24日発売 )。
小室哲哉さんがプロデュースした代表的なアーティストの曲を各章に配置して語っているのですが、彼がこれまで曲作りの中で影響を受けたものや人を語っているのが印象的でした。たとえば、バッハやブラームス、リスト、メンデルスゾーンを聞きまくっていて、華原朋美さんの曲の中で「教会旋法」の「ドリア旋法」や「ヨナ抜き音階」を使っていることが語られています。安心してください。僕は文字だけ読んでもさっぱり意味がわからなかったので、すぐに「I`m proud」とそれぞれの楽曲法をYoutubeで検索して聴き比べしました。
もう一曲挙げると、小室さんの作詞した曲で僕が一番好きな「Can't Stop Fallin' Love」は「わたし」、「僕」、「君」、「あなた」と一人称と二人称が曲の中で混ざりあった歌詞が特徴的です。
これはどういった意図でこんな書き方をしたんだろう、と思っていましたが、この歌詞は映像が切り替わり、ある時は「私」の視点、その「私」を見ている男性の視点と変化していくそうです。小室さんは「俯瞰」という言葉を使いドローンのようにその自由自在に曲の世界を聴き手が楽しめるものをイメージしていたそうです。だから、「私」に感情移入する人もいれば、「僕」に感情移入する人もいるわけですね。ここまで読んで勘が鋭い方なら、「愛を君に、愛を僕に」公演でも一人称と二人称と三人称が混ざった曲が非常に重要な曲があることを連想しますよね。
この公演を更新するためのもう一つの視点として、プロデューサ小室哲哉さんの言葉をヒントにしようと思いました。
さて、僕がDMMで観たのは、9月3日のチームS「愛を君に、愛を僕に」公演です。
メンバーは赤堀君江さん・荒野姫楓さん・石黒友月さん・井上瑠夏さん・大村杏さん・上村亜柚香さん・北川愛乃さん・鬼頭未来さん・坂本真凛さん・杉本りいなさん・中坂美祐さん・仲村和泉さん・野村実代さん・原優寧さん・松本慈子さん・松川みゆさんです。
まず、僕はこの日の公演を一周して、次は気になったところは何回も巻き戻してもう一周しました。
その中で、感じたことを書いてみたいと思います。
まず、この日の公演の素晴らしかったことは、全員に見せ場がある公演になっているということです。上記の誰について聞かれてもこの日魅力的な場面が語ることが出来るようになっています。たとえば、MCで一気に杉本りいなさんの魅力に引き込まれましたし、上村亜柚香さんの自分がトーク担当ではない時の気配りと裏回しのさりげなさ、そして、など、書いていくときりがありません。
その中でもあえて、人と曲に焦点をあてて考えてみたいと思います。
まず、ある人物が歌っている時に、「負けるな!」と思ったメンバーがいます。それは井上瑠夏さんです。彼女が現在、青海ひな乃さんのポジションに入ることが多く、彼女のソロ歌唱の場面もいくつか見られました。その中で、やっぱりファンの方々も熱くて「るーちゃん」コールをしていきます。時としてその声と彼女の歌声がぶつかりあうことがあります。アイドルのコンサートでファンの方のコールは、アイドルを後押しするものと僕は考えていたんですが、彼女の「頼りは翼だけだ」の2番でのソロ歌唱部分では怒涛の「るーちゃん」コールに一瞬歌声が飲み込まれたかと思いきやそこから歌いきる表情とポーズが凄くよくて、この「負けるな!」と応援したくなる要素というのは、センターになる人が持っている何か大事な要素かも知れません。
次に僕が驚いたのが大村杏さんです。
最初の2曲はそこまで意識していなかったんですが、「旅立てジャック」の歌い出しで「えっ、この人、帰りの燃料を積んでないんじゃないの?」と心配になるぐらいの全力パフォーマンスで、結局、1周目はこの人を目で追っていました。「恋せよ乙女 エクスプロージョン」も久々に聴きましたが、「いや、ステップと腰の使い方だけでリズムをビジュアライズ化できるのすごいな!」と突っ込みたくなるぐらい表現のチャンネルを持っている人でした。「じゃあ、あの曲を担当したらどうなるんだろう?」と次の妄想をついついしてみたくなるメンバーです。
楽曲では「流星」が人選、照明ともに美しく、もし、カメコ席が公演であったらベストショットが沢山生まれたのではないか、と思います。あと、赤堀君江さんと石黒友月さんの二人は、2番で並んだ時に本当に絵になるな、と思います。この日の石黒さんの髪型が素敵でしたね。「ともだち」の時も絵になっていました。お二人ともモデル系のお仕事、是非、とってきてほしいです。そう、この公演ではいくつか二人で並ぶ歌割があるんですが、みなさんが印象的なものはありますでしょうか?「リとマ」の「それな!」で決める中坂美祐さんと松川みゆさんがこの日の個人的ベストコンビでした。
