ピノの海に溺れたい
ピノが最近大好き
今の時点での、僕のアイスランキングで、ピノは堂々の一位である。
ちょっと前まで、オハヨー乳業の「ブリュレ」が一位だった。初めてブリュレを食べた時、これはもうアイス界におきた革命だ、とも思った。それくらいの衝撃を受けた。
ただ、ブリュレはあんまり売っていない。僕がすんでいるところが田舎だからだろうか。コンビニ、スーパー、見渡しても全然、置いていないのだ。
今の世の中、ネットで買えばええやん、という声も聞こえてきそうだが、そういうことではない。アイスは食べたい時に食べることができたらいい、というのが僕のポリシーなので、自宅の冷凍庫を開けたらいつでもそこにある、というのはちょっと違うのだ。それに、もし切らしてしまった時のことを考えると怖い。
ネットで買ったアイスがあるんだぜ〜。ふふん。
なんてルンルンで帰って、冷凍庫を開けたらない、あるはずだったアイスがない、という事態が起きてしまったら、僕は錯乱してしまうだろう。だったら食べたくなった時に、コンビニやスーパーで買って帰るのが吉なのである。
ピノはいつでもそこにいてくれた
その日、僕はブリュレがどうしても食べたくて、コンビニやスーパーをパトロールしていた。しかしなかった。ブリュレはどこにも売ってなかった。
諦めて帰ろう、とはならなかった。
ブリュレがないなら、じゃあ別ので妥協しよう。アイスが大好きな僕の思考はいつもそうなる。そうして手に取ったのが、ピノだった。
久しぶりにピノでも食べるか、そんな軽い気持ちだった。
袋?いらないですぅ。
店員さんにそう告げて、あれ、ピノってこんなに高かったっけ?と思いながら小銭をだした。車内で僕は、エンジンをかける前に開封してしまう。
あれ?ピノってこんなに美味しかったっけ?
ピノに入っている、なんか青い小さい剣みたいな棒を、僕は少しの間くわえたままだった。久しぶりに食べたからなのだろうか。こんなに美味しかったっけ?こんなに、美味しかったっけ?
2回、僕は呟いていたと思う。
ほわわわわ、とも、言ったかもしれない。
生きる喜び、とで言おうか。それを感じた。ほっぺたは当然のように落ちた。
あっという間に6個を食べ終わり、僕はまたコンビニに入った。ピノの箱を捨て、もう一つ、買おうと思った。
さっきのピノ?ああ、あれは妻に、ね。
また同じ店員さんだったら、そう言おうと思ってた。
コンビニの冷凍ゾーン。そこにチラと目をやる。ピノ。赤いパッケージ。積み上げられている。いつでも君はそこにいるよね。ごめん、気付いてあげられなくて。
ブリュレは美味しい。確かに美味しい。しかし、いないんじゃ意味はないのだ。
その点、ピノはもう本当にどこでもいる。セブンイレブン、ローソン、ファミマ、そしてスーパー、本当にどこにでもいてくれる、絶対的な安心感。大丈夫だ、僕らにはピノがいる。そう思わせてくれる。
「あ、うち、ピノは取り扱ってないんで」
そんなコンビニやスーパーがあったらもう、信じられない。店長の人格を疑ってしまう。
僕はピノを二箱、手に取って、レジにならんだ。
「あれこいつ、さっきピノ買わなかったっけ?」
店員さんにそんな感じの視線を向けられた気がするが、
「袋?いらないですぅ」
とまた言って、僕は帰路についた。信号待ちで、なんと全部食った。
しばらくこのピノ愛は、止まりそうにない。