水素結合とは
原子は、共有結合、金属結合、イオン結合によって結びつき、物質として形作られています。
一方、水素結合は物質を作るための結合ではありません。
分子の中にある水素が仲立ちとなって起きる分子同士の結合です。
原子の構造
原子は原子核(陽子+中性子)とその周りを飛ぶ電子からできています。
陽子は正の電荷、電子は負の電荷に荷電しています。原子全体は中性です。
電子は電子殻という決められた空間の中を飛び回ります。
電子殻の中に入ることができる電子の数は決まっており、電子を多く持つほど電子殻も増えます。
一番外側にあるのが最外殻で、最外殻にある電子を価電子といいます。
この価電子が結合に大きく関わっています。
共有結合とは
非金属元素は、価電子が多く陰イオンになりやすいです。
非金属同士が結合するときは最外殻にある電子を共有し合います。
これを共有結合といいます。
[例]CH4(メタン)、NH3(アンモニア)、CO2(二酸化炭素)、N2(窒素分子)
※二酸化炭素は二重結合、窒素分子は三重結合になります。
金属結合とは
金属元素と金属元素の間の結合のことを金属結合といいます。
金属元素は電子が最外殻に1〜2個と少なく、陽イオンになりやすいです。
最外殻の電子は自由電子となって原子の間を自由に行き来します。
金属原子は価電子を放出して陽イオンとなるのと同時に、まわりの原子と価電子を共有し合います。
金属の持つ展性(圧力や打撃を加えた際に破壊が起こることなく薄く広がる性質のこと)や延性(ある材料を引っ張って伸ばしたときに破壊されずに引き延ばされる性質)は、金属結合によってもたらされます。
イオン結合とは
最外殻の電子の数から、非金属は陰イオンになりやすく、金属は陽イオンになりやすいです。
この陰イオンと陽イオンが電気的引力(クーロン力)によって結びつく結合をイオン結合といいます。
お互いが持つ電子を出し合って作る結合と違い、プラスとマイナスの間に生じるクーロン力によって作られるため、陽イオンと陰イオンがあるかぎり際限なく結合できます。
水素結合とは
これまでの結合は原子と原子を結びつけていました。
水素結合は分子同士に結びつきを作ります。
F(フッ素)、O(酸素)、N(窒素)はH(水素)と比べて電気陰性度(自分の方に電子を引っ張る強さ)が非常に高いです。
例えばH2OのHとOの結合に使われる電子は、より電気陰性度の高いO原子に引っ張られます。
その結果、H原子はプラスに、O原子はマイナスに帯電し、同分子と静電引力により結合します。
この結合を水素結合といいます。
水素結合には方向性があり、一定の方向にしか結合できません。
水が固体(氷)になるとき、水分子が他の水分子と方向性を持つ水素結合をすることで、正四面体構造を形成します。特徴として隙間が多くなります。
これが液体の水になると、氷の結晶構造を形成していた水素結合の一部が切断され、隙間の多かった構造から自由になった水分子が隙間に入り込みます。
これにより、水は固体より液体の方が密度が大きくなります。
液体が気体になるには、隣り合う分子との分子間力を断ち切って、液体表面から飛び出せるだけの熱エネルギーを持つ必要があります。
よって、分子間力が大きいほど蒸発しにくく、沸点が高くなります。
水(H2O)は、水素結合をしている分子の中でも際立って沸点が高いです。
水分子1つにつき最大4つの水素結合を形成することができるためです。