【数学センス】黄金比
黄金比。
って何?
色々ありますね。「鰹ダシと野菜を秘伝の黄金比でたっぷり煮込んだ」「ミロのヴィーナスは黄金比になってるから美しいんだ」などなど。割と美しいことを表すのに使われています。
それに文句を言いたい訳じゃないのですが、数学好きとしては『イメージで使ってるけど数学で定義された黄金比じゃないよね?』と言いたくなります。
そこで、まずは数学で黄金比はどのように定義されているかを紹介します。
こんな長方形があるとします。
一見何の変哲もない長方形ですね。そこに縦棒を引きます。
左側のグレーの部分がちょうど正方形になるように縦棒を引いて、正方形を切り落とします。
残った部分、何かに気づきました?
左に90°パタンと倒してやると、最初の長方形と似てることがお分かりいただけますか?「形が同じで大きさは違ってもいい」というのを数学では相似と言います。∽ と言う記号を中学でよく使いましたね。
これが数学で言う黄金比の定義です。
つまり、長方形から正方形を切り抜いた形が元の長方形と相似である時、この長方形の$${\text{長辺 : 短辺}}$$の比の値の事を黄金比と定義されます。
定義は分かりました。じゃ