SKE48の「Tick tack zack」をあなたに全力で進めたい！

はじめに

　株式会社リットー・ミュージックから刊行された「音楽未来会議」が面白いです。音楽ジャーナリストの柴那典さんと、音楽プロデューサーでエンターテックエバンジェリストの山口哲一さん、同じく音楽プロデューサーで株式会社ＬＡＢの脇田敬さんの鼎談を書籍化したものです。
　１０年代まではオリコンが音楽のチャートを支配していて、初週の売り上げが注目されていましたが、２０代からはビルボードジャパンが一気に力をまし、サブスクなどの再生回数なども加味した総合的な数字がヒットチャートの指針となったことが序盤で語られます。
　この本の中ではわかりやすく、どれだけ「買われた」かではなく、どれだけ「聴かれた」かが反映していると表現されますが、それは音楽としては、非常に理想的な状態だと言えます。
　２０２４年のＮＨＫ紅白歌合戦でもビルボードジャパンのランキングが反映されたのでは、と考えられる人選でしたね。
　ちなみに、１０年代の変われる時代を作ったのが、まさにＡＫＢ４８グループで、未だにそのいっぱい「買われた」かが指標の一つになっている感はいなめません。アイドルファンとしては感覚が麻痺していますが、音楽ファンとしては、徐々にこの売り方から脱却できればいいのになあ、と考えています。だって、良い曲がリリースされてヒットされたとしても「はいはい、どうせ、握手会商法でしょ？」と語られるのはもったいないし、悔しいからです。

　そんなことを考えていると、先日、２０２５年３月１２日にリリースが決定したＳＫＥ４８の「Tick tack zack」のＭＶが公開されました。
　３分１５秒だけ、あなたの時間をＳＫＥ４８にください！
※ＳＫＥ４８のＹｏｕｔｕｂｅ公式チャンネルより

　いかがだったでしょうか？
　今回は、この曲とＭＶから感じたこれからの可能性について書いていきたいと思います。ＳＫＥ４８を知っている方も、timeleszの記事から僕を知ってくださった方も、是非是非、お付き合いください。

身体性を意識させるダンスと個人の魅力を再定義するソロカット

　まずは、見てみた感想はいかがでしょう？
　初見の時に僕が思ったのは、楽曲とＭＶがめちゃくちゃいい！ということでした。
　なんといっても中毒性のあるサビのメロディですよね。Spotifyなどのプレイリストに入れやすい何回聴いても飽きがこない楽曲だと思いました。僕は基本的に歌詞から楽曲を好きになるタイプで、ＳＫＥ４８の曲の中では「手紙のこと」や「誰かの耳」や「観覧車」が好きなんですが、今回の「Tick tack zack」は、「おおっ！久しぶりに秋元康が時代の空気を切り取った素晴らしい歌詞だ！」とか「この曲は人生のマスターピースになる！！」みたいな内容ではないのですが、恋の駆け引きを時計の秒針が回り続けるように止まることなく続き、そして、やっぱり惹かれる曲の主人公の心情を描いています。
　これは振り付けを作る方からしたら色々なイマジネーションが湧く歌詞ではないかと思います。実際に、今回のＭＶでまず目を惹かれたのがダンスです。メンバーたちの動きで揺れる足元の水面の波紋の美しさ。そして、ライトアップされた逆光で、メンバーの顔は見えないのですが、たしかに「身体性」を感じます。この「身体性」については、後で説明させてください。

　そして、推しが選抜メンバーにいる方は、ソロカットがたまらなかったのではないでしょうか？「なんかカワイイ子が居たけど、名前が分からん！説明せい！」という方は、是非、曲の最後を見てみてください。メンバーごとの名前が表示されています。
　「カワイイ」とか「キレイ」といっても、その「カワイイ」には何種類もあるんだなあ、と感じさせられるのが今回のＭＶの個人ショットです。
　簡単に僕の印象を羅列すると下記の通りです。
　※まだメンバーの名前が良く分からないよ、という方は、分かるようになってから帰ってきてくださって大丈夫です。僕もすぐには覚えられませんでした。

熊崎晴香さん
キレイ×安定感
雑誌の表紙にも持ってこれそうな美しさの信頼感。

伊藤虹々美さん
カワイイ×はかなさ
かすみ草の花が似合うメンバーがまた現れるとは…。
もう彼女のシーンは全てが美しい写真のようでした。

大村杏さん
カワイイ×正統派
もうね、眼鏡を外した時の真っすぐこっちを見つめる時の視線の美しさ。
彼女が出ているカットだけ、すべて時間がゆっくり進んでいる！

野村実代さん
キレイ×ファッションモデル
流石はモデル系の野村さん、一つひとつのポーズが決まり過ぎる。
しかも、「キレイ」の中に「カワイイ」もちゃんと置いてくるポージングは流石！

井上瑠夏さん
カワイイ×ポップ
こんなにピンクの中に囲まれても可愛さが埋もれないのは、もう天性のものですね。

佐藤佳穂
キレイ×大人
いつもは笑顔が印象的な彼女ですが、物憂げな表情が今回は凄く印象的で、背景の色合いやアップの時の小物も含めて、さとかほの新しい一面を観られた気がします。

坂本真凛さん
カワイイ×生活
まさかの寝起き！でも、日常感の中にカワイイを生み出せるのが、坂本さんの強みです。ハートを書いて投げキスをするところはやられた人が多いんじゃないでしょうか？

