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選ばれる人

 2018年10月4日、SKE48の10周年記念特別公演のアンコールで谷真理佳のワタナベエンターテイメントへの移籍が発表されました。

 この時、谷真理佳はSKE48のシングル選抜メンバーからは外れた状態でした。
 本当に失礼な書き方をしますが、何故、選抜外のメンバーが大手事務所から選ばれたのか?
 谷のどんなところに魅力を感じたのか。
 今回は、「選ばれた人」谷がどんな人物なのか、様々なメンバーの言葉から考えてみたいと思います。

 まずは、2016年12月14日に行われた彼女の生誕祭で読まれた手紙です。

「まりちゃんへ。21歳のお誕生日おめでとう。

 時の流れは早いもので、大組閣から3年が経とうとしていますね。故郷を離れここに来る決意をしたのは、本当に勇気のいることだったと思います。今どんな思いでこのステージに立っていますか。

 私は、移籍を通して出会えたこの縁に心から感謝しています。チームEが始動したとき、同じ境遇のメンバーが一人でもいることに安心しました。だから、さっきの自己紹介は嘘です。
 その子とのことは名前しか知らなくて、まともに話したこともなかったけど、私は勝手ながら、支えようって決めたんだよ。

 まずは、ダンスを覚え直すところから始まって、厳しい意見ばかりが目立って聞こえました。馴染む、馴染まない。その言葉だけで片付けられてしまうのが、悲しくて切なかった。同期がいない寂しさに、孤独を感じてしまうこともあったね。期ごとに集まって写真を撮ったり、SKE48の歴史感じる時、周りからすれば不思議なくらいに異常に反応していたと思います。
 誰にも言えない悩みや葛藤に、いつも共感してくれたのが真理佳だったよ。

 『辞める時は一緒に辞めよう』なんてその時は笑いあっていたけど、それくらいギリギリで必死だったね。よくここまで折れずに頑張ったと思います。

 ファンの皆さんの支えや、周りの人たちの協力があったから、私達は今ここに立っています。堂々と自慢できる優しい場所だと思います。見渡せばこんなに素敵で愛しい仲間たちがいるから、少なくとも私は、こんな未来が待っているなんて思わなかったよ。下を向いていたあの頃の自分たちに、そっと教えてあげたいです。『そんなに追い詰めないで、あとちょっとだけ頑張ってみよう』って。

 人間、小さな幸せほど気づけないけど、マイナス思考になった時は、人の優しさにそっと触れてみて下さい。肩を貸してくれる人が、真理佳の周りにはいっぱいいるはずです。あと、絶対に自分を見失わないこと。焦らないこと。真理佳にしかない輝きがたくさんあります。ファンのみなさんは、きっとそれが見たくてここにいるんだから、できるだけ笑っていてね。

 共に乗り越えた唯一の同期として、最後にこの言葉を贈りたいと思います。


 真理佳、SKE48に来てくれてありがとう。

 私たちは、この言葉に何度も何度も救われました。
 これから先も、きっとそうだと思います。21歳が実りのある1年になりますように。

 佐藤すみれより」

 ううむ、このすーちゃんの手紙には、移籍組の僕らには見えにくい辛さが残されていると思います。僕自身も周年公演などで、SKEの歴史に触れるMC等の時の移籍メンバーの表情をついつい目で追ってしまって、ちょっと気になってしまうことがありました。
 そして、それぞれの努力や孤独を残酷に片づけてしまう言葉たち。
 この年の谷のスピーチでもこんなことを語っていましたね。
「ネットの中傷ってあるじゃないですか。それを真に受けて、勝手に傷ついて、勝手に自暴自棄になっていた時期があって、今考えると、すごくファンの方に心配をかけたし、情けないなって思いました。だけど、そんな苦しいときに、救ってくれたのがチームEのメンバーで。みんなが声をかけてくれたのがんですよ、チームEのメンバーが『まりちゃん、一人で抱え込まないでね』って。『まりちゃん、私達を頼ってね』って」

 そういえば、宮澤佐江さんが卒業する時に、移籍後、メンバーに支えられたということを語っていましたが、チームEでもやはり、メンバーたちが支えてくれていたんですね。

 すーちゃんからの手紙の内容に戻ると、「SKE48に来てくれてありがとう」、この言葉が持つ意味について、凄く考えさせられました。こちらが思っている以上にきっと移籍メンバーたちには温かく伝わっていたんですね。おそらく、その逆の意志の言葉も先ほどの谷のスピーチのようにメンバーたちの心に冷たく傷をつけていたのではとも思います。
 これは、時間が過ぎても変わらないことだと思います。

