好きな食べ物は何ですか、の質問から見える思惑

「好きな食べ物は何ですか？」と聞かれて、素直に答えられていたのはいつ頃だろう。

エスニックと答えれば「女子っぽい～」と言われるし、とうもろこしと答えると「夏じゃん」と言われ、お出汁のきいたものと答えると「年寄りくさ～」と言われる。いつからか何だかもう面倒くさくなってしまって「食べ物は何でも好きです」というようになった。

考えてみれば「好きな食べ物は〇〇です」というのは、なかなかに難問でもある。特殊な食べ物をあげれば「面倒くさそうな人」、高そうな食材だと「ははあ、お金持ってるのね」などと、食べ物から人柄や収入まで勝手に推測される恐れもある。

その一方で「好きな食べ物は何ですか？」という質問を、自己ブランディングに利用する人たちもいる。

例えば、みんなのアイドルハローキティ。キティちゃんの好物は「ママの焼いたアップルパイ」だそうだ。ただのアップルパイではいけない。母親との関係が良好であること・定期的に焼き菓子を作れる環境があることをさりげなく匂わせるため、ハローキティの好物は「ママの焼いたアップルパイ」である必要がある。

そういえば宝塚歌劇団では生徒一覧が見れる「おとめ」という雑誌が毎年春に発行される。そこにはタカラジェンヌ一人ひとりの誕生日から好きだった役、そして好きな食べ物が載っている。

娘役さんなどになると「苺」「ミルクティー」「パンケーキ」など、可愛らしい食べ物を挙げる生徒さんが多い。
以前トップ娘役だった方で「本当はカレーやハンバーグが好きだったが『娘役としてどうなの』というバッシングが怖くて嘘をついていた」と語っているのを見たことがある。

当然そこには「母の手料理」と書く生徒さんも多い。ただの手料理ではなく「母の手料理」と書くことで、キティちゃんのように自らの家族関係の良さをアピールする。その上ジェンヌさんは注目を浴びる商売上、心ないバッシングをされることも多い。そんな中で「好物は母の手料理」と記載することで「お前がいびってる私にだって家族がいるのだ」という無言の抵抗をしているような気がする。

そういえば以前、仕事先の偉い人からご飯の誘いを受け「（一番格下の私に気を遣って）小澤さんの好きな食べ物は？」と聞かれたので、早く帰りたかった私は「麺類です」と答えた。
その結果めちゃくちゃ高そうな水炊き屋さんに関係者一同お呼ばれし、鍋の締めに投入されたラーメンをみんなで啜るという事態になった。何だこれは。

noteでは顔出し・名前で活動している私ではあるが、好きな食べ物に関しては回答NGの姿勢を貫いていきたい。自分の純粋に好きなものを表現して「ああ、小澤さんって○○な人なのね」と決めつけられたくないのである。

だがせっかくこのnoteを開いてくれた皆様には、特別に公開しようと思う。しばらくしたら非公開、いや高額の有料記事にするかもしれない。

私の好きな食べ物は（担々麺、餃子、トマトパスタ、関西風のお出汁）である。なんのブランディングもしてない回答で恐縮だが、もしこの中で美味しいお店などご存知の読者さんがいらしたら、ぜひご教示ください。

好きな食べ物は何ですか。これほど自分への表現幅のある質問も珍しいように思う。あなたの好きな食べ物は、何ですか？

＊お知らせ＊
文学フリマ京都にて出店します！ぜひ遊びにいらしてください🍀

https://c.bunfree.net/c/kyoto09/!/さ/17