第6章 ヴィッキーさんの忍耐と待機
23 マヨルカ島
一九七三年に、新たな「天のひと突き」がありました。
休暇でマヨルカ島へ出掛けていたときのことです。
そこは、一度ならず私が不運に見舞われたところで、そのとき私は、重い冠状動脈血栓を起こし、心臓の機能のほとんどを失い、危うく命を落とすところでした。
三、四日、生きるか死ぬかの戦いをしている間、マーガレットは病院で辛抱強く付き添ってくれました。
徐々に私は持ち直し、飛行機でイギリスに帰って、地元の病院でさらに治療を受けることになりました。
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p59)
ヴィッキーさんのお話にはマヨルカ島ですごした2回の休暇のことが出てきます。
ヴィッキーさんたちがこの美しい島をとても気に入っていて、たぶん何度も訪れたのではないかと感じられるのですが、ただマヨルカ島というのはイギリスの島ではありません。
マヨルカ島は、ロンドンから南の方角に向かって、フランス、スペインと、大陸を越えて南下していったその先、地中海西部のバレアレス海に浮かぶ島です。
「マヨルカ島」
『Wikipedia』https://en.wikipedia.org/wiki/Majorca
バレアレス諸島最大の島で、メノルカ島とともに、バレアレス諸島北東部のジムネジアス群島を構成しています。日本語ではマジョルカ島やマリョルカ島とも表記されるようです。
1983年にスペインの自治州としてバレアレス諸島州が成立すると、マヨルカ島のパルマ・デ・マヨルカが州都になります。
メノルカ島やイビサ島など、バレアレス諸島の他の島と同じようにとても人気のある観光地で、特にドイツとイギリスからの観光客が多いようです。
名称はラテン語で「大きな島」を意味するinsula maiorに由来して、後に「大きなほう」を意味するMaioricaとなったのだそうです。
メノルカ島の名称はマヨルカ島と比較して「小さなほう」を意味するMinorcaに由来するそうですから、要するに、メジャーと、マイナーと同じ語源ということらしいですね。
スペイン本土の東側に位置するマヨルカ島の面積は、日本の沖縄本島の3倍ほどのようです。
人口は87万人ほどで、地中海で面積第3位のキプロス島に匹敵する人口なのだそうです。
地中海の主要な島嶼のなかではひときわ人口密度が高い島で、人口第1位のシチリア島よりも人口密度が高いそうです。
マヨルカ島は面積ではバレアレス諸島全体の72.5%、人口では諸島全体の78.6%を占めるそうですから、その存在感がおおよそ見当がつきますね。
そういうヴィッキーさんたちにもお気に入りの観光スポットなのですが、あいにくヴィッキーさんは、この地で2回災厄に見舞われるのです。
その1回目が1973年、ヴィッキーさんが55歳のときで、マーガレットさんと一緒に仕事を始めてから3年後くらいのときです。
心臓から全身の細胞に血液を送り出す血管を動脈と呼ぶことは、もちろんご存知ですよね。
その動脈系の始点、心臓から出たばかりの最も太いところを大動脈といいます。
冠状動脈というのはその大動脈からの最初の分枝で,大動脈洞の上縁近くから左右2本の血管が心臓を覆う形で始まっています。
つまり、冠状動脈というのは、心筋(心臓の筋肉)に酸素と栄養を送る役割をしている動脈なのです。
血栓というのは、血管内の血液が何かの原因で塊になることです。
たいていは血管壁に何かの傷ができて、その血管壁の傷を塞いで止血するために起こるわけです。
普通は止血が完了してその血管壁の傷が修復されると、役割を終えたその血栓は消えます。
ところがうまく消えられずに、その血栓が大きくなって血管を塞ぐと、それより下の部分に血液が届かなくなり、いわゆる心筋梗塞などの症状を引き起こすわけです。
ヴィッキーさんはこのとき、「重い冠状動脈血栓を起こし、心臓の機能のほとんどを失」った、というのですから大変なことです。
このときは、マーガレットさんが病院で付き添ってくれ、飛行機でイギリスに帰って、地元の病院で治療を受けることになります。
家に着くと、ヴィッキーさんは2階の寝室まで担ぎ上げられて、少なくとも、3、4か月は階段を昇り降りしてはいけないと宣告されるのです。
以後、弱りきったヴィッキーさんは、ベッドでの生活を余儀なくされます。
この間マーガレットさんは、ヴィッキーさんを家にひとり置いてアマーシャのクリニックに出かけるわけには行かないので、キングズ・ランサムに自分の患者さんを呼んで家で診察したそうです。
そんな事情に付き合ってくれるなんて、イギリス人の患者さんも、たいしたものですね。
それからは、マーガレットさんが毎日定期的に訪れる以外は、ヴィッキーさんは完全にひとりで時間をすごすことになります。
ラッパズイセンが咲き始める春までには社会復帰すると心に決めて、ヴィッキーさんはそれから少しずつリハビリの日々に入っていきます。
駄目になっていない心臓の筋肉を強化するため、毎日少しずつ、そしていずれは五キロ程度の散歩をするようにと勧められました。
最初の週は、小道沿いの最初の木まで、ほんの百メートルほど歩くのがやっとで、足はもつれるし、膝はがくがくと折れてしまう
しで、やっとの思いでたどり着いたときには、それはほっとしたものです。
私は太い幹に体を預け、しばらくそこで休みました。
木を抱き締めるのは、本当に何か月ぶりでしょうか。
それから、私はまた、来た道をえんえんと戻っていきました。
そして少しずつ、私は距離を伸ばし、木から木へと、ときにはおのれに鞭打ちながら進みました。
体はまだこれほどの重労働に慣れていなかったからです。
そしてとうとう、いつものごとく「血と汗と涙の」努力の果てに、ゴールへとたどりつきました。五キロ歩き通したのです。
『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p60-61)
うーむ、大変ですねぇ。
このあたりからヴィッキーさんは、心臓疾患と糖尿病という二つの慢性病を抱えて生きていくことになるわけです。
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