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挑戦者に戻ったAKB48のカッコ良さについて

 突然ですが、皆さんからAKB48は今どう見えているでしょう?
 もう知ってる子がいない?終わったグループ?
 いやいや、もし上記のような認識なら勿体ないと僕は思います。
 まずは、こちらのMVをご覧ください。

 初見の感想は、「僕が観たかったSKE48をAKB48がやってる!!」でした。
 まず、MVは岡田奈々さん演じる少女のインタビューから始まります。
 ダンスが苦手である、という話です。
 そこから地方の学校(伊東市立宇佐美中学校)を舞台にダンスにかける高校生たちの物語が描かれます。
 この映像が本当に素晴らしくてですね。
 まずは、引きの絵の多さ。
 主人公たちがいる風景がこれでもか、というぐらい映ります。
 これまでのAKB48のMVではさまざまな美しい風景や非日常的な空間が登場しました。しかし、今回の「根も葉もRumor」では驚くぐらい日常の風景が映されます。それを助けるのが引きの絵です。
 電車が来る駅で踊るところや住宅がある坂を走って降りて来るところ、日常の中にAKB48のメンバーたちが居ることで、全く違う感じを受けます。それは、煌びやかな衣装ではなく、Tシャツや制服姿で風景の中に居る時間が長いです。
 これはいったい何を示唆しているのか?

 48グループが衰退してしまった理由は色々と考えられると思います。
 坂道の躍進、NGTの事件、握手会の行き詰まり、総選挙の終わり、などなど。どれも離れているようで呼応しているようにも感じます。
 中でも僕は総選挙が終わったことで、何か大きな物語の終わりを迎えたのではないか、と思います。
 「総選挙」という唯一ゴールデンで放送され、その日だけはファンコミュニティーの外の人も48グループを気にかける入り口になるイベント、それが総選挙でした。今夜の結果で自分の推しの運命が変わってしまうかもしれない。そんなイベントでした。
 SKE48ファンの一人である僕にとってAKB48は、追いつき追い越すべき存在でした。特に2014年に単独のドーム公演という大きな物語を終えたSKE48にとって、再びドームに単独で立つことと総選挙1位獲得は、2018年までの新しい大きな物語でした。しかし、それが終わってから、目的地を失ってしまい、個人戦が始まってしまったのでは、と僕は思うようになりました( あくまで僕の感想です )。局所的に物語が生まれることはありましたが(12周年公演フェスなど)、じゃあ、どこに向かうんだろう、という目標がコロナ禍もあってか見えにくくなりました(何度も書きますが僕個人の感想です。明確に見えてらっしゃる方がいれば申し訳ないです )。
 総選挙の時は、AKB48という仮想敵がいたと思います。あのグループを超えねばと(ただ、シングル選抜は日本代表的な集め方だったので、果たしてAKBでくくっていいのかという疑問もありますが)。
 総選挙が終わることで、ライバルも消えてしまったのかも知れません(別に戦う必要もないとも思うんですが…)。
 SKE48に心を打たれる瞬間としては、挑戦者として挑んでいた姿にありました。華のあるAKB超選抜たちとは違うものを見せなければいけない。だったら、がむしゃらに全力のダンスを踊る。ある雑誌は「持たざる者たち」と表現しましたが、「持たざる者たち」の挑戦に僕は心を打たれましたし、応援したくなりました。


 コロナ禍で多くの芸能活動が自粛され、どこを目指すかという目標も設定しずらくなりました。「日常」という小さな物語が繰り返される。
 この曲のMVの風景はまさに小さな物語が繰り返される「日常」を表したものだと思います。引きの絵で撮ることで、「日常」という油断すると飲み込まれそうな巨大なものの中に熱く少女たちが躍動する様子が輝いてみえます。
 1番のサビのあたりは、風景と躍動するメンバーたちの姿が全部カッコいいです。
 特に誰もいないプールで踊るシーンで、一人だけ後から踊り始めるところが鳥肌が出るぐらいカッコ良かったです。
 思えば、学校という「日常」の繰り返しの中で「ダンス」という青春をささげられるものの為に全力で頑張る姿が良いんですよね。多分、完成度でいえばKーPOPのアイドルたちの方が上なんでしょうけど、そうではなく、苦手ながらも主人公ががむしゃらに頑張る姿に心を打たれました。

 今のAKB48は、2021年アイドル界の頂点かというと、頷く人は少ないかも知れません。かつての挑戦者だった乃木坂46を始めとする坂道グループに抜かれてしまったのではと思います。
 でも、今のAKB48は抜群にカッコいいんですよね。 
 単独の選抜にしたことで、独自色が出始めたというのもあるんですが、もう1回小さな物語から始める、全力で1回1回の出演やライブで勝負していく。
 かつて、指原莉乃という48グループの化け物を誕生させてしまったが為に、48グループの中に「面白さ」や「内輪ノリ」というものが「挑戦」や「がむしゃらさ」よりも比率が高くなった時期があったと思います。
 しかし、指原が去り、他のグループも選抜に入らなくなり、なんなら古参メンバーたちまで卒業していったAKB48は、いま新たに物語を全力で作っている途中かも知れません。
 

 MVの大サビでは三重高校ダンス部の皆さんとのダンスでの共演があります。それは「恋するフォーチュンクッキー」でのみんなで踊ってみようという緩さではなく、本気でないものは振り落とすような勢いを感じます。それに対して疎外感を感じる人も居るかもしれません、でも、抜群にカッコいいですし、これをSKE48のダンスメンバーで見てみたいなあ、という欲望が生まれます。

 今のAKB48は小さな物語からのスタートかも知れません。
 でも、それがいくつも積み重なると、クロニクルになっていきます。
 挑戦者だった頃のAKBは沢山面白いアイディアが生まれ、様々なチャレンジをしていきました。
 そう、新世代による新しいグループでありながら、歴史も持っています。これは他の新規アイドルにはない強みだと思います。これからどんな物語を生み出していくか、凄く楽しみです。
 この「根も葉もRumor」が転換期のポイントになると期待して、この記事を終えます。
 夢も現実もボーダレスにするのは、きっと、彼女たちの熱だと信じています。


※こういうのSKEもどんどんあげていいんだよ…。


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栄、覚えていてくれ
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