浅井裕華さん
キレイ×光
１分１９秒頃で停止すると、陽の光からかまるで、彼女に虹が差しているように見えるんですよね。衣装の関係もあるのかも知れませんが、彼女がもっている美しさを存分に引き出したカットだと思います。

菅原茉椰さん
キレイ×エレガント
もうね、まーやんは、セットの豪華さに負けてない美しさを持っていて、写真集のタイトルじゃないですけれど、シャッターチャンスの連続なんですよね。勝負カットだらけです。

森本くるみさん
カワイイ×元気
まさか、画面から背を向けて走り出すとは！
でも、彼女の元気の良さが言葉ではなく動きで伝わるナイスショットですね。

伊藤実希さん
キレイ×スポーツ
あの、本当に個人的な話なんですが、僕はＳＫＥ４８の１０期生には特別な思いを持ってましてね。「渚のイメージ」とかは見たら泣くんで、なるべく見ないようにしてるんですね。ほら、りかぴとか、かとゆいとか、美澪ちゃんとか、あと僕の推しの早香先生とかね。今回、伊藤実希さんのスポーティーな魅力がファッションにも表れていて、素敵でしたね。次は西井さんとのダブル選抜を僕は期待しています。あっ、青木さんも大好きです。次の音楽ネタのnoteの更新を心待ちにしています。

河村優愛さん
カワイイ×青春
自転車に乗った姿が素敵で「自分もこんな青春が遅れたら」と妄想してしまうぐらいの爽やかさでした。笑顔とダンスパートのクールな表情とのギャップもいいですね。

　ざっくりとですが、こんな印象でした。

なにもかもがボーダレスになっていく世界で

　さきほど挙げた「音楽未来会議」を今回は縦軸に置いて、この曲について、そして、この曲のＭＶについてさらに考えていきたいと思います。
　Tiktokの登場から、音楽は聴くだけでなく踊るという要素も一般的になりました。ヒット曲の振り付けを自分のＳＮＳに気軽に載せられるようになりました。一応振り付けにも著作権を適用しようと思えば、できるそうですが、日本ではそれを求める振り付け師の方は少ないそうです。今後、メタバース上のアバターの動作を販売する際に、その問題が見直されるかも、と「音楽未来会議」の中では語られていましたが、ダンスが表すような身体性はＡＩによって代替することは難しいそうです。無数に楽曲というコンテンツは生み出せますが、今、この空間で観客の一人に向けて踊るコミュニケーションのような表現は、身体性１００％の行為です。だから、なかなかＡＩが完全に代替することはまだまだできないはずです。
　僕は今回のＭＶから「身体性」を感じました。生身の１０代から２０代の女性たちが指の角度まで合わせて踊る姿は、ある時はアートな美しさもありますし、ある時はデザイン的な美しさも感じます。ＡＩの場合は、プロンプトを入力した時点で、もうこのダンスの映像は完成するかも知れませんが、人間の場合はここまで持ってくるのに「物語」があります。みんなで振り付けを覚えるまでのドラマを想像させるから、僕はこのＭＶから「身体性」を感じて、感動しているのかも知れません。

　ちなみに、僕はＡＩ肯定派です。
　文章を書く人間としては、とてもお世話になってますし、画像も作りまくってもらっています。多分、これから、技術はますます発達していくでしょう。しかし、生成したものを「ここは修正が必要だ！」とか「このままでいく」という最後の判断をするのは人間だと「音楽未来会議」の中では分析されています。そして、その判断をするために、基準となる沢山の素晴らしいものを見る必要があると。
　アイドルファンの方は「目利き」の方が多いです。
　ある時、ＳＮＳや雑誌の表紙の写真が気になった、ピンときたという方もいらっしゃるかも知れません。そして、今回のＭＶはそんな「目利き」の方々がきっとピンとくる面々がそろっていますし、その為の映像一つ一つの出来が素晴らしいと思います。多分、上記のメンバーの推しの方々は、「うわわ、栄、覚えていてくれ、解像度低いわ」と思っていると思います。きっとその人たちが見てきた、体験してきたものがあると思いますから。
　なので、このＭＶの中に気になる子がいたら、是非是非、検索してみてまずはＳＮＳをフォローしてみることから始めてみるのはどうでしょう？メンバー一人一人がここに辿り着くまでの物語があります。

選抜だけじゃない！ＳＫＥ４８はまだまだ面白い！

　今回は、１２人選抜という厳選された人数ですが、選抜に入っていないメンバーでも魅力的な方が多いです。

ラーメンに詳しいメンバーがいたり。

ロードバイクを趣味としてる方がいたり。

将棋にくわしいメンバーがいたり。

動物好きのメンバーがいたり。

エグいぐらいガンプラ作れる方がいたり。

　実は、ご自分の趣味と重なるメンバーはいるのではないか、と思います。
　ＳＫＥ４８は長い歴史を持っていますが、メンバーの卒業や新規加入が繰り返されています。なので、周期的に新しいメンバーが入ってきますし、もうすぐ「組閣」というチーム再編後の劇場公演が始まります。
　劇場公演は、ＤＭＭで１公演５００円ぐらいで観ることができます。
　また、持ち曲も沢山あります。
　サブスクで聴けるものがほとんどなので、あなたの好みに会うものもきっとあると思います。

　ちょっと気になった方は、ぜひぜひ、この機会にＳＫＥ４８をみてみてください。
　ＳＫＥ４８は途中から見ても入っても楽しいですよ。
　ぜひ、この「Tick tack zack」からＳＫＥ４８を聴いてみませんか？