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おすすめの映画「室町無頼」
ニヤリと笑う二人の男の色気
あなたが好きな時代劇は何でしょうか?
僕は「魔界転生」(深作版)と「赤ひげ」(黒澤明版)です。
世代によっては時代劇は、大河ドラマしか知らない、という方もいらっしゃるかもしれません。そもそも好きな時代劇なんてないよ、と言う方も。
それでしたら、是非、この「室町無頼」を僕はおすすめしたいです。
めちゃくちゃいい時代劇がこの2025年に来たな、と思います。
ちなみに、この記事はネタバレを含みます。
ただ、ネタバレした状態でも、この映画は面白いと思います。
まず、映画史・時代劇研究家の春日太一さんの言葉を借りるならば、時代劇には現代の問題を潜ませて物語を作ることが出来る、という利点があります。
今回の「室町無頼」の中でも2025年の日本にある、政治家の腐敗や広がる格差の問題などが潜んでいると僕は思います。世界まで広げると戦争や疫病も広がっています。そして、そんな問題を壮快にぶっ壊してくれるヒーローが時代劇の中にはいます。
それが大泉洋さんが演じる蓮田兵衛です。
冒頭の貧しい親子に食べ物とマフラーをあげるところで、一言も言葉を使わずに「この人物はいい人だ!」と観客に分からせる上品な作り方は、流石入江監督と思いましたし、兵衛がふっと優しく笑う姿が凄くいいんですよね。優し過ぎないし、語り過ぎない、でも、その優しさが伝わる男、兵衛は大泉洋さんの新しい一面を見せてもらえました。
そして、兵衛の対角に立つ骨皮道賢、演じるのは堤真一さん。道賢は普段は硬い表情をしているのですが、兵衛と話す時は少し柔らかくなるんですよね。そんな二人が何度か刀を持って対峙するシーンが映画の中で出てきます。中でも一番、最後に二人が刀を持って向き合うシーン。
ここはもう黒澤明の「用心棒」のような静けさと、二人の関係性を見せられてきたからこその色気すらただようと僕は思います。斬られた兵衛の横に座る道賢の顔がまた良くて。
緊張感が走るシーンが多いからこそ、この二人がふと友人同士になる時間が作品の中でいい緩急になっていたと僕は思いました。
物語の大きな柱の一つがこの兵衛と道賢の関係だと思います。
話が進めば進むほど、二人の男の魅力に触れて好きになっていくんですよね。でも、予告を観ていると、多分、命の取り合いがくるだろうなあ、どっちも死んで欲しくないなと話が進めば進むほど、思うんです。だからこそ、最後の命の取り合いは、悲しさと色気が交わった素晴らしいシーンになっていたと思います。
風が似合う男、長尾謙社さん
さて、この映画はどちらかというと物語目当てで観に行ったんですね。大泉洋がいい感じに活躍して終わるんだろうな、武田梨奈のアクション久しぶりに見れて嬉しいんだろうな、僕、ぐらいの気持ちで行ったんですね。
しかし、映画館を出た時に一番頭に残ったのは、長尾謙社さん演じる才蔵です。
この映画のもう一つの軸は、この才蔵の成長物語だと思います。
で、なんども上映中に「身体張り過ぎでしょ!」と叫びたくなるシーンが出てきましてね。琵琶湖でのくい打ち修行のシーンが特に好きで、こういう修行シーン最近減ったなあ、と思っていたので凄く嬉しかったです。そして、終盤の御所の前での戦いで、「えっ、まだカット割らないの?えっ、まだ割らないの?えっ、まだ続く!?」とあまりにもこちらの予想を越えすぎて声が出そうになりました。
映画の冒頭では少年のような佇まいだったのが、映画が終わるころには一人の兵法者の顔になっているところも良くてですね。この方、なにわ男子の方なんですね。アイドルの曲って様々な世界観にライドすることで表現がきっと豊かになっていくと思うんですが、才蔵をどんどん応援したくなる感じは、彼が持っている引き出しの豊富さからかも知れませんね。ここはまだ頼りない感じで、ここからは少し余裕を見せてという感じは、これまでのパフォーマンスから生まれた引き出しなのかも知れませんね。
そして、彼はとても風が似合うんですよね。
兵衛が風を受けて笑うシーンがありますが、その風を才蔵が受け継いでいる感じがするんですよね。喜怒哀楽を動かされる時、彼の長髪が風に揺れます。ラストシーンでは髪が短くなっていましたが、もし、2作目があったらどんな時に風が吹くのかも想像してしまいます。
なにわ男子さんは、必殺シリーズだったり、暴れん坊将軍だったり、時代劇に出てくださっているので、是非、これからも時代劇といい付き合いをしてくださったら嬉しいなあ、と思います。それこそ数年後に才蔵主役で2作目を作って欲しいなと願っております。
家で観るにはもったいない室町世界
この映画の凄いところは、絵のスケールのデカさです。
京都の七重の塔から風景や、松明を持った状態での一揆。
これはテレビやPCのモニターで観るにはもったいないです。
是非、IMAXや劇場のスクリーンで見て欲しいスケール感です。
何回も「ああ、今、映画を観ている」と幸せな気分になる構図が多かったです。
そして、大画面だからこそ、二人の男が対峙する時の静けさがまた際立つんですよね。お二人の目力も。
劇場公開から時間が経ち始めていますが、まだ観られる劇場も多いので、是非、大画面で見て欲しいです。
東映京都撮影所、本当にありがとうございました!!
次もいい時代劇を待ってます!
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