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あるがままの世界に出会う解説書 清水友邦

ほんとうの自分を自覚すると、あるがままの世界があらわれます。そのことに気がついたとき、どんなことがあっても、あなたの本質が傷つくことがないことを知るでしょう。あなたの怒り、不安、恐怖、心痛、あなたの思考、あらゆる現象には実体がなく、すべては関係性によって起こり、変化していきます。
―清水友邦(しみずゆうほう)

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揺れ動くわたしたち 

「引き寄せの法則」という言葉があります。
 たとえば、ポジティブなことを考えるとポジティブなことが起こるので、願いごとをくりかえし強くイメージすることで、「思ったことが実現する」「欲しいものが手に入る」と思われている人が多いと思います。

 誰でも欲しいものを手に入れ、人生を思いどおりに生きたいと思っています。プラス思考でいけば、なにごともプラスに働いて、バラ色の明るい未来が実現すると信じたいところです。

 ところが、わたしたちが生きている世界は相対的な世界なので、いつも二つの極の間を揺れ動いています。押し寄せる波は必ず引きかえし、満ちた月は欠け、欠けた月は満ちていきます。登りきった山は降りなければなりません。

 失敗は成功に変わり、成功は失敗に変わります。愛していると言っていた恋人同士が次の日には憎しみあい、「わたしは幸せだ」と言っていた人が、次の日には「わたしはなんて不幸なのだろう」とつぶやきます。

 悲しみは喜びに変わり、喜びは容易に悲しみに変わります。「陽極まれば陰となし、陰極まれば陽となす」という言葉が示すとおり、この世界では、いつも二つの極の間を揺れ動いています。それが、わたしたちが住んでいる相対世界の自然な法則なのです。

 あたらしく手に入れたものは、ふたたび失います。あたらしく手に入れるものは永遠ではないからです。永遠のものならば最初から持っています。最初から持っているのならば新しく手に入れる必要がないのです。

恋に落ちると…

 男性と女性が出会って恋に落ちると、めくるめく歓喜がおとずれ、すばらしい時間を過ごします。しかし、どんなにすばらしい恋人と出会っても、その歓喜は長くは続きません。それはまもなく、決まりきった単調なものとなってしまいます。

 恋に落ちた男女には恋愛ホルモンのフェニルエチルアミンが分泌されるので高揚した気分になりますが、それは長く続かず約3ヶ月~3年間ほどで落ちてしまうので、恋の賞味期限は3年間といわれています。

 人は本来の自分でない偽りの仮面をつけて生きています。仮面の陰には、抑圧された陰の人格が潜んでいます。あるがままの相手を見るのではなく、お互いに自分の理想化した都合の良いイメージを相手に投影した関係は、容易に否定的投影の関係へと転換してしまいます。

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思考が作り出す「物語」のなかに

 男女が親密になると、お互いの自我の境界を超えやすくなるので、無意識の層から抑圧されていた情動が表に出やすくなります。
 無意識の領域から抑圧した感情が意識の表層に浮上してくるので、不愉快な気分に襲われます。

 自我は防衛しようと、その情動を受け入れずに排除しようとします。情動を感じないようにするため、思考を働かせて概念化して安心しようとするのです。自我は自己イメージにあわない感情エネルギーを感じることを嫌がります。

 自我は情動に耐えられないので、思考が作りだす物語のなかに逃げこんでしまいます。
 そして、いかに自分が被害者としてひどい目にあったのか、自分が納得できる物語のなかに入りこみ、感情のプロセスを止めてしまうのです。
 あるがままの自分を自我は恐れるので、思考を働かせて具体的な現実に直面しないようにします。
 そして、その不快な感情の原因を相手に投影してしまい、自分が味わっている不快な感情は、相手が原因で起きていると考えてしまうのです。
 内側の否定的な感情を相手に投影していることに気がつかないので、ひどく苦しみます。やがて相手にも同じことが起きて、お互いが耐えられなくなると、お決まりの関係性をどうするかという選択がやってきます。

