制作ノート4 OBA PLANNING
制作ノート第4弾は、OBA PLANNINGの運営者でありゼミ担当教員の感想です。
まず、オーディオドラマ制作にご協力いただきましたWorldCode様、TheGLEE様、ミキサー津吹様、そして特別出演の鳳真由様に感謝いたします。ありがとうございました。
「大学時代って、ばかばっかりやって、むちゃして、大騒ぎしてたよね」
コロナ禍で行動制限をはじめ学びの場でも制約ばかりで身動きが取れない昨今。10年、20年経ったときに酒の肴になる思い出になればと思い制作しました。
とはいえ、いつも学んでることとは全く違うことをするというのは容易いことではなく、さらに画面上でグループワークという無理難題を押し付けたわけです。こんなはずじゃなかったという思いもあっただろうにここまで頑張ってくれた学生には感謝しかありません。講義外の時間にも協力してくれたおかげで無事完成したと思っています。
さて、教員という立場、そして学生よりはちょっと先に生まれ、ちょっとだけ多くの時間を生きている先生として、書き綴ります。学生の感想とはは違い固い話かもしれませんがお付き合いいただけたら幸いです。
大学という場所は社会一般とは違う、そう考えることが多々あります。高校までの学校とも違い、独特な位置にある。社会人になる一歩手前、社会に出る準備をするところだとも言います。1年次から就職に向かい準備を始め、資格取得や研修、ボランティアなどの活動をし、4年生は人生の方向を決める大きな決断をするわけです。この決断が全てということではないですが非常に大きな一歩であること、それは皆さんご存知でしょう。この先の楽しさだけでなく苦さも教え、その大きな一歩を踏み出す学生を見届けるのが大学の教員だと思っています。そんな彼らに、『今だから、伝えたいこと』を綴ったのが『プルガレ ア バー』です。
プルガレ ア バー。purgare a bar:ラテン語で障害物を乗り越える。
(専門家からしたら文法や発音が違うと言われるかもしれません。)
悩みという障害物を乗り越える、立ち止まっているひとにそっと手を差し伸べる。この作品に登場するマスターはそんな存在であり、そうなりたい自分を反映した人物です。マスターはこの世に未練が残る魂であり人間ではありません。だからこそ全てを悟っている、そんな人物です。彼が迎え入れる客は迷いや悩みから解放されたい人ばかり。客の悩みに寄り添い助言すると同時に自身の心を浄化していきます。
このお話には3つのテーマがあります。
Ep.1 できないことに気を取られずに、できることをやりなさい
―ジョン・ウッデン―
Do not let what you cannot do interfere with what you can do.
Ep.2 恋の終わりは、自分から立ち去ること
―ココ・シャネル―
The end of love, that it leave from his.
Ep.3 挑戦しないこと以外の失敗はない
―クリス・ブラッドフォード ―
There is no failure except in no longer trying.
Ep.1はまさに今、学生に伝えたい、一歩を踏み出してほしいということ。Ep.2ではこの先、何が起こるかわからない、学生と社会人では生活も責任も全く違うということ。Ep.3では自分を含め、夢を追いかける人たちの背中を押したいという内容です。こういう人、いるよね、と共感していただけたらと思います。
ここまで作品についてお話させていただきましたが、少し制作のことを綴ろうと思います。
制作にあたり、多くの紆余曲折がありました。シナリオ作成では、セリフ1つを書くにも何ていうんだろうと10分、20分、悩むグループ、実習でメンバーがいたりいなかったりで進まないグループ、笑いが絶えず想像を超えたセリフが飛び出すグループ。皆が悩んだのは音だけで伝えるということでした。映像コンテンツが主流となった今、音声だけというアナログ的なコンテンツに感じられるものを作る。普段全く触れることのない、知らないものを作るということ。周波数を合わせて電波のよい場所を探して真夜中にラジオを聞いていた学生だった私とは違う感覚を持つ彼らの個性を殺さずに指導するということの難しさを実感じました。また、キャスティングでもギャップを感じました。演じる=俳優ではなく、声=声優ということ。これには驚きもあり、また、日本だなと改めて思いました。しかし、希望した方々からオファーに返事が来ず、悩み迷いながらオファーを続けWorldCode様のタレント4名にご協力いただけることになりました。そしていざ、読み合わせとなったわけです。が、しかし、タイムラグ満載、音声ブチブチ、オンラインのあるある問題が多発。演出まではなかなか難しく、役作りなどはほぼほぼタレント様にお任せとなってしまい、非常に苦労を掛けたと思っています。
姉御肌でしっかりしていて、さらにキャラクターの性格をはっきりと区別して演じてくださった大塚杏奈さん。力強い声で生き生きと演じてくださった土本紗希さん。細部まで作品分析をして役作り、声づくりをしてくださった山本隆太さん、人一倍苦労しながらも作品と真摯に向き合ってくださった安堂大空さん。(私は怖いのだろうか、いまだに疑問ですが ← インタビュー映像をご覧ください)
そしてギリギリ直前の唐突なオファーを快諾してくださいました鳳真由さん。安定感のある心地よい声で作品に吸い込まれました。本当に楽しい現場でした。ありがとうございました。皆様のご活躍を祈念いたします。
最後になりますが、オーディオドラマというものは言葉と音で表現するコンテンツです。音から場所、人となり、表情をプラスして作品を完成させるのはお聴きくださる皆さんです。ぜひ、推しや好きな人で場面を想像しながら楽しんでください。