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【大人の“あそび”】気が付けば中国茶がライフワークに―田村 直美―

茶葉の香りに魅了され、台湾へ留学

 私と中国茶との出会いは今から35年ぐらい前でしょうか、香港映画好きの友人に誘われ、香港を訪れた際に買い求めたのが中国茶でした。何とも言い難い、美しい香りにすっかり魅せられてしまいました。しかし当時の日本では、そのような中国茶に巡り合うことは出来ず、幻となってしまいました。
 その後、中国の福州を訪れた際に、幻だった中国茶に再び巡り逢えて大興奮! そのとき私が買い求めた茶葉は、当時の中国の人の1カ月分の給料に相当する金額だったそうです。
 香港、中国に続き、台湾へ出向いたときに、またまた絶品の茶葉に出会ってしまい、ついには2000年の春から2年間、中医学とお茶を学ぶために台湾へ渡ることに。

甘い香りに包まれた台湾での2年間

 台湾では国立政治大学で半年、その後国立台湾師範大学で1年半、北京語を学びながら、中医学・薬膳と中国茶を研修しました。中国茶は、中国茶道の世界では有名な「清香齋チンシャンザイ」の解致璋先生に師事していただ
けることになり、台湾での2年における生活は、中国茶と同じく甘い香りに包まれた楽しい時間でした。

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 一緒に学んだ友人達は、今では皆お茶の世界で活躍しています。台湾を訪れるたびに、まさに「朋あり、遠方より来たる。亦た楽しからずや」で、自慢のお茶を持ち寄り、蘭の花、ココナッツミルクやマスカット、そして、蜂蜜、熟した果実のごとく甘くとろけてしまいそうな香りに包まれ、お茶を介してありがたい時間を過ごしています。

味わい、香り、茶器を楽しみ、リフレッシュ

 日々の暮らしの中では、食後のお茶や気分転換にと、中国茶は私の疲れを取り、心を開放してくれます。
 中国茶は、味、香りを楽しみ、それらの変化も楽しみます。茶葉だけの香り、色やつや、蒸された香り。小さな湯のみに注ぎ淹れ、香りを聞く瞬間は、別世界に誘われ、次に一口含むと、清涼とのどの渇きが潤されます。
 すべてを飲みほしたら、茶杯(湯呑み)の底に残る香りを聞きます。その香りは甘く、蘭の花、ココナッツミルク、フレッシュな柑橘系、マスカット、熟れた果実、蜂蜜の香りに例えられ、お茶酔いと言う言葉があるように、心地よい酔いに身も心も包まれます。香りや味はもちろん、お道具や室
礼も楽しみのひとつです。

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 特に中国茶は小ぶりの茶器を用いるので、愛らしく、愛着がわくものばかりです。私が中国茶を始めた頃は、まだお道具も求めやすい値段でしたが、この頃はとても高額になってしまいました。
 「養壺ヤンフウ」という言葉があります。急須を使い込んで、色、つやを出し、味わい深いお道具に育てるという意味です。高価なものではなく、気に入った手頃なものを大事に使い込んで、自分に馴染ませ、味を出す楽しみもあります。

おいしい中国茶の選び方・淹れ方・飲み方は?

 茶葉は、産地、茶摘みの季節、製茶方法、発酵・焙煎の有無で味わい、香りが異なり、もちろんその年の気候によっても大きく左右されます。毎年、冬茶が出回る頃に私は台湾を訪れ、茶葉を仕入れてきます。春の新茶は、日本を訪れる台湾在住の友人に運んでもらっています。
 今では日本にいても、割高ではありますが美味しい中国茶を求められます。一口に中国茶と言っても、種類はとても豊富で、大きく分けても「緑茶・白茶・黄茶・青茶・紅茶・黒茶」とこれだけあります。淹れ方も何通りもありますが、決まった作法はありません。お茶の特徴に合わせて、湯の温
度、量、抽出時間を加減すれば、美味しくいただけます。
 茶葉を求める際には、色が均一で、茶葉の形が整っていて、香りが良いものを選び、必ず試飲することをおすすめします。

簡単に中国茶が楽しめる方法をご紹介します。

①手持ちのなるべく小さめの急須、おちょこまたは小さめの湯飲みに湯をいれて温める。

②急須の湯を捨てる。

③急須に適量(5g前後)の茶葉を入れ、沸騰させてから火を止め、一呼吸した湯を160cc前後注ぎ30秒ぐらい置く(緑茶などの発酵の浅 いものはこれより低めの温度で)。

④おちょこまたは湯飲みの湯を捨て、数人で頂く場合は均等にお茶を注ぎ淹れる。
一人で頂く場合は、小さめのピッチャーに移し入れ、急須の湯は必ず注ぎ切る。

 一煎、ニ煎、三煎目と味の変化を楽しみ、五煎目ぐらいまで美味しく頂けます。飲みほした後、茶杯(湯呑み)の底に残る香りを聞くと、甘い香りに誘われ、心地よい酔いを感じます。
 注ぎ淹れた後の急須の蓋は、必ず開けて置きます。高温で淹れているので、茶葉が蒸され弱ってしまうからです。
 まずはこんな感じで、気軽に中国茶を楽しんでみてください。

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 旅の途中で立ち寄った茶芸館やお茶屋さんで、茶葉や、好みの茶器を買い揃えるのも楽しみとなります。ときには室礼をして、友人と、もちろん一人でも至福の時間をお過ごしいただけます。

田村直美

季節の食材、自身の身体に合った食材を用いて、美味しく・楽しく料理を作り、食べて、「自分で作る自分の健康」をテーマにしたお料理会「東方
美人」主宰。
アートコーディネーターを経て、台湾に留学。中医学・薬膳を李政育氏に、中国茶を解致璋氏に師事し、帰国。鍼灸師資格取得。
現代日本人の生活に役立つ「食」をテーマとして研究を続けている。鍼灸師としても活動中。

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