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サービス業だけど、本当は夕方に帰りたかった
マッサージとエステに5年ほど勤めた。サロン業界の多くが早番・遅番制度をとっていて、そのどちらも経験したが、社員たちには遅番はあまり人気がないように見えた。
平日19時以降などは会社帰りの方が多くいらしてくださる。その時間帯にビジネスチャンスはあるのだが、やはり皆、帰れるものなら早く帰りたいという思いが共通してあるようで、遅番に積極的に入りたいという人は少なかった。
自分は指名数が少なく、延長提案や商品の営業なども下手だった。バックヤードに貼ってある営業成績の棒グラフは、いつも自分がビリ。
そのため自分から遅番を希望してよく入った。あまりに営業ができないので、人が嫌がる汚い仕事をしたり、人気がない時間帯のシフトを希望することで、バランスを取ろうとしていたのだと思う。
結局身体を壊してセラピストは辞めたものの、その後も「夜遅くまで働くことで喜ばれる」という思い込みは強かった。
その後OLに転職してしばらくした頃、あるコーチと知り合い、その人からコーチングセッションを受けることになった。
日程を決める時に「水曜日の21時はどうですか」と提案したところ「ああごめん、僕は19時30分が最終受付なんです」と言われて驚いた。
会社勤めの人にとって21時からコーチングというのはありがたい時間帯である。急な残業が入ったとしても、21時からなら間に合う場合が多い。人気の時間帯を断るコーチがいるなんて、とびっくりした。
結局19:30からのセッションで契約したが、その時間までに帰宅してご飯をかき込むのが大変だった。それでもそのコーチからセッションを受けたかったので頑張った。と、同時に「セラピスト時代、あんなに遅番を頑張らなくてもよかったのかも」などと思ったりした。
日本人は真面目だから「21時から仕事をお願いしたい」なんて言われたら、大体の人が引き受けてしまうだろう。でもそこは「ごめんなさい、20時とかじゃダメですか」「19時スタートだとありがたいのですが」とすり合わせしていいのだ。
逆に21時でなければダメというお客さんは、自分でなければダメというより、相手を自分の都合のいいように使いたいだけの人かもしれない。
朝ドラ「虎に翼」の戦前の場面を見ていたら、男性が夕方には帰宅している描写があり驚いた。
今やサラリーマンは21~23時、あるいは終電で帰るというのが当たり前の社会だが、元々はそうではなかったのだ。
自分の知っている社長さん(50代)などは「夜中の3時くらいまで、なんなら寝なくても全然働けますよ!」と豪語しているが、寝なくても働ける体力おばけでないとやっていけない社会というのは何なんだろうか。
そんなことを考えていたら先日、セラピスト時代の仲間から「今度飲み会しませんか。仕事があるので20時30分スタートで!」とLINEが来た。
私の20:30と言えば、もうお風呂に入って食事をして、後片付けも終えてほっと一息、食後のノンカフェインティーを飲んで落ち着いてる頃合いである。
無理して付き合った方がいいのかな。そう一瞬思ったが「お薬の影響でお酒が飲めなくて。ごめんなさい」とお断りの連絡をした。
頑張った方が自分のためになる時もあるが、これはそうではないケースと判断した。
これから私に必要なのは、誰かに認めてもらおうと頑張る努力よりも、自分がごきげんでいられる努力を信じることなのかもしれない。
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