「アイドル」と「記憶」(SKE48 五十嵐早香公式ブログ 最終回の感想)
1 ブログの内容について
五十嵐早香さんは2022年2月15日に卒業を発表しました。
最終回のブログは、2月28日、彼女の活動最終日に更新されました。
そこでは、アイドルになるまでの心の動きと、アイドルになったからの日々がまず綴られます。
そして、苦労して手にいれたものを手放す自分を「分からない」と書きながらも、自分の決断を否定したくないことも語られます。
それでもアイドルだった2年間、そして自分を推してくれた「みんな」を「おばあちゃんになっても」覚えていると語ってくれます。
彼女にとってSKE48がいかに幸せな時間だったかが伝わってきます。
それだけでは、ありません。
彼女にとって「みんな」と同じぐらい幸せなもの楽しいものがSKE48に加入して手に入りました。
それは、「書く」ということです。
文字を書いている時に感情が大きく動かされる。
この感覚は何か創作をしたことがある人なら、きっと感じるものではないでしょうか?
この楽しくなって予定とは違うものを書き始めるという行為こそが、創作の面白さだと思います。
彼女は、あと数時間だけ、SKE48にいる間だけ自分のことを思い返して欲しいと語りかけます。その後は、決してしまっても構わないとも。
なんて切なくて儚い呼びかけ。
まるで、アイドルみたいじゃないですか。
限られた時間の中でファンを笑顔にして、惜しまれつつも去って行く。でも、きっと彼女や彼女の推しだった人の記憶の中ではずっと生きていく。
こんなのまるで、アイドルです。
早香先生のことを邪道と語る人もいますが、彼女はしっかりとしたアイドルだったと思います。
ひょっとすると、明日になれば彼女のことを忘れて、次の推しに行こうする方も居るかもしれません。それを全く責めようなんて思いません。
ただ、僕はまだお別れしたくない。
特に、「書くこと」の楽しさを知った彼女にここで別れたくない。
そこで、彼女の「書くこと」を守る場を一つ作りたいと思います(紙で一つ、ひょっとするとwebでもう一つ)。多分、2022年2月28日の時点では多くの人が一笑に付すと思いますが、笑わなかった人達と一緒に、笑った人達を良い意味でびっくりさせたいと思っています。
だから、五十嵐早香さんのことを忘れません。
むしろ、これからの活動でずっと覚えていたいと思います。
ありがとうございました。
あなたがSKE48に居た2年間は、あっという間でしたが、とても楽しくて幸せでした。
2 組み合わせの面白さ
最終回のブログは「アイドル」と「記憶」
3 文体の面白さ
最終回は、自分が書くことを今まで以上に意識した回だと思います。
村上春樹の「ドライブマイカー」の中に出て来る、表現するために一回自分というものを脱色していく、それでもにじみ出てくるものが表現となっていくのと同じ感じがします。
自分の文章について何度も内省的なことを書きつつ、徐々に核心の部分が浮き上がってくるところが本当に素晴らしかったです。そして、思いました。まだまだ「書くこと」で色々と楽しいことができるよ、と。
多分、明日から暫くは、聞こえてくるテレビの情報番組の言葉も、読みかけの小説の文章も、映画の中のセリフも、全部退屈に感じるかも知れません。
だから、早めに次の早香先生の文章が読みたいなと思っています。
ああ、本当に楽しかったなあ。
4 最後に
最後までこの記事に付き合ってくださってありがとうございます。
五十嵐早香という人と文章のことを考えている時間が、本当に楽しかったです。