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プロダクトマネジャーの仕事は”苦渋の決断”である

Sansan株式会社の尾花です。
Contractコントラクト Oneワンという契約領域のDXを推進するサービスのゼネラルマネジャー(事業責任者)とプロダクトマネジャーを兼務しています。

あらゆるソフトウェアカンパニーにとって、プロダクトは心臓とも言える存在です。
そのプロダクト開発に責任を持つのがプロダクトマネジャーです。

プロダクトマネジャーの仕事の核心は意思決定にあります。


プロダクトは永遠に完成しない

プロダクトに「作り切った」という概念は存在しません。

プロダクトを機能の集合体として見れば、作り切ることはできます。
競合との機能の比較表をつくり、競合にあって自社にはない機能を追加開発していけば、一時的に完成させることは可能です。

一方で、プロダクトを顧客価値を生み出す手段として捉えれば、そこに完成という文字はありません。

柳井正は『経営者になるためのノート』でこう書いています。

お客様は厳しい
自分の身に置き換えて考えてみると、すぐに分かることだと思いますが、お客様というのは、一度あるものを手にしたり、体験をしたら、そこが基準になります。
そして次からは、その基準でものを見ていきます。
さらには、その基準ではものたりなくなっていって、より高い基準のものを求めるようになります。そして、それを満たすものに出会うと、乗り換えていきます。
このようにして、お客様の方の基準がどんどんあがっていくのです。

柳井正『経営者になるためのノート』

顧客の基準は常に上がり続け、一度満足しても必ず不満を抱きます。
顧客の飽くなき欲求こそが、人類の進歩の原動力とも言えるでしょう。
顧客から常に進化を求められるプロダクトは、完成することはありません。

増え続ける要望

日々、プロダクトマネジャーには様々な要望が届きます。
営業からの受注に必要な機能追加要望もあれば、CSからの重要顧客の機能改善要望も届きます。
プロダクトが売れれば売れるほど要望は増えていきます。

Sansan株式会社ではSansan・Bill One・Contract Oneとプロダクトごとに、Slackのフィードバックチャンネルが存在します。
Sansan株式会社は創業18年目の会社で、プロダクトは進化し続けていますが、祖業のSansanも含めて沢山のフィードバックが届き続けています。

リソースは常に有限である

プロダクトづくりのリソースは常に有限です。

優れたプロダクトは国境を越えて広がります。
世の中に数多あるプロダクトの中で、限られたプロダクトだけが世界中で使われます。
したがって、プロダクトを真にスケールさせたことのある人材は希少です。

激化し続ける採用市場の中で、プロダクトマネジャーもデザイナーもエンジニアも取り合いです。
顧客の要望を全て満たすだけのリソースは永久に持ちえません。

苦渋の決断になる

完成しないプロダクト、増え続ける要望、有限のリソース。
プロダクトづくりは矛盾との戦いです。

さらに、「プロダクトを通じて世界を変える」という野心を抱くなら、非連続な変化を生み出さなければなりません。
プロダクトで非連続な変化を生み出すには、開発リソースを極端に偏らせる必要があります。

たった一つの機能を作るために、数ヶ月の開発リソースの全てを費やすこともあります。
その時は、他のあらゆる顧客要望にNoと言わなければなりません。
重要顧客の開発要望を数ヶ月遅らせなければならない時もあります。
絶対に使い勝手が悪いのは分かっていて、直してあげたいのに直せない時もあります。

それでも、プロダクトに非連続な変化を起こすことが、あらゆる顧客のためになると信じて、苦渋の思いで決断をしなければなりません。
プロダクトマネジャーの仕事の核心は意思決定にこそあります。

意思決定力は体得するしかない

意思決定力は机上では習得できず、実践を通じて体得するしかありません。

悩みながらも、後ろ倒しせず、開発の優先順位を決める。
そして、プロダクトがリリースされた後に、顧客からの喜びの声を聞く。
時には良いとも悪いとも言われず無風となることも経験する。

決断とその結果に対する顧客からのフィードバックを通じて、プロダクトマネジャーの意思決定力は研ぎ澄まされていきます。

世界を変えるために今日も前に進む

プロダクトマネジャーの仕事は、孤独で困難な決断の連続です。しかし、その一つ一つの決断が世界を少しずつ変える力を持っています。
だからこそ、私たちプロダクトマネジャーは、迷いながらも決断し続けます。
その先に、顧客の生活に変化をもたらし、より良い世界を築けるからです。その信念こそが、私たちを前に進ませる原動力です。


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