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繰り返しの情報が真実になる
脳科学を学んでいた際「人は繰り返し刷り込まれた情報を、真実だと思い込む」と習った。
以前うちの父が兵庫県知事のニュースを見て「あの面の皮の厚さだけは、見習いたい」とボソッと呟いていた。
そのあと県知事がニュースに出たとき「あっお父さんの好きな人!」と、冷やかしを兼ねて言ってみた。はじめは嫌そうな顔をしていた父だが、繰り返し言っているとある日、父が新聞記事を切り抜いている。
何をしているのかと聞くと「県知事のことをもっとよく知りたい」と、兵庫県知事に関する記事をスクラップにまとめて熟読していた。いや、ファンになっとるがな。おそるべし刷り込み効果。
話は変わって最近、持病の子宮筋腫がよくなってきた。
このまま薬で症状をおさえるという方針だったが、母が「薬なんてとんでもない、子どもを産めなくなったらどうする」「絶対に手術するべきだ!」と激怒。
もう何を言っても聞き入れないので、母に病院の先生と話をしてもらうことにした。
産婦人科の病院は、妊娠して幸せそうなご夫婦ばかり。そこに老齢で狂い気味の母親を連れていくことを考えると、気は重かった。
明日病院に母を連れていかねばならない。母はきっと病院の先生にも暴言を吐くだろう。そんなことを考えていた診察日の前日、私は所要で大阪の梅田にいた。何かおみやげでもとデパ地下をうろうろしていると、そこにかの有名なりくろーおじさんのチーズケーキ売り場があった。
5mくらいの列が折り重なって3列くらいになっている。列の先に並ぶのは、インスタでよく見た焼きたてふわふわのチーズケーキ。
「このケーキをお守りに、しんどい明日を乗り切ろう」そう思い、列に並んだ。そこでは売り場で少数のチーズケーキを制作しているらしく、一回に焼けるのは10個ほど。10個売れた後は皆、ひたすら次の焼きたてを待つ。
売り場のお姉さんが「焼きたてではなく、工場で焼いたチーズケーキでしたらすぐお渡しできます!」と叫ぶと、何人かの大きなスーツケースを持つ人たちはそちらの列に移動していた。きっと新幹線や飛行機の時間が迫っているのだろう。
自分はこの日比較的時間があったので、行列に並んで無事にチーズケーキワンホールをゲットした。
こころなしか、箱に描かれているりくろーおじさんの表情がやさしい。まるで私に「がんばれ」と言っているように聞こえた。
新幹線で東京駅まで移動すると、さまざまなお土産売り場に列が出来ていた。中でもニューヨークパーフェクトチーズというお菓子の店に長い列が出来ている。私はその横を、りくろーおじさんのチーズケーキを持ってさっそうと歩く。大丈夫、私にはりくろーおじさんが付いてる。
・・と、ここのところずっとおじさんの絵を見ていたせいか、おじさんの絵を見るとホッとする体質になってしまった。
地下鉄などに、指名手配犯の写真が貼ってある。OL時代、地下鉄の満員電車にやられてしんどいとき、指名手配犯の写真の中でにっこり笑っている桐島容疑者の写真を見ると、少しだけ安心した。
ネットで調べると同じように感じてた人が何人かいた。みな、あの笑顔を見るたびに安心が積み重なっていったのかもしれない。
人は視覚・聴覚共に、何度も同じ情報を刷り込まれるとそれがあたかも絶対的真実のように思い込む。
どうせ同じ思い込みなら焼きたてふわふわのチーズケーキのように、自分を幸せにしてくれるものがいい。そうだよね、おじさん。
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