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「そんなことやって何になるの?」と切り捨てる前に

今から25年くらい前の夏、家族で温泉旅館に泊まった時。

翌朝その旅館を発つ前、祖母が使用した浴衣を家族5人分、美しくたたみ直していた姿を覚えている。

当時の私はどうせすぐ回収される洗濯物なのに、なぜそんなに丁寧にたたむのか理解が出来なかった。

今ふりかえると、祖母は客室清掃に来る方が気持ちよく仕事が出来るように、と心を込めていたのではないかと思う。

苦労の多かった祖母は浴衣をたたむことを通して、目立たない仕事への感謝と、その尊さを旅館の方へ伝えたかったのかもしれない。

時は流れて私も大人になり、何かの前泊などでビジネスホテルをよく利用するようになった。ズボラな私も、清掃の方やホテルスタッフには最大限の感謝と敬意を持って宿泊をしたい。

しかし、ホテルを利用する時にいつも直面していたのが「使用済みの浴衣やタオルはどこに置いて帰るのがベストか」という問いだった。

バスタブの中にぶん投げておけばいいとグーグル先生は言う。だけれど、浴槽に腰をかがめて回収するのって、清掃の方はきつくないんだろうか。

宿泊の翌朝、いざチェックアウトと部屋を出るとき、廊下ですれ違う清掃の方はだいたい私よりご高齢の方だ。

これからたくさんの浴槽にかがんで浴衣やタオルを回収していくのかと思うと、なんだか心苦しくなる。かといってベットの上に置いておくとタオルの濡れが気になるし、いっそハンガーにかけておくのがいいのだろうか・・

と、そんなことをここ数年思っていたところ、こんな記事を発見。

https://note.com/suzukyuin/n/n5227602c5a0a...

使用済みタオルや浴衣は、バスタブの縁にかけておくと回収しやすくて良いらしい。

その他ホテルのゴミ箱はなぜあんなに小さいのかなど、長年の疑問が記事に載っていてすっきりした。

そんなことをして何になるの?お金払ってんだから、無駄じゃない?と誰かに笑われても、使った浴衣やタオルは静かにそっと、淡々とたたみ続ける人でありたい。


そんなことやっても無駄じゃない?と切り捨てないのは、仕事でも言えることだ。

例えば、今年の夏にライターとしての活動を始めた当初、私は集客文章を専門にしようとしていた。

でもあるとき友人から「愛犬との思い出を文章にしてくれないか」と依頼がきて、自分が思い描いていた仕事とは違ったけれど、とにかくやってみることにした。

文章にしたものをクライアントの方にお渡しすると「とっても素敵な文章をありがとう!これを本にしたいと思います」と言って頂き、思いがけず自分が書いた文章が紙の本になることになった。


「こんなことして、何になるんだろう」は一旦横に置いておいた方がいいこともある。

特に、自分の名前で仕事をし始めたばかりの人は。

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小澤仁美
最後までお読みくださり、ありがとうございます。書き続けます。