白内障点眼薬は誕生するか

白内障は眼の水晶体質が灰白色に濁り、光が目の中で散乱したり、透過光が減少したりするため、視力が低下する病気です。治療薬は見つかっていませんでしたので、現在の治療方法は外科的なものに限られていました。

ここでついにミシガン大学などの研究者が白内障点眼薬になるかもしれない分子を発見しました。水晶体の主成分はクリスタリンというタンパク質です。健康な人ではクリスタリンは規則正しく並んで光をまっすぐに通過させますが、白内障患者ではクリスタリンが団子のように集まってしまい、水晶体が濁ってしまいます。クリスタリンは水晶体の中で役割分担していますが、その中に水晶体を安定な状態で保つ役目をするクリスタリンがあります。研究者らはこの水晶体安定化クリスタリンに結合する性質のある分子を発見し、それを白内障を発症させた実験動物マウスに点眼したところ、かたまったクリスタリンが元の状態にほぐされて、2週間で白内障の症状が改善することがわかりました。人間での効果は今後の研究で確認しなければ鳴りませんが、この分子は白内障治療用の点眼薬の開発につながると期待されています。

一方で、目の研究者以外の科学者もこの発表を興味深く見ています。というのも、タンパクがかたまりを作ってしまうことが原因になる病気は多数あるものの、これまではいったんかたまったタンパク質は戻せないと考えられていたのです。つまり、ゆで卵になってしまうと元には戻せないので、ゆで卵にならないように、あるいはせめて、半熟の状態で止めるような薬をこれまでは考えていたということです。

今回、白内障でかたまりを作ってしまったクリスタリンをほぐすことができる分子が発見されたということは、これまで治療を諦めていた病気も治療薬を開発できる可能性があるということを示しているからです。

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