 ちなみに、アメブロでも似たニュアンスで書いていましたね。

 次は2018年1月13日の谷の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「谷真理佳さんへ

 お誕生日おめでとう。
 

 この1年で、私たちの周りではたくさんのことがありました。こうして今、周りを見てみるだけでも、去年と比べると、だいぶ顔ぶれが変わったと思います。仲良しのメンバーや、ずっと支え合ってきたメンバーが、続けて新しい道へ進んでいく姿に、寂しさや色んなことを考えさせられました。

 谷さんにとっては、きっと名古屋での家族みたいな人たちばかりで、そのたびに『涙が枯れない』と言いながら泣く姿に、胸が痛くなりました。卒業公演などでは『泣くから』と、最初からアイメイクをしないという荒業に出たときは、本当にびっくりさせられました。

 その空いた穴を、その人達の代わりに埋めることは、私達にはできません。それくらい、その人たちは特別だし、きっと大切な存在だったと思うんです。だけども、忘れないでいてほしいです。谷さんが思っている以上に、周りの人は谷さんのことが大好きです。

 今年の誕生日に『こんなに連絡をくれるなんて思わなかった!』そんなことを言っていたけど、そうなんです!それは、谷さんが面白いということはもちろん、無自覚かもしれないけど、谷さんの何気ない優しさに集まった人たちばかりです。もっともっと自分を好きでいてあげてください。そして、周りの人を頼ってみてください。私を含め、嫌な顔をする人は誰もいないよ。

 『意外にマンゴー』のMV撮影があるとなんとなく聞いていた夜に、電話をかけてくれたこと、この数日にガシガシとマンゴーを一緒に食べたこと。懐かしいです。あの時、誰かに電話する勇気が、私にはありませんでした。電話越しで隠しちゃったけど、私も泣いてたんだよ。あの電話があったから、気持ちを整理して、折れずに進むために、と前を向けました。

 今回の選抜のことも、すごい早さで連絡をくれてビックリしました。いつも、私が怖気づいて動けない時に、谷さんはそっと連絡をくれたり、動いてくれます。本当にありがとう。

 ずっと最初の癖が抜けなくて、『谷さん』呼びだったんですが、これを機に、『真理佳ちゃん』とか『にーたー』とか呼ばせてください。

 そして、SKEで期ごとに集まる時は、ドカーンと6期のところに是非来てください。みんなで待っています。

 これからも自分らしく、自分だけの、谷さんだからこその、道を開拓していってください。道を作っていくのは、本当に大変なことだし、時々疲れちゃう時もあるかもしれません。そんな時はまた、ぶらっとご飯にでも行きましょうね。いつでもどこでも、鎌田は飛んで行きます!

チームE 鎌田菜月より」

 「選抜」というアイドルグループの中で避けては通れないシステム。
 そこに選ばれることもあれば、外れることもある。
 そんな痛みを分け合える仲間がいる、というのも同じくグループアイドルの素晴らしさかも知れません。
 鎌田さんの「6期のところに是非来てください」という一言も素晴らしいですね。
 「同期」がいないなら、これから作れば良いという感じでしょうか。

 更にもう1枚、読んでみましょう。

「真理佳へ

 22歳のお誕生日おめでとう。
 真理佳と出会って6年目になるね。私は、真理佳に出会えて本当に良かったなと思います。

 すごくすごくすごく努力家で、レッスンの時、ダンスが踊れなくて一人でずっと自主練していたり、泣きながら必死に、みんなで寄る遅くまで頑張ったよね。そんな真理佳が、HKT48からSKE48さんに移籍を決断し、計り知れないくらいの努力をして、SKE48としてステージに立っている姿を見ると、私も頑張ろうと、すごく思えます。

 気遣いがすごくて、みんなに優しくて、テンションが高くて、時には頑張りすぎちゃう、無理し過ぎちゃう。そんな真理佳が私は大好きだよ。どこにいても、私たちは同期だよ。大切なHKT48 2期生の仲間です。悩んだり迷ったり、苦しい時は頼って欲しい。みんな待ってるから。頑張りすぎずに、頑張ろうね。大好きだよ。ご飯一緒に行こうね。

HKT48 朝長美桜より」

 この年のスピーチでは、谷のことを「ずっとずっと大好きだ」と言っていたファンの方が、違う子に流れて同じことを言っていたエピソードを語ります。自分はアイドルに向いてのではないか、応援していて楽しくないのではないか、と。でも、中途半端には投げ出さずに、アイドルを続けることを語ります。
 そして、「選抜じゃなくても、谷さん、こんなに仕事があるんだ!」という希望を持たせられる人間になりたいと語ります。先ほどの鎌田さんの手紙にも出てきた彼女だから出来る道とも繋がる気がします。

 この選抜落ちした時のことはアメブロでも書いていますね。

 そして、忘れられない選抜最後のアメブロも。

 谷のSKE人生の第1章が、ここで終わったのではないか、と僕は思っています。
 そして、ソロプレイヤーとして、外仕事での活躍が増えて行きます。

 2019年1月7日に行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「谷真理佳ちゃんへ

 23歳のお誕生日おめでとう!