そう、松川みゆさんといえば、ワンシーン未来へと期待を抱かせるショットがありました。さわやかなスポーツ女子という感じがするのですが、「旅立てジャック」のラストで赤い照明で照らされている彼女の姿は、これからどんなかけ算が彼女の持っているポテンシャルを引き出されるか想像させられました。
どの曲を歌うかでメンバーの魅力が引き出されるというかけ算もあれば、メンバーによって曲の新しい魅力が見えてくるというかけ算もあります。「小悪魔ブルーベリー」と野村美代さんのかけ算、あるいは、「ともだち」と北川愛乃さんのかけ算はかなり曲の解像度を上げるものになっているのではないかと思います。是非、歌詞ごとの表情に注目してみてください。本当に歌詞を顔で表現するということに関して、サボっているところが無いですから。
そして、この公演にはユニットセンターもいます。
そう、坂本真凛さんです。
ラスト前のMCで豊かな表情を見せられたあと、最後の「マイ・ドリーム」の中で上を見上げている時のさっきまでと違う真剣だけど柔らかい表情のギャップが本当に良くて。「嵐からの隠れ場所」のような優しい曲調での笑顔もいいですが、もっとゆっくりとした感じの笑顔が素敵でした。
一人一人書き出したら切りがないのですが、松本さんがドラフト1期生から加入しているところを見ている中西優香推しだった人間としては、もう本当に頼もしくて、曲の中でも観客やチームを今、この人が頑張って引っ張ってるんだろうな、と感じさせるところが何か所もありました。
ちなみに公演を楽しんでいる感じが凄くしたのが荒野さんでした。全体曲でも目を奪われてしまう華と笑顔は、曲を映えさせるな、と思いました。
同じく今、公演をエンジョイしてるんだろうな、と感じさせるのが中坂美祐さんでした。「恋するつぼみ」での王道アイドル的なパフォーマンスも良いのですが、「青春Growing」での躍動感が素敵です。「ともだち」の「慰めてみたい」のところも美しかったです。
原優寧さんに関しては、見ているだけで笑顔がこちらにも移りそうなところが魅力的ですよね。「恋するつぼみ」の世界観で色々なタイプの「楽しい」を見せてくれるところが凄かったです。あっ、「喜怒哀楽」の「楽」ってこんなにバリエーションがあるんだ、と。
チームSのシーズン2の主役はだれか?
今、この公演は全員が主役候補という状態ではないか、と僕は思います。
多分、一日一日で主役は変わっていきますし、どの軸でみるか、たとえば、楽曲のビジュアライズ化でみるか、それとも応援したいと思わせる期待感でみるか、SKE48が持つダンスへの情熱でみるか、楽しいを分けてくれた回数でみるか。
ちなみに、久しぶりに通しで「愛を君に、愛を僕に」公演を聴きましたが、「恋せよ 乙女エクスプロージョン!」を久しぶりに聴いて、うわあ、相変わらずパンチ力あるわ、と思ったり、ここ数日は小室サウンドばっかり聴いていたので、「LOVE RENOVATION」の正当後継者感。
そして、やはり「ともだち」の美しさ。
「わたし」、「あなた」、「あの子」。
一人称と二人称と三人称が美しく配置されたこの文学的な歌詞が素晴らしいです。メンバーが指で書いているのは誰かの名前なんでしょうか?
良い曲ってメンバーの良さも引き出すと思っていて、この曲のパフォーマスをしている時なら全員の美しかった箇所を挙げることが出来るのでは、と思います。あれだけ躍動していたチームSのメンバーがじっと止まって、佇まいだけで魅せる曲でもあります。照明に照らされた赤堀さんの美しさ。荒野さんの切ない表情。この記事を書きながら、繰り返しこの曲を聴いています。聴いても聴いても底が知れない要素がこの曲にはあると僕は思っています。
小室哲哉さんは「WOWとYeah 小室哲哉 起こせよ、ムーヴメント」のインタビューの最後で自分の楽曲についてこんなことを語っています。
僕がさきほど挙げた「ともだち」もそうですが、彼が作る音楽には、サステナブルに楽しめる要素があると思います。
そして、チームSが長い歳月を経て手に入れた新公演にも。
使い捨てにするには、もったいない様々な要素をメンバーやファンの方々と楽しみながら、次のシーズンも観ていきたい。
そう、今のチームS公演は、サステナビリティがあり、毎回主役が見つかる公演になっていると僕なら紹介すると思います。
あなたならどんな視点で、今のチームS公演を語るでしょう?
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