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vol.5 語る者であり、語られる者である

 皆さんは、何オタクでしょうか?
 あえてオタクという書き方をしましたが、ファンでも良いですしマニアでも良いですし、コレクターでも良いです。ひょっとすると、フリークの人もいるかも知れません。
 最近、僕が推している映画「花束みたいな恋をした」の中で、お笑いや小説や漫画の趣味が同じ二人が出会うシーンがあるんですが、「えっ、あなたも知ってるの?」という嬉しさと、もっとこの人に自分の好きを分かって欲しいという気持ちが伝わる素敵なシーンです(でも、それが後々、二人の分断を明確化することに…)。小さいコミュニティーの中で好きなことを語る二人が、社会人になり「労働」していくことで摩擦が生じて行き、感覚が鈍化していき、時間の好きだったものに何に興味を失う悲しさ。忘れられない映画になりました。
 

 僕はSKE48にハマる前は乙女ゲームが好きで「薄桜鬼」という新選組を題材にしたゲームにどハマりしましてね。関西に住んでいたこともあり、仕事の合間に京都へ史跡巡りにも行ったもんです。それなりに新選組には詳しくなったわいと思っていたんですね。ところがですね。2013年6月2日のSKE48の公式ブログを読んで、僕の心はざわつき始めます。
 鎌田菜月という研究生が書いたブログで、最近、新選組にハマっているというので、メンバーを観た時に沖田、土方、原田、はいはい。相馬主計?そうまとのも?最後の局長?な、なんだと…。
 鎌田さんの底知れぬ新選組愛に震えつつも、当時、中西優香推しだった僕としては、新しいタイプの知性派メンバーが入ってきたし、アニメや漫画にも詳しいので、2次元同好会に入ってほしいな、ぐらいの認識でした。
 それから、少しずつ鎌田さんというか6期生や一部のD1の方を避けるようになりましてね。昨年、食わず嫌いはよくない!と彼女について調べていくと、なかなかに奥深いし人間としての魅力もある方でした。
 特に鎌田さんの魅力の一つとして、趣味に対する愛の強さです。
 上記の新選組以外にも、漫画やアニメについてもSKE48に加入前から深く愛していて、「オタク」でもあったんですよね。ここで僕が書く「オタク」の定義をしておくと、ある対象物を愛し、それについての自分の言葉を持っている人としておきます。
 彼女の「オタク」力は、「おしゃべり漫画サロン」に出演した際にも発揮されます。
 ちょっと2018年9月30日のブログを読んでみましょう。


 この日のブログを読むと、学生の頃から、自分の好きなものを受け取り、頭の中で咀嚼して、趣味が同じ人と話っていたのではないかと想像してしまいます(2018年1月2日のアメブロで、オタク繋がりということで小中学生からの友達との縁も良かったですね)。
 それをアイドルになっても継続している。
 アイドルという語られる側の人間になっても、語る側の人間の気持ちも分かる。ファンとしての自分が頭の中に居るというのは、ジャンルこそ違えど自己プロデュースにおいて非常に重要だと思います。

 個人的に鎌田さんの趣味に関するレビューで好きなブログは、「鬼滅の刃」の完結に関するものです。ちょっと読んでみましょう。

 「秘密の宝石みたいな作品」という表現と、それがみんなに知られていく時の気持ち。
 これは以前書いた「鎌田菜月と音楽」の中で、鎌田さんが心動かされた曲ではないか、と提示した「才悩人応援歌」の歌詞にもミュージシャンのたとえで出てきますよね。
 漫画に親しんでいるからこそ、人気と共に路線が変わった漫画も知っているし、心配もあったんでしょうね。完結という選択をした作者への心からのリスペクトも感じます。最後に自分のことをそっと添える構造も上品ですよね(そういえば、2019年1月31日のデビルズラインの感想を書いた時も同じ上品な添え方をしていました)

 ただですね。
 趣味って同じぐらいのレベルの人がいると良いんですが、そうでもない時ってありませんか?なんなら、コミュニティーの中で自分しか知らなかったとしたら。
 勿論、SNSとかで同じ仲間を見つけることは出来るんですが、日常生活の中で共通言語として自分の好きなものを共有したいことはないでしょうか?
 そんな時に、人は何をするか。
 布教ですね。
 2019年10月13日のブログを読んでみましょう。

 自分の好きなものだからこそ、親しい人にも共有したい。
 勉強不足で「ヴァイオレット。エヴァ―ガーデン」は劇場版しか知らないんですが、テレビ版の10話ってお母さんの手紙の回でしょうか?
 好きなことを語っている時の鎌田さんの文章は熱量があって、読んでいるこちらも気持ち良いんですよね。自分が多少知っているものだったら尚更。ああ、だから、自分の趣味を知ってもらいたいのかな、ともふと思いました。この嬉しさや分かる分かるという気持ちの共有。好きの押し売りにならないように気を付けているというのは、2020年5月3日のブログで書いてましたね。

 そして、「重めの作品」が好きな鎌田さん。

 イギリス文学になりますけど、ダン・ローズ作品「コンスエラ」とかおススメしたいですね。自分の好きなジャンルを提示することで、読者の読書暦の扉が開いて、思わず「それならこういうの知ってる?」とコミュニケーションを作ることが出来るのも上手いですね。

 僕らは大人になっていくに連れて、可処分時間が減っていきます。
 労働してお金をもらう代わりに、好きなものに使える時間は少しずつ減っていきます。
 それでも、好きなものと手を離さずに愛し続けられる。
 そう考えるとオタクとしての鎌田さんって素晴らしいな、とこの記事を書きながら思いました。
 だって、まだこれはアニメという彼女の趣味の一部をかいつまんだだけで、彼女の趣味の銀河は「歴史」、「将棋」等、今も広がり続けているわけですから。
 自分の趣味や大切な何かに使う時間を、これからもキープしていきたいですね。

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