 今年のお手紙はSKE48として数少ない同期の私が書かせていただきます。誰だかわかっちゃったかな?

 たにまりちゃんはとても不器用な人だね。とってもビビりだし、怒られるの苦手だし、周りが楽しく面白くなったらいいなと思う一心で発する言葉に後悔したり、あと寂しがり屋でとても繊細。

 昔はすぐに落ち込んだり、色んなこと気にしすぎちゃってて『この子は大丈夫かな?』って心配しかしてなかったけど、最近は少し強くなれたのか、受け流すこともできてて少しだけ心配は減りました。

 でも、やっぱり根は変わってなくて、我慢しちゃったり、場の空気を読んで自分をネタにしたり、悪役になって笑ってもらったり。『私なんかいいの!』と言っている姿をたまに見ます。そういうことができる存在って実は少ないから本当にたにまりちゃんは凄いと思うの。

 たにまりちゃんはよく言います。『美奈ちゃんは本当に凄いよ!』って。
 でもね、気付いてないかもしれないけれど、私からしたらたにまりちゃんこそ、本当に凄いよって言いたい。それはね、たにまりちゃんの周りはみんな笑顔なの。先輩後輩も関係なく。たにまりちゃんと喋る時はみんなが笑顔になれてるの。これは人柄だと思う。だって、凄く話しかけたくもなるし、話かけてもらうと嬉しくなるもん。

 お仕事でも、たにまりちゃんがいると「あー、楽しいだろうな」って自然に思っちゃうくらいのその場を明るく楽しくできる人。これは私には出来ないことなんだ。だから、たにまりちゃん、あなたは十分に凄いよ!

 そして、みんなあなたのことが大好きだし、必要です。

 たにまりちゃんが凄いのはそこだけじゃないよ。10周年公演で発表された渡辺エンターテイメントさんへの事務所移籍。SKE48にいるうちに事務所移籍できるんだってことをたくさんのメンバーに希望を与えてくれました。

 色んなきっかけやチャンスが実を結んだことだけど、そこまでの努力をしたのはたにまりちゃんです。今いるメンバーの希望になれたこと、そして、自らチャンスを掴んだこと、必ず自信にしてください。自分が思ってる以上にたにまりたんは素敵な人です。

 最近はなんだかすごーく綺麗になっていて、もう昔のようなブスキャラのたにまりちゃんではありません。これからはSKE48のビジュアルメンを名乗ってもいいくらい美しいなと思います。
 素材はいいから、ちゃんと可愛くして、清潔にしてください。

 とにもかくにもお互いSKE48に来れて良かったね。

 寂しがり屋で我慢しやすい、たにまりちゃんは本当によくここまで頑張ったね。慣れない場所や人は、なんだかとても不安で仕方なかったよね。みんなずっと優しくしてくれてて、寂しくならにようにって気にかけてくれるんだけど、でも、やっぱり心のどこかで不安や怖さのほうが勝つ時があって、結局自分で乗り越えなきゃいけないんだよね。
 でも、もう乗り越えたからね。私たちも立派なSKE48だよ。

 今近くにいるメンバーやスタッフさん、ファンの皆さん、こんなにも心強い仲間がたにまりちゃんのそばにいます。そして、私と鈴蘭という第2の同期もいます。また「向日葵」歌おうね。

 これからも何かあった時はすぐに連絡してきなさい。一人で我慢したり、抱え込んじゃだめだよ。またゆっくりご飯行こうね。

 たにまりちゃんにとって素敵な1年になりますように。

 たにまりちゃんの同期、大場美奈より」

 前半の谷真理佳という人間の行動と内面についてのみなるんの分析が、素晴らしいですね。以前、「古川古畑のえにし酒」にゲスト出演した時もそうなんですが、彼女のメンバーをじっくりと見られる視線は、二つのチームのリーダーを務めてきたからのものではないか、と僕は思っています。
 自分が必要とされている「役割」をきちんと読み取ってその動きが出来る。
 これは、かつて「オードリーさん、是非あってほしい人がいるんです」の中で若林さんも芸人のカミナリさんに話してましたね。

 この年のスピーチで谷はワタナベエンターテイメントに事務所移籍したことを一番大きな出来事として挙げていました。福岡の「ももち浜ストア」という番組を福岡に帰った時にお母さまと一緒に観た時に、お母さまが泣いていたことも語ります。「7年かかったけど親孝行やっとできたなって思いました」と谷は語ります。
 
