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おいしくてかわいいアート?思いを届けるアイシングクッキー

 多忙な日々を過ごしていると胃の中にいれてしまえば同じ!なんて食事が適当になることもあるけれど、美しいお料理を見ると思わず心がときめきますよね。目でも舌でもゆっくりと味わいたくなるものです。
 今回は佐野市でアイシングクッキーを作る258 icing cookieの保足友恵さんに、その魅力についてお話を伺いました。かわいくておいしい、そんな一石二鳥のアイシングクッキーとはどんなものでしょうか。食べられるアートの世界を一緒にのぞいてみましょう。


かわいいとおいしいを両立したアイシングクッキー

 私がアイシングクッキーという言葉を知ったのは10年以上前のことです。
お誕生日プレゼントとして「Happy Birthday」とケーキの絵柄が書かれたクッキーをいただいたときでした。「これって食べられるのかな?」と思いながら裏側を見ると、大丈夫そう。一見ビニールコーティングがされているように見えなくもないけど、とりあえず一口いただいてみることにしました。

「あれ?硬い・・・味は・・・?アゴが・・・・」と頭の中が軽く混乱し、その時全部食べたのか断念したのか覚えていません。この時アイシングクッキーは食べられないものとインプットしたことを思い出します。

 「配合は一緒なんですけどね、作り手によって全然違いますよ」と教えてくれたのは佐野市でアイシングクッキー講師として活躍する258 icing cookie(にこやアイシングクッキー)の保足友恵さん(以下、保足さん)。ここからはアイシングクッキーとはどんなものなのか聞いてみましょう。

ーそもそもアイシングクッキーとはどんなお菓子なのでしょうか。

保足さん「アイシングクッキーは冷たいの?冷やして食べるものなの?と聞かれますが、そうではありません。アイシングの表面が氷のようにつやつやしているので、「氷」の意味を持つ「ice」という名前がついています。ドーナツの上に白いコーティングをされているものは見たことがありますか?あれがアイシングです。
 材料は粉糖・卵白・お水を練ったものがベースになります。そこに着色料で色をつけたものをコルネと呼ばれる絞り袋にいれてアートを施していきます。
 色の作り方でも個性が出ます。258 icing cookieははっきりとした色が好きですが、くすみカラーが好きな作家さんは黒や茶色を足して作ります。特にオーダーで制作するときは、お客様のご希望の色になるように慎重に作っています。」

アイシングの材料である粉糖と乾燥卵白

―クッキーもご自身で作られるのですか?
保足さん「はい。クッキーも自分で作りますよ。おいしく食べてほしいので、季節や湿度によって配合を変えたり、アレルギーの方でも食べられる材料を選んだり工夫しています。
型も手作りすることがありますよ。ホームセンターに売っているアルミ板を使って作る事ができるんです。今回、佐野市民文化振興事業団で開催する教室で作るはにわクッキーも型から作ったオリジナルです。
 アイシングクッキーはフェイクスイーツと勘違いされることもあるのですが、おいしく食べられます。」

 名前の由来に気を止めたことがなかったので、アイシングが氷からきているのはびっくりしました。またクッキーも型から手作りしたり、気候によって分量が変わったりと、見えない手間がたくさんありました。
 苦い経験からアイシングクッキーは見た目重視のものだと思っていましたが、実際に258 icing cookieのクッキーをいただいてみて、かわいいとおいしいが両立されたものだったのか、と認識を改めることができました。次に保足さんとアイシングクッキーの出会いについて伺っていきたいと思います。

鏡餅は型から手作り(クッキー部分は一部画像処理しています)

アイシングクッキーとの出会いは出産祝い

 ここからは保足さんとアイシングクッキーとの出会いについて深堀していきます。

「アイシングクッキーを知ったのは、1番下の子が生まれたとき、出産祝いでいただいたことがきっかけでした。「なにこれ?超かわいい♡」と、すぐに作り方を調べてみたんです。産後で家にいる時間が長かったので、試しに作ってみたらすっかりハマってしまいました。

―まさかこの出会いが保足さんの人生を大きく変えるなんて、すごい出会いですね。

「実は、上の子たちが生クリームやチョコレートが苦手で。だけどクッキーはとても喜んでくれたんです。たくさん作るようになると、次第に友達にプレゼントするようになりました。その時に「私も作ってみたいからレッスンしてほしい」とお願いされたんです。ただその時は素人だったので、きちんと学んでから教えたほうがいいと思い、先生になるための勉強をすることにしました。」

―先生の資格を取得してからはどうなったのですか。

「最初は他の仕事をしながら、アイシングクッキーづくりのレッスンを行っていました。そのころはレッスン主体で、販売は考えていませんでした。転機になったのは5年ほど前です。Instagramで佐野市のケーキ工房モンテさんから声をかけていただきました。実際にお会いして「一緒にお仕事をしませんか?」と熱心にお誘いいただいたので、自信はなかったけど挑戦してみようと。家族が後押ししてくれたのも大きかったです。
 現在はモンテさんで販売するアイシングクッキーの製造のほか、オーダー制作やレッスンを行っています。」

―258 icing cookieにはどんな思いを込めて名前をつけたのでしょうか。

「先生になるための講座の卒業の日に、屋号を決めるという課題がありました。なんとなく「〇〇屋」にしたいと思っていたのですが、なかなか決められませんでした。悩んでいたら主人が「にこちゃんが好きだから「にこや」にしたらどう?」と言ってくれました。小さい頃からにこちゃんマークが大好きで、いつもそばにいる存在だったので、迷わず「258 icing cookie」に決めました。数字の「258」は「にこや」と読みにくいと言われがちですが…(笑)」

 贈り物としていただいたことをきっかけに、アイシングクッキーの世界にのめりこんでいった保足さん。気が付けばアイシングクッキーとの付き合いも10年を超えていました。それでも飽きることなく、工房で1日作業していても全く苦にならないそうです。ここからは保足さんの作品を紹介しながら、アイシングクッキーに込めた思いを聞いてみましょう。

工房の入口にはにこちゃんがお出迎え

手のひらサイズのアート

 手のひらに収まる小さなクッキーの上に緻密にデザインを施していくアイシングクッキー。ここからは保足さんの作品をご紹介します。

お誕生日用のかわいいクッキー

 私が思う保足さんの作品のイメージはこちらのクッキーたちです。気持ちが明るくなるポップな色使いやかわいいフォントが、保足さんのイメージ通りです。実は保足さんご本人に直接お会いするのは初めてでしたが、まさにクッキーのイメージどおり元気いっぱいでポジティブな方でした。


事業団の講座のために作成いただいた貴重なはにわクッキー

 こちらは佐野市民文化振興事業団で行う「アイシングクッキー教室(1月19日開催)」で作成する予定のはにわクッキー。型も手作りです。はにわモチーフのアイシングクッキーは珍しいのではないでしょうか。はにわの何とも言えない「うひょー」の表情が絶妙です・・・!

おめでたい新年のクッキー

 今年の干支であるへび、富士山、梅のセット。お年賀にちょっとお渡しするのにぴったりですよね。相手が気を遣わないくらいのちょっとした手土産にいつも悩んでいる私には、アイシングクッキーの存在を知れたことは大きな収穫です。


つやつやの表面が美しい・・・!

 保足さんの作品の多くにはニコニコのお顔が書かれたものが多いことにお気づきでしょうか。nicoyaの大定番であるにこちゃんクッキー。ビタミンカラーで元気になりそうです。

 大小さまざまなクッキーが工房で誕生していました。「どの子にしようかな~」とじっくり選ぶのも楽しみのひとつですね。

―保足さん自身はアイシングクッキーづくりで心がけていることはありますか?
いいものを作りたいという一心で制作しています。具体的にはアイシングのぷっくり感にこだわりを持っています。ぷっくりとしたツヤ感は水分量の調整が難しいんです。その日ベストの水分量で納得のいくアートが描けるととてもうれしくなります。」

食べた方の反応をなかなか見ることができないので、自己満足の世界に陥りがちとお話していますが、Instagramを通じてうれしい感想をいただけることが励みになっているそうです。

あまり欲がない性格ゆえ、自然といい方向に向かっていったそう

気持ちを届けるアイシングクッキー

 258 icing cookieでは、1年を通して行事やイベントに合わせた作品を制作しています。企業の周年記念、卒業式、推しの誕生日など、さまざまなアイシングクッキーのオーダーを受け制作しています。

「ケーキ工房モンテのケーキにアイシングクッキーをデコレーションすることが可能です。お子さんやお孫さんの名前を入れたり、お気に入りのイラストで作ってほしいというご依頼をいただきます。内容にもよりますが、数千円から1万円近い金額になります。金額だけで考えるのは違うけれど、それだけ愛情深く、記念日をお祝いしたい気持ちを裏切らないように、期待以上のものを作らなければと思っています。」

―確かにお金だけでは計れないですが、贈り手の愛情がとても感じられますね。

「お誕生日だけでなく、結婚式で新郎から新婦へのサプライズや、推し活でファン同士のプレゼント交換に贈ったりと、気持ちを伝えるためにオーダーしてくれるんだなと感じています。とても素敵なことですし、せっかくアイシングクッキーを選んでくれたからには喜んでくれるものを作りたいですね!」

保足さんの言葉の端々から、職人気質と人を喜ばせたいという気持ちが伝わってきました。アイシングクッキーは、人と人とのつながりを仲介し、忘れられない思い出づくりに一役買っていることがわかりました。


ラッピングに使うリボンも手作りしています

おわりに

 おいしくてかわいいアイシングクッキーの世界はいかがでしたか?実は佐野市にはたくさんのアイシングクッキー作家さんがいらっしゃいます。「クッキーを見れば誰が作ったのかわかります。作り手の個性がでるのもアイシングクッキーの魅力のひとつなんですよ。」と保足さん。

 手間暇をかけて作られたアイシングクッキー。ぜひお気に入りを見つけて、自分へのご褒美やギフトにしてみてはいかがでしょうか。きっと言葉では伝えきれない気持ちも一緒に伝わるはずです。

友人に贈ったら、偶然同じ子を贈られました。まさに優しさの連鎖

258 icing cookie 保足友恵さん
ケーキ工房モンテ専属・社員
(一社)日本サロネーゼ協会アイシングクッキー認定講師
(一社)日本サロネーゼ協会デコレーションクッキー認定講師

🍪258 icing cookie
🍰ケーキ工房モンテ


佐野市民文化振興事業団 事業団友の会S・Cフラワーズ企画
アイシングクッキー教室

2025年1月26日(日)14時より
佐野市郷土博物館講座室にて開催(満席のためお申込み受付を終了しました)

詳細はこちらから


🌟 公益財団法人佐野市民文化振興事業団
佐野市大橋町2047(佐野市郷土博物館内)
🌟 公式Instagram ディスカバーサノブンカ
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