【大人の“あそび”】即興演奏は「遊び」そのもの。「まちがい」はありません―ヨーコ カンタルーナ―
自分の「呼吸」とひとつになりながら、からだをゆるめ、大地とのつながりを感じたり、空に広がり溶けてゆく自分を意識してみます。そして、そんな自分から生まれようとしている音を、ほんの少しの勇気をもってただ許して音にしてゆく……。私の即興演奏はそんなプロセスの中から生まれます。とてもシンプルで、努力とは無縁で、自分から生まれるものが声であればそれが歌になり、楽器を通って表現されるときは、それが笛の演奏になって現れます。
人が瞑想とともに即興的に表現するアートと、大自然の在り方は同じエネルギーだとたびたび感じるのですが、それはとても「遊び」に満ちていて、同時に「神性」であり、正解というものがなく、つまり間違いというものが存在しない世界です。間違った雲の形! だとか、間違った花の姿!なんて、見たことはありませんよね?
青空に浮かぶどんな雲もいつも完璧に美しく、野に咲く花たちもいつだってなんて可憐で優雅なことでしょう……。「自然は偉大なアーティスト」という言葉を聞いたことがありますが、その言葉に深く共感します。
私たちがそのアクティビティに「遊び心」の質を持ちこむことが出来るとき、私たちから生まれる全てはおのずと、そんな大自然の美しさに近づく気がします。そして、「遊び心」の質と繋がるためには、なんといっても「自分が好きなこと」から始めるのが一番なのでしょう。
私の仕事は音楽家としてコンサートなどで演奏することで、その活動をとても楽しんでいるのですが、他に、ワークショップやレッスンで出会う方たちと自身の経験を分かち合うことも、人生の歓びのひとつです。ことに、ネイティブアメリカンフルートは、初めて楽器に触れる方やこれまで音楽に親しみのなかった方にも好評で、というのも、誰にでも簡単に音が出せて、運指がシンプル。楽譜を読める必要がなく、楽器として完成されていて、しかも大人のおこづかいで購入できるほどほどの価格で…… となんだか素晴らしいことずくめ。
外観も音色も素朴で美しいそのフルートは、まさに魔法の笛と呼ぶにふさわしく、とってもマジカルです。難しいことはさておいて、いきなり「遊び心」全開で即興演奏に興じてもらえるところが、「この楽器の演奏をシェアしよう」という動機にも繋がります。
ワークショップに参加して人生で初めてフルートに触れる方が、「さて、自分にもほんとうに演奏できるんだろうか?」と不安とともにいながらも、ゆっくりとご自身の思い込みや心配を解き放っていき、帰る頃には即興演奏を楽しめるようになっている姿を見るとき、私もその方と一緒に経験できた素晴らしい瞬間への感謝で満たされていきます。
人はみな音楽的な存在として生まれてくるそうです。いにしえの時代に、人々は自らの心臓の鼓動から太鼓を創り出しました。また、人類が笛を作ったのは、古い樹にできる空う洞ろに風があたりヒュ~っと鳴るのを聴いたことから始まったという説があります。リズムとメロディですね。そして、人と人が出会うエネルギーからはハーモニーが生まれ、存在全体はいついかなるときも圧倒的なサイレンスに満ちて、私たちはそこにいだかれているとは、なんというミラクルなのでしょう。
YOKO Cantaluna
(ヨーコ カンタルーナ)
篠笛・ネイティブアメリカンフルート・バンスリなどの笛の演奏家として40 年に渡り活動。国内外でコンサート活動や演奏指導をするとともに、自身の生の探求のためにヨガと瞑想を研鑽している。現在、歓びに触れること・楽しむこと・生き生きすること・くつろぐこと・自然治癒力を高めること・人々や自分自身や自然環境に愛と調和のエネルギーをもたらすことなどをテーマにワークショップやコンサート活動を行っている。
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OAUマガジン 5号
仕事のことや家のこと、毎日忙しい私たち。大人たちはいったい、どんなことをして「遊んで」いるのでしょうか? ふしぎなことに、遊びの取材をして…
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