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日本人にわからないことを外国人にどう伝えるのか?

ビジネスでコロナの影響を受けているのは日本人だけではない。困惑する外国人経営者も多い。わかりにくい各種の救済制度や申請手続き。外国人の問題から日本人も含めた中小事業者の情報アクセス問題の解消、そのためのITと人間の役割分担を考えた。

外国人と言うと、インバウンドの顧客or雇用されている労働者の印象が強いが、日本に住む外国人の増加に伴い、経営者だって増えている。なかには日本語も十分でない外国人経営者もある。特に小規模な事業者、インド料理やベトナム料理などの飲食店を経営する外国人。彼らもコロナの影響を受けているが情報はなかなか届かない。

IT系の経営者であれば、ネットで情報を検索して自動翻訳で母国語に変換すれば、給付金や繋ぎ融資等の救済制度、補助金・助成金など利用可能な公的支援についてある程度の情報を得ることは可能かもしれない。

しかし、飲食店の経営者のなかにはそうはいかない人もいる。
飲食業は一般に参入障壁が低いからこそ、外国人が着手しやすい事業と言える。母国で経済的な事情を抱え、何らかのツテを頼って来日して開業している飲食店の店主のなかにはPCを使えない人もいる。スマホも電話がせいぜいな人もある。事業がうまくいっているときはいいが、緊急事態になると日本語が十分でない、日本人の支援者が身近にいないことは大きなハンデになる。

商店街に帰属していればそこから情報が伝わることもあるかもしれないが、そうでない場合は母国語のできる知人から限定的な情報を得るに留まるだろう。

この部分の支援を行政やその外郭団体が担うには限界がある。
仮に何らかの公的機関に出向き、各種制度の情報提供を受けたところで、日本語が不十分なためうまく理解できない。翻訳ソフトを使って補完するにも限界がある。

また、情報を得たとしても申請書類の入力は「代行」してもらえない。
情報を得る、得たうえで利用・活用する、それぞれにハードルがある

多くの問題は突き詰めると情報のアクセスの問題に行きつく。
本当に困っている人は情報のアクセスを持たない。情報過多の時代でも、むしろそういう時代だからこそ、とも言える。

困っていそうな誰かを、どこかで関わった人が少しのお節介を焼いて情報を届ける。このお節介を焼いてくれる人が情報を伝えやすい状況を創る。そういうことをしないとこういう問題は解決しないかもしれない。

遅れていたデジタル化、オンライン化がコロナを機に進められるのは結構なことだが、こうしたIT化が情報アクセスの問題を必ずしも解消するとは限らない一番困っている人は必ずそこからこぼれてしまう、ということも念頭に置いてIT化を進める必要があるのではないだろうか?

誰かの当たり前は他の誰かには当たり前ではない。当たり前に使われている行政用語や手続きは外国人に限らず一般の人には馴染みにくいものだ。

しかも相次いで出された各種の救済制度、国民やメディアなどから救済漏れを指摘され、継ぎ接ぎのように追加・変更される制度はまるで全体像がどうなるかわからない作業中のパッチワークのようである。

事業者に情報を伝える支援者(行政の出先機関、関連する士業者、金融機関等)ですら混乱しそうになる。コロナによる急激な変化でパニックになっている経営者においては尚更である。

日本人ですら整理して理解するのに一定の時間を要すのに、どうやって外国人に速やかに情報を届け、理解と手続きを促すのか?

情報アクセスの問題を抱えるのは外国人だけではない。デジタルデバイドをもつ日本人の高齢者も同じである。高齢の経営者は制度活用を、事業継続を諦めてしまうだろう。

外国人にもわかりやすい、高齢者にもわかりやすい状態と言うのは実は他の多くの人にとってもわかりやすい状態である。

この状態をITと人間でどう創り上げるかが大事ではないだろうか?
①どういう人の、どういう状態を想定して、ITと人間でどう役割分担するか?
②ITはどこで、どう活用するか?
③人間はどのようなスキル・属性をもつ人や組織が、どこで、どう支援するか?

平たく考えてざっくり言ってしまえば、次のようなことが考えられる。
・DIY(Do It Yourself)でできる人とできない人を想定する。
・DIYでできる人にはITを使ったうえで、必要に応じて人間のサービスを活用してもらう。
・DIYでできない人は人間が支援し、DIYでできるように促す

そのうえで、ITと人間の役割分担はこんなものが考えられる。

・ITの役割:DIYできる人への情報提供・必要な手続きの効率化
「今、あなたが使える制度はこれ!」
とすぐにわかる一発検索&一発申請を可能にするシステムの構築!

自分の情報を入力すればそのとき自分に必要な情報(各種の制度、手続きに関する情報)を得られるシステムの実現である。経産省や総務省で進められているが利便性と周知性にはまだ問題がある。省庁横断的とも言えない

・人間の役割①:いまDIYでできない人の時限的な代行&DIY移行に向けたナビゲート
情報の入手・申請における時限的な代行とDIYできるようにするためのナビゲート。「やってみせ、言って聞かせて、させてみて・・」で進めることがポイントである。「こうやるんですよ、自分でできるようになればもっといろいろ便利ですよ!」と自立を促す(依存性の排除)。

・人間の役割②:DIYできる人が得た情報を基に次のステップへ進むための支援
公的制度を利用したところでそれは一時的なもの。経営をより高度化する、変化に強い経営にするための支援を人間が行う。

人間の役割①の代行&ナビゲートは、対象が外国人であれば彼らが入国し、在留資格を経て事業を開始するまでに関わった人々(例えば行政書士など)に継続してフォローしてもらい、代行をしてもらえるとよいのではないか?必要に応じて商工会議所や中小企業診断士、社労士、税理士など関連事業者、NPO等との連携も考えられる。

このとき、この代行・ナビ費用を誰が負担するか?という問題が残る。

給付金、補助金・助成金等の事業で多くの公費が行政以外のところに支払われる。行政の役割やマンパワー、スピード等を考慮すれば外部組織の活用は理解できる。問題は適切な役割をもった適切な委託先に、適切な委託内容で、適切な対価が支払われ、最終的に情報や手続きを必要とする人に必要なサービスや資金が届いているか?である(再委託も同様)。

いずれにしろ、多額の費用をかけて作られた制度、事業、システムが有効に使われない限り、未来は楽観しにくいものになってしまう。これは誰も望んでいないことだろう。

コロナを機に、多様な属性をもつ人々が自分に必要な情報を適宜適切に得て活躍できる、それを可能とする状況をITと人間で役割分担しながら創り上げる、こうしたことが改めて求められるのではないだろうか?




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obanote@ミラリスト
歩く好奇心。ビジネス、起業、キャリアのコンサルタントが綴る雑感と臍曲がり視点の異論。