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林美澪さんの卒業した世界

 2024年9月15日、SKE48の10期生である林美澪さんが約4年9か月の活動期間に終止符を打ちました。
 彼女は皆さんにとって、どのような存在だったでしょう?

 SKE48初の研究生センター。
 しかも、松井珠理奈を彷彿とさせるダンスが踊れる年少メンバーのセンター。シングルのタイトルは「あの頃の君を見つけた」。とてもメタ的なメッセージ。彼女はスタートの時から大きなプレッシャーと幻想と共にSKE48の選抜を始めることになったのかも知れません。
 ひょっとすると、その前のBlack Pearlに選ばれ、「Change Your World」を歌っていた時からそのプレッシャーと幻想は始まっていたのかも知れません。それは実力不足といいたいわけではなく、過剰な期待や幻想が彼女に向けられたのかも知れません。僕自身もその一人です。この人なら、SKE48をまた盛り上げてくれるかも知れない。翌年には『Seventeen』の専属モデルになります。しかも、彼女が読書家であるということもじょじょに知っていきます。踊れて文化的な素養もあって、モデルも出来る。彼女以外で今、パッと思いつくのは荒野姫楓さんでしょうか?

 卒業公演での彼女の睡眠時間についての話を聞いていると、かなりハードな状況で活動を続けてくれていたんだな、と思います。
 次のシングルの「心にFlower」でもセンターを務めました。
 2作連続センターということで、SKE48の新しい顔になった彼女。
 次のシングルでは、センターこそ外れますが、ソロ曲を手に入れます。
 また、その次のシングルではカップリングの「岸辺の少女」のセンターを務めます。こうして並べると、運営さんも彼女の梯子を急に外すのではなく、引き続き期待をし続けていたということが分かります。
 そして、新公演がチームEでも始まります。
 その中でソロ曲である「星の雫」を担当します。
 この曲も凄く彼女の表現力を引き出す素晴らしい曲なんですが、僕としては、「Loose control」でのセンターこそが彼女の真骨頂では、と思いましてね。林美澪の中で1曲を選ぶとすればこの曲を挙げたいと思っています。TAKAHIRO先生の振り付け、「ガラスを割れ!」の前迫潤哉さんの作詞・作曲(編曲に力丸尊さん)。これまで、SKE48の曲をおすすめしても、あまり反応が良くなかった僕の周りの坂道ファンの方々もこの曲はとても反応が良かったです。
「このセンターの子の『Start over』がみてみたいです」とか「SKE48にもこんな攻めたパフォーマンスの曲があるんですね」とか、46は好きだけど、48は今はいいかも、という方の入口になりそうな曲でもあったなと思いました。そこで「SKE48らしさ」が失われているとそうではなく、林美澪さんと斉藤真木子さんを前列に並べることで、ちゃんと「SKE48らしさ」は残されたまま新しいものを見せてもらえたと思います。
 やっぱり彼女の実力なら、外にいるアイドルファンの方々も引っ張ってこれる才能がある、僕の周りが坂道好きの方が多いけれど、別のベクトルのアイドルにもリーチできる可愛さもある。彼女なら。
 
 もう、今日から彼女はSKE48にいません。
 「Loose control」の中で「そっちの世界はどうですか?」という歌詞があります。彼女はアイドルを卒業して、学業をしながらモデル活動をしていく姿を「君のいないこの世界」であるSKE48から見ていくことになります。曲と違うのは、「そっちの世界」で活躍する姿も見られることですよね。きっと、彼女なら今いるメンバーやこれから入る後輩に良いキャリアデザインのモデルを見せて行ってくれるのではないかと僕は思っています。

 そして、彼女がいなくなったSKE48はどうなるんでしょうか?
 たとえば、チームEという単位で考えてみましょう。
 先日、僕のXのタイムラインでは、「星の雫」を浅井裕華さんが担当した評判が流れてきました。盲目的にSKE48を賞賛する人ではなく、僕の中でこの人の見る目は信用できるな、という方もかなり褒めていました。そうか、ゆうかたんという選択肢があったか、とふと思いました。林美澪さんとは違うアプローチで曲の世界を広げてくれそうな予感がします。しばらくは比べられることもあるかも知れませんが、きっと、新しいものを構築していけると思います。「Loose control」についてもそうですね。「そうか、こんな曲のヴィジュアライズ化が残っていたか」という組み合わせが生まれることを期待しています。
 後輩たちも、きっと彼女の姿から受けた影響を時間差で感じることもあるかも知れません。特に「あの頃の君を見つけた」や「心にFlower」では。
 なにより、研究生センターや『Seventeen』専属モデルという彼女が残した実績は、これからアイドルになりたいと思う人がSKE48を選んでくれる可能性を生んでくれたと思います。「『Seventeen』の林美澪がいたところなんだ」と。
 本当に彼女には、最後の最後まで夢を見させてもらいました。きっとセンターになる人は、こんな風に明るいビジョンを持たせてくれる人なのかもしれませんね。


 「君がいないこの世界」である今日からのSKE48。
 「そっちの世界」でまた活躍し始める林美澪さん。
 それぞれが離れていても、新しく「世界を作」っていくんだと思います。

 いつかまた、それぞれの「世界」がTGCや周年記念コンサートなどで交差することを願いながら、この記事を終えます。
 

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栄、覚えていてくれ
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