 最後に2020年1月5日の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「谷ちゃんへ
 
 谷ちゃん、お誕生日おめでとう。
 こうしてお誕生日当日にステージ上で一緒にお祝いできることを本当に嬉しく思います。
 まず、いつも私のことを支えてくれてありがとね。
 
 うまく言えない気持ちがある時に、さりげなく声をかけてくれて、『大丈夫だよ。あかりちゃんは頑張ってる!』って言って、いっぱい元気をくれる谷ちゃんには私は本当に支えられてるよ。

 出会った頃の谷ちゃんは『明るくて社交的で、誰にでもグイグイいける』そんなイメージはあったものの、『きっとこれが等身大の谷真理佳じゃないんだろうな、この子無理してるな』ってことはすぐに気づきました。
 
 むしろ、SKEに移籍が決まった時からHKTファンの方から私の元に『谷は繊細だからよろしく頼みます』とたくさん言われていたから。それも一人や二人じゃなくてたくさんの人から。

 そこまで理解した上で応援されているって、この人は本当の意味で愛されている人なんだなって思ったことをよく覚えています。それってとっても凄いことなんだよ。

 愛されている自分をもっと認めてあげてもいいと思うよ。

 谷ちゃんは私にとって頼れる仲間であり、妹みたいにほっておけない存在です。

 なかなか素直に本音を伝えられない不器用な谷ちゃんですが、谷ちゃん推しの皆さん、どうかこれからも愛情で受け止めてあげてくださいね。

 でも谷ちゃん、私はあなたを甘やかしません。

 だって、つらい思いをして欲しくないから。
 
 頑張った分、報われたっていっぱい感じてほしいから。
 だから、この活動中での悔しい、寂しい、つらいって思えることをまずは自分が一番に褒めてあげてね。
 その気持ちこそがどんな結果よりも頑張った証になると思うから大切にしてね。

 あと絶対に強がっちゃダメ。
 
 そして、うまく周りに甘えられない自分を許しちゃダメ。
 いつも言ってるけど、時には上手に甘えよう。ちゃんと教えるからさ。

 谷ちゃんが頑張った分だけ笑顔になれること、それが私の願いです。
 ここまでの道のりで味わった愛されたい素直な気持ちも、任される喜びもプレッシャーも、選ばれない不安や悔しさも、たくさんの気持ちを知れた今の谷ちゃんだからこそ叶えられる未来があるんだよ。

 それって、誰よりも特別なこと。もっともっとなりたい自分を思いっきり描いたら突っ走る。それだけでいいんだよ。
 
 谷ちゃんの魅力を証明してくれる人はた~くさんいるから安心しなさい!
 私にも他のメンバーにもできない形でSKEをアピールできている谷ちゃんは凄いんだから。

 私の大好きな谷ちゃん、いつでも支えるからね。

 人生一緒に頑張ろう!
 2020年1月5日 須田亜香里より」

 谷のこれまでを肯定してくれるような内容と、これからへの期待が素晴らしいですね。
 
 この年のスピーチでは、ワタナベエンターテイメントに移籍して1年が経ったこと、「ひるおび!」のお天気キャスターになったこと、FM AICHIでラジオ番組が始まることを語ります。
 外の仕事で一人で頑張る難しさと、先人須田亜香里の凄さを感じます。
 そして、2020年の目標として、SKE48のもっともっと主役になることと選抜入りを目標にかかげます。
 最後にサプライズで彼女の1st DVDが発売されることも発表されます。
 
 少しずつ、彼女のやり方でSKEの主役や選抜に近づいているのかも知れません。
 かつてアメブロでも主役になる人について、彼女も書いていましたね。

 かつて、「どこから」来たのかに拘っていた人もいるかも知れません。
 でも、谷が見せてくれる「これから」の方が僕は楽しみです。
 チームの為に、仲間の為に、番組の為に、脇役に周ることも出来る彼女だからこそ、よりよい「場」を作ることが出来ると思います。
 そんな彼女だからこそ、多くの人に選ばれるんでしょう。
 喋りの仕事が多い彼女ですが、もっと演技の仕事も見てみたいです。
 谷主役のラジオドラマなんてどうでしょうか?
 もしくは、久々の2.5次元舞台も似合いそうですね。
 ううむ、こうして書いている内にも想像力を掻き立てられる彼女は、やはり「選ばれる人」なんだと思います。
 外で様々な経験を積んできた谷が、またSKE48の選抜に合流した時、どんなイノベーションを起こすか、今から楽しみです。


 
 

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栄、覚えていてくれ
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