それもまた、自分の影

 こうして、いくらプラス思考をしても、現実世界では必ず望んではいないマイナスと思える出来事が起きていきます。

 マイナスの出来事が起きるのは、プラス思考の回数が足りないからだと短絡的に考えて、プラス思考をいくら強めても、思ったとおりの結果を得られないことが起きてきます。
 「努力すればかならず夢はかなう」とがんばりつづけても、失望したとたんに心が折れて「どうせ、なにをやっても欲しいものは手に入らない」とへこんでしまいます。

 心は過去の記憶から来る信念と、植えつけられた価値観に支配されているので、いつまでも二つの極の間を揺れ動きます。
 結局、うまくいかないと、なにをやってもだめな自分の考えが浮上して、罪悪感が増大していきます。

 プラス思考はマイナス思考に陥っている人のためのマインドの薬なので、服用を誤るとマインドの次元を水平移動するだけで、かえってマインドが強まり苦しんでしまうのです。

 嫌悪するような、感情が動かされる出来事、気にさわる他人の行動などは、影に追いやった自分の一部です。それに同調するために心が動きます。
 あいつは気に食わない奴だと他人を自分と切り離してみますが、外側に感じていた問題は、自分の内側にも同じ要素を持っているということなのです。

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気づきこそが、光

 「引き寄せの法則」は、文字どおり自分にふわしい出来事を引き寄せることですが、自分ではないと分離して、影に追いやった苦しみも自分なので引きつけてしまいます。
 自覚できていない意識の領域があると、その領域を自覚するような出来事を宇宙が確認するために引き寄せてしまうのです。

 自我は思考で影をつくり、否定した自分を切り離して見えないように暗闇にしまいます。宇宙は光に満ちているので、闇があれば照らしだします。闇を取り払おうとしても、なくなることはありません。闇は光の不在だからです。闇は、それ自体として存在してはいません。闇でもって光を消すことはできません。光がさすと闇は一瞬にして消えます。
 思考が光を遮って闇をつくるので思考で闇を消すことはできません。思考に気がつくだけで闇は消えます。気づきが光なのです。

 人生に失望し、自分に絶望して、自分を存在の流れに明け渡したとき、光がさして、闇は消えます。
 気づきという光があると、心の暗闇は存在することができません。光がさすということは、思考がほんとうの自分ではないことに気がつくことです。そのことを《 光明を得る 》といいます。

 光のない影
 出会いのない別れ
 外側のない内側
 負けのない勝ち
 病気のない健康
 死のない生
 美しさのない醜さ
 昼のない夜
 それは別々ではありません。
 同じものの異なった側面なのです。
 それは相互に依存しあっています。
 それを分けることはできません。

 わたしがいないことを知るには、抑圧して影に追いやったエネルギーを自覚する必要があります。
 影も含めた自己の全体を、あるがままにすべて受け入れたとき、行為者としての自分はいないということに気がつきます。

 ほんとうの自分を自覚すると、あるがままの世界があらわれます。
 そのことに気がついたとき、どんなことがあっても、あなたの本質は傷つくことがないことを知るでしょう。あなたの怒り、不安、恐怖、心痛、あなたの思考、あらゆる現象には実体がなく、すべては関係性によって起こり、変化していきます。
 不安や恐怖の正体、そのことがほんとうにわかると、あらゆる出来事にふりまわされにくくなり、くりかえし起きる苦しみ、そしてとらわれから解放されていきます。

 外側の世界と内側の世界、絶望と希望の二つの世界を同時に生きられるようになります。
 あなたの本質は、生まれることも死ぬこともない永遠の存在なのです。

清水友邦(しみずゆうほう)

1953 年、岩手県盛岡市生まれ。子どものころから自分が誰なのか疑問を持ち、探求の道に入る。
80 年代から世界各地の聖地を巡礼、フランス、イタリア、アメリカ、中国、チベット、東南アジア、インドの仏跡、ヨガの聖地リシケシ、OSHO マルチバーシティー、ラマナ・マハルシのアシュラムなどを訪れる。
その間、ヨガ、気功、瞑想、ボディワーク、呼吸法などの各種身体技法を学ぶ。全国各地で呼吸道のワークショップを展開中。
イーハトーブ心身統合研究所代表。

覚醒の真実

『覚醒の真実』
清水友邦 著
ナチュラル・スピリット
定価 2,420 円(税込)

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