
ポートレート写真集『ASYLーアジールー』転
この度、被写体:時子としてオンラインイベント【エアコミケ2】にてデジタル写真集を発表することと相成りました。
企画制作:sanagi from anonymousbody (サナギ)
作品詳細はこちらのアドレスへ
https://enjirom.blog.fc2.com/blog-entry-1073.html
作品情報と併せて、サンプルが数枚ご覧いただけます。
内容は随時更新されますので、要ちぇきらーです。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
私は撮影を続けるうちに精神に支障をきたし始めた。
『社会』のペルソナを司る『わたし』が、自分の中でどんどんと権力を持ち、【わたし】をより強く責めるようになってきた。
『私は被写体をする価値があるのか』
『サナギさんが演技しないで、と言ったのは私に被写体としての能力が足りないからだ』
『せめて体についた醜い脂肪だけでも、削ぎ落とすべきだ』
日々、【わたし】は『わたし』から色んな言葉を浴びせられた。
そして私は自己を見失い、もともとあった離人症状が悪化した。完全に私を自己と決定づける意識は、私の内側にはなく、心と身体の外側で迷子になって浮遊していた。
とにかく感情や理性、全てのコントロールができなくなった。
トレーニングをはじめとする、身体のメンテナンスは毎日、3時間くらい行っていたし、そのくせ食欲が収まらず、気持ちが悪くなっても食べ続けた。1時間のトレーニングをポロポロと涙をこぼしながら行ったこともあった。そして『許してください』と『わたし』に泣き叫びながら、必死に懇願し、泣き疲れて眠る日もあった。
このままでは、撮影を続行できない。作品を完成させることができないとハッキリと感じた。だが、それが一番、なんの価値もない【わたし】が恐怖するバッドエンドであり、また自己肯定感をより下げる行為でもあることを重々、承知していたのでそれを、回避すべく、私は思い切って長い休暇を取ることにした。
幸いにも有給は充分すぎるくらい残っていたし、理解のある職場だったため、連休+2日間の有給をいただいた。
本当はその休日にも撮影の予定が入っていたのだが、サナギさんに状況を話し、撮影を延期していただいた。サナギさんは快諾してくださり、療養に専念してくださいと言ってくれたが『一番危惧していたことが起きてしまった』という気持ちを同時に抱いたと思う。
療養中でも色々なことがあった。心が掻き乱される中、ついに『何故、被写体は私でないといけないのか?』という究極の壁にぶち当たった。そして私は事もあろうに、サナギさんに対して承認を求め出したのだ……。
なんとか体裁を整えて、私は仕事に復帰し、その週末、サナギさんと最後の撮影を行った。
その時、私はもうギリギリだった。私の自己は私の外側にいて、私という感覚は、ずっと遠いところにいた。そして、感情がコントロール出来ず、とうとうサナギさんに怒りをぶつけてしまったのである。
ロケーション移動中の電車内、私の自己やルーツを掘り下げていくサナギさんの言葉に耐えられなくなった。
『今は現実をみる余裕がない。作品を完成させるために私は今、ギリギリで立っている。私は心から作品を完成させたい。その邪魔をしないでほしい。』
と早口で捲し立てるように涙を流しながら訴え、遂には
『私を作品作りのためのただの人形だと思うなら、私はすぐに、ここから立ち去ります。』
と言ってしまったのだ。
今まで、色んな人、色んな場所で何度も撮影をしてきたし、何十年も社会の一員として、上手く仮面をかぶって生きてきたつもりだった。実の父親にすら、怒りをぶつけられない私が、他人にここまで怒りをむき出しにすることは、初めてだった。自分でもかなり驚いた。本当に本当に辛くて切実で精一杯だったのだ。
サナギさんはそんな私を怒らなかった。私のぶつけた怒りに向き合ってくれた。ぽつりぽつりとしかし、真摯に的確に想いを伝えてくださった。
その時、私が一番、心を動かされた今作のテーマを思い出した。
『生きるのが苦しい人同士の関係、人間の関係維持に対して敬意をはらう』
……私たちはその後、撮影を無事、完遂した。
今作の一番、重要なテーマを私たちは私たち2人の関係を維持することによって体現したのだ。
私は、表現者が自身を投影するためだけに、あてがわれた人形のような被写体ではなく、サナギさんと本当の意味でパートナーになれたと思った。
本音で相手と向き合い、人間関係を構築していくこと。信頼すること。その素晴らしさと尊さを知った。
この作品を作って、心から良かったと思った。
そんな今作のポートレート写真集が本日中に、発表となります。詳しくは、下記のリンクへアクセスくださいませ。
話はまだ『転』であり、この物語を『結』する続きは、私なりの今作のテーマの解釈と伝えたいメッセージを綴ろうと思っています。毎度、話が長く申し訳ございませんが、お付き合いいただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
作品詳細はこちらのアドレスへ
https://enjirom.blog.fc2.com/blog-entry-1073.html
作品情報と併せて、サンプルが数枚ご覧いただけます。
内容は随時更新されますので、要ちぇきらーです。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。