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胃に穴があくサービス業〜OL時代のランチ事情
忘れられない味というのがある。
うちの父はまだ営業マンになりたての頃、外回りをしていたら時計の針が14時を回っていて、ちょうどその日朝食を食べれなかったこともあり空腹で街を彷徨っていた。
たまたま顔馴染みの中華料理屋さんの暖簾がまだ出ていて「まだやってる!」と父が店に飛び込んだところ、従業員の皆さんがまかないを食べているところだった。(たまたま暖簾をしまい忘れていたらしい)
「お願いします、お金は払うからそれを食べさせてください」と頼み込んで食べさせてもらった、まかないの野菜炒めの味が50年経っても忘れられない、とのこと。
誰にでも忘れられない味というのはある。
自分の場合は、OLになりたての頃食べた辛いラーメンがずっと心に残っている。
新卒以来5年間サービス業だったこともあり、休憩が取れず食事を食いっぱぐれることもしばしばあった。定期的な時間に食事を取れないことが当たり前、空腹に胃酸が回るのかよく胃痛が生じ、チョコを飲み込んでバファリンを水で流し込む生活をしていた。
事務職に転職した際は、これで自分もちゃんと休憩が取れると嬉しかった。ドラマなんかでよく見る、長財布持ってランチに行くお姉さんになるんだ、と財布もしっかり新調した。
ところが自分がいた国会議事堂前駅というのは、食べるところがほとんどない。
みんなランチはコンビニ・社食、あるいは家から持ってくるお弁当でしのいでいた。どうしても外食したければ10~15分ほど昼休みをオーバーして赤坂の方にまで行く必要があった。
ランチはしてみたい。しかし13時の始業の鐘が鳴る時にはデスクに戻っていたい。そんなビビリな性格も相まってせっかくOLデビューした後も、粛々とお弁当を食べる生活を送っていた。
それから4ヶ月ほどして、8月。
お盆の時期というのはお偉いさんが一斉に休むので、むしろ若手は出勤したい時期である。私も人のいないオフィスで仕事をしていたところ、普段あまり絡みがない先輩から外食に誘われた。
歩いて7分くらいのところにあるビルの地下に、その店はあった。地下の奥にあり照明もかなり暗いせいかお客さんは少なく、料理もすぐ出てくる。
その時食べた透明な辛いスープのラーメンがとても美味しかったのだ。中国の薬味が色々入って、辛いんだけど深い味わい。元々お店の売りは火鍋ということなので、そのスープを使っていたのかもしれない。
職場からすぐの場所にある美味しい穴場のお店ということで、それからコロナ禍でそのお店が潰れてしまうまでよく通った。閉店の報を聞いた時は嘆き悲しんだ。
思えば週に一回セブンイレブンのカフェラテを、月に一回そこの辛いラーメンを食べることで、慣れない宮仕えをなんとか乗り切っていた気がする。
今でもあの辛いラーメンを食べたいとよく思うのだが、似ているものがあまりない。お店では「麻辣麺」と呼ばれていたが、いわゆる麻辣麺よりもう少しスープが澄んでる感じだった。
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強いていえば韓国の袋麺、辛ラーメンやノグリラーメンに近いのだが、辛いだけでなく魚介の旨みが深かった気がする。
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味わいは韓国料理屋さんで出てくる辛いスープに似ているけど、コチュジャンの風味ではなかったんだよなあ。。
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ここまで書いて「もはや自分で再現するしかないのでは」という気になってきた。
世の中には日高屋の消えたメニューを再現している人もいるし、noteには自宅をコメダ珈琲にする強者もいるし、ここは私がやるしかない・・?
いつかあの思い出の味を再現して、自宅を辛いラーメン屋さんに改造する日が、
私も来るのかも。
文章で人間性を伝える。読む人の心を揺さぶる。
残席わずか&おトクな早割は明日まで。
今週もお疲れ様でした。
週末お勤めの方も、お休みの方も、素敵な時間をお過ごしください。
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