『デザインのつかまえ方』
『デザインのつかまえ方 ロゴデザイン40事例に学ぶアイデアとセオリー』という書籍を執筆しました。2020年5月7日、エムディエヌコーポレーションから発売となります。
本書はロゴデザインをテーマに、デザインの発想手法と、発想の瞬間にフォーカスを当てた書籍です。今回のnoteでは書籍全体の概要や執筆に込めた想いをお伝えしたいと思います。
「はじめに」で書いたこと
私はデザインの経験を積む中で、アイデアがカチッとはまる瞬間を経験していますが、なかなかそのきっかけや方法を言語化して人に伝えることが出来ていませんでした。デザイナーがデザインを考えている時、頭の中ではどのようなことが起こって、どのようにデザインを完成に導いているのだろう。ブラックボックスのようにも見える、デザイナーの考え方を言語化してみたいというのは以前から考えていたことでした。
「デザインが降ってくる」みたいな言葉を、デザイナーの口からたまに聞くことがあります。また、デザイナー以外の方には、デザイナーが0から1を作り出す特別な存在と見えているのかもしれないと感じることもあります。でも本当にそうなんでしょうか?
執筆のお声がけをいただいたことをきっかけに、私がこれまでに手掛けてきた数々のロゴデザインを俯瞰しながら、そこに発想の傾向や、ある種セオリー(理論)のようなものがないか探ってみることにしました。そして、それを再現性を持つ手法や理論として、より多くの方に伝えたり、デザイナーを目指す方のお役に立てるように書き記すことを目指して、執筆をスタートしました。
第1章 「デザインのつかまえ方」
この章では、7つのステップでロゴデザインのプロセスを解説しています。ロゴデザインの基礎から、デザインする際に意識すると良い実践的なポイントをまとめています。
この項目は、私がロゴデザインの仕事を通して身に付けたことや、大切にしている考え方や手法を分かりやすくまとめています。実際にロゴデザインをするとき、本書のステップに行き来しながら進めていくことで、様々な側面からデザインを考えブラッシュアップできるように構成しました。「人の気持ちを考えよう」「気持ちを切り替える習慣をもとう」など、これまでのデザイン書にはあまり書かれてこなかった部分も、大切なデザイン手法のひとつとして紹介しています。
第2章 「デザインの瞬間」
この章では、ロゴデザインの「課題と解」に着目しました。発想のヒントとなった「かたち」「ことば」「道具」「行動」「シーン」をイラスト化しロゴの隣に掲載しました。イラストを通し、何故そのようなデザインになったのか、クイズのように想像しながら読むことができます。
ロゴにイラストを描き添えるというのは一風変わった構成ですが、ロゴをデザインする際にはロゴがビジネスやユーザーにどのような影響や効果をもたらすのかを頭に思い浮かべたり、ロゴをデザインをすることでどんな風景を生み出し、どんな体験に繋げたいのかを強くイメージすることがとても大切だと私は考えており、そのことをイラストを通してみなさんに分かりやすくお伝えしたいと考えました。各ロゴデザインにおける「ここだけは伝えたい!」という核ともいえる部分を抽出したイラスト、と言っても良いかもしれません。
その他、アイデアスケッチや、採用案以外のロゴ、ロゴガイドラインや各種アイテム展開なども掲載していますので、ロゴデザインについて様々な側面から学ぶことができます。
第3章 「デザインの試行錯誤」
この章では、デザインの舞台裏を詳細に公開しています。キーワードやスケッチ、ラフアイデア、そしてデザインをつかまえた「その瞬間」はいつどのようにやってきたのか。完成までのプロセスを時系列で書き記しました。
この章でご紹介する4つの事例のうち2つは、チームメンバーやクライアントとの対話やコメントをきっかけとして、「デザインをつかまえる」ことに成功している事例です。この章で特にお伝えしたかったのは、デザインはデザイナーが一人で完成させるものではなく、他者からの良い意見はどんどん吸収しながらより良くしていく事が可能であり、またそのような姿勢を常に持って仕事に取り組む事がデザイナーとしての成長につながるのではないか、という点です。
綺麗な事例紹介としてではなく、上手くいったこと上手くいかなかったこと、全てをさらけだすつもりで「デザインの試行錯誤」の章を執筆いたしました。デザイナーが回り道をしながらも試行錯誤を繰り返し、デザインの解に繋げていく様子を体感いただけると思います。
カバーイラストについて
印象的なカバーイラストは、藤子・F・不二雄先生の最後のチーフアシスタントを務められた、むぎわらしんたろう先生に描いていただきました。
私は『ドラえもん』が子供の頃から大好きだったのですが、執筆を通して自分のデザイン原体験を考えているうちに、あらためてその存在の大きさや影響に気がつき、藤子・F・不二雄先生のお弟子さんにあたる、むぎわら先生にイラストをお願いしました。
私はデザインの仕事において、クライアントの持っている想いや魅力を「記憶に残り、そのブランドらしさを持ったロゴ」として昇華することや、デザインする過程を楽しむことを大切にしていますが、本書のカバーではむぎわら先生に私自身の大切な想いや、私らしさをイラストとして描いていただくことができたと思っています。
おわりに
本書は約3年ほどの時間をかけ、心をこめて執筆いたしました。お読みいただけると嬉しく思います。みなさんからの本のご感想もお待ちしております!
著者プロフィール
小野圭介
1982年生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。在学中からブランドコンサルティング会社のランドーアソシエイツでアルバイトをはじめる。'05年に同社デザイナーとして正式採用され、多数のブランディングプロジェクトを担当。シニアデザイナーを経て'12年に独立し、ONO BRAND DESIGNを設立。
【主な受賞歴】
PENTAWARDS銅賞、日本タイポグラフィ年鑑ベストワーク、日本サインデザイン優秀賞、グッドデザイン賞BEST100など。共著に『ロゴデザインの現場 事例で学ぶデザイン技法としてのブランディング』(エムディエヌコーポレーション)がある。
ONO BRAND DESIGN(2012〜)の主なデザイン実績
https://ono-brand-design.com/
ランドーアソシエイツでの主なデザイン実績(2005〜2012在籍)
※デザイナー、シニアデザイナーとして担当した主な案件
ロゴ/CIデザイン
JP日本郵政グループ
バンダイナムコ
JXグループ
パッケージデザイン
大塚製薬 ソイカラ
森永乳業 マウントレーニア ダブルエスプレッソ
KIRIN ファイア、ファイアneo
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