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尿は健康診断装置(2)

低活動膀胱とは、膀胱の筋肉の力が低下してしまうため、溜まった尿をスッキリ出すことができない状態です。
進行すると膀胱の排尿機能が失われ、膀胱はただ尿を溜める袋となってしまいます。
尿がいつも溜まっていることで細菌に感染しやすくなり、熱が出たり、結石ができたりします。そして腎臓の機能が低下してしまいます。
治療法はカテーテルを入れて強制的に排尿するしかありません。

低活動膀胱は、過活動膀胱や前立腺肥大症から移行する形で生じますが、詳しいことはまだわかっていません。
膀胱へ行く血液が減り、酸化ストレスがかかると低活動膀胱になると考えられています。
過活動膀胱から低活動膀胱に移行するのは、長い間、過敏に働き続けた膀胱が次第に疲れ、筋肉が衰え、本来の働きが弱っていくためです。
また、前立腺肥大症は肥大がかなり進行すると膀胱が低活動に陥りやすくなります。
低活動状態になった膀胱のレントゲン写真を見ると、霜降り肉のようにサシが入っています。これは筋肉がズタズタに断裂し、その隙間に脂肪が入り込んでいるということです。
尿が溜まっても、もうすぐ容量いっぱいになりそうという知覚が働きづらくなります。尿を押し出す収縮力も格段に落ちます。
その結果、トイレが遠くなります。

膀胱の排尿機能が低下しても絶えず血液は腎臓へ流れ込み、腎臓では尿が作られています。
膀胱に尿が入りきらないと腎臓までも膨らんでしまいます。これは水腎症と呼ばれ、やがて腎臓の機能低下を招きます。
低活動膀胱から慢性腎臓病になると人工透析が必要になるかもしれません。
低活動膀胱は非常に恐ろしい疾患のきっかけとなりえます。

排尿回数をしっかりと数え、正常な範囲に収まっているかチェックする癖をつけ、未然に種々の病を防いでいきましょう。

夜間頻尿はさまざまな要因が単発、あるいは連鎖的に関わっている症状です。
多尿になる原因は単純に水分の摂りすぎなんですが、糖尿病が多尿を生んでいるケースもあるため注意が必要です。
糖尿病になると血糖値が高くなるため、血液の浸透圧が高くなります。すると、細胞の水分が血液に引っ張られ血液の量が増えて、通常より尿量が多くなってしまうというわけです。
その結果、体内の水分が足りなくなり、喉の渇きを強く感じるようになります。そして水分をたくさん摂ることになり、トイレの回数が増えるという悪循環が生じます。
夜中に喉が渇いて起きて水分を摂るというのは、重症の糖尿病の可能性があります。

通常、覚醒時より睡眠時の方が尿の回数が少ないのは、眠っている間にバソプレシンというホルモンが分泌されているからです。
尿の90%は水分です。バソプレシンには、腎臓での水分の再吸収量を増やすことで、睡眠時に膀胱に溜まった尿の量を覚醒時より少なくする作用があります。
言い換えるなら、尿を濃くする作用があるということです。朝起きたときの尿の色が濃いのは、バソプレシンによって尿の成分が濃くなっているからなんですね。
このバソプレシンの合成や作用に支障が起こったものが尿崩症と呼ばれる症状です。
そうなると日中と同じペースで膀胱がいっぱいになるため、夜間に尿意で目が覚めるといった症状が起こってきます。

夜間頻尿の原因には、睡眠時無呼吸症候群もあります。睡眠中に呼吸が一時的に止まってしまう疾患です。
いびきをかく人や、昼間に強い眠気を感じる人に多いです。30代、40代で夜中にトイレに起きる人は、睡眠時無呼吸症候群のチェックをお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群があると、脳の交感神経の高ぶりや、一酸化窒素が減って膀胱が硬くなると同時に、睡眠中に心臓から利尿ホルモンが出るために尿量が増える傾向があります。

前立腺肥大症も夜間頻尿につながります。
前立腺が肥大すると、膀胱が交感神経の刺激を受けやすくなって過敏になり、急な尿意が起こりやすくなります。
さらに深刻になると、前立腺がんが夜間頻尿を引き起こしているケースもあります。

夜間頻尿は、自分が抱えている様々な疾患に気がつくきっかけを与えてくれます。
スウェーデンで行われた実験によると、高齢者の集団を6年間に渡り調査したところ、夜間に3回以上トイレに起きる人は、2回以下の人の2倍も死亡率が高いことが示唆されています。
これは、夜間頻尿そのものが寿命を縮めているということではありません。
寿命を縮めるような病気に罹患すると、ひとつの症状として夜間頻尿が起こる場合が多いということです。
夜間頻尿は、寿命を縮める病気にかかっているサインかもしれません。

尿は健康診断装置(3)に続きます。


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