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自分の壁の超え方を、角煮風レシピに見出して

豚の角煮という料理が好きで、外食して角煮丼がメニューにあると、つい頼んでしまう。
角煮が口の中でとろける感覚はもちろん、横に添えてある味の染みたチンゲン菜と半熟卵も、それらを白いご飯と一緒に食べるのも好きだ。

スーパーで「豚バラブロック肉」を見かけるたび、自分でも角煮を作ってみようかと思うのだが、なんとなく難しそうで長年手が出せないままでいた。

それに豚バラのブロック肉というのは量が多く、一人暮らしにはちょっと多い。実家の母はバラ肉が苦手で、そこで作るのも難しい。

もっと角煮を手軽に食べたいけど出来ないという状態が長く続いていた。

ある日の会社帰り、駅の本屋さんで料理本をぱらぱらと見ていると「豚の角煮風丼」というレシピがあった。

何でもゆでた大根を一口大に切って、それを薄切りロース肉で巻いたものを角煮を作るときと同じ調味料で仕上げるというものだった。

肉巻き料理は作ったことがあったので、それならいけそうだと早速実家で作ったところ、うまくできた。油っぽいものが嫌いな家族からも「ロースのお肉がヘルシーで美味しいね」と好評だった。

食後にお皿を洗いながら、ふと考えた。

私は新しい物事を始めようとするとき、それが今までの人生の経験値に全くないものだと、どうやら「難しい」と思ったり足踏みしてしまうらしい。
最初に角煮を作ろうかと思ったときも「あんなにぶ厚いお肉、柔らかく煮えなかったらどうしよう」という不安が大きかった。

しかし「野菜の肉巻きなら作ったことがあるから、角煮風なら出来るかも」というように、これまでの人生の経験と目の前の課題にちょっとでも共通点を見出したことで、うまく料理することが出来た。

数年前、会社を辞めて独立したいと知人にもらしたとき「じゃあSNSで毎日発信しなきゃだめだよ。数十万円の高額商品を作って、友だちにもバンバン売っていかないとね」とアドバイスしてもらったことがあったのだが、とても出来る気がしなくて会社を続けることにした。

あのときの私の判断も、知人の言うことも間違ってはいない。

でも今までの人生で一度もしたことがないことをするのはそもそもハードなものだし、それが出来ない人のことを「いつまで言い訳ばかりしてるの?」「ちゃんと行動しなきゃ成功できないよ!」という言葉で追い詰めるのは、なんだか間違っていると思う。

新しいものに挑戦しようとするとき、足が止まってしまうのは当然のことだ。
そんなときこそ「これならできるかも」と発想を転換してみたり「もう少しこうだったらできるんじゃない?」と他人にアドバイスが出来る人が、先行き不透明で絶対のルールがない、これからの時代に求められていく気がしている。

余った角煮風の肉巻き大根をタッパに入れて、冷蔵庫の家族に見つからなさそうなところにしまいながら、そんなことを思った。




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小澤仁美
最後までお読みくださり、ありがとうございます。書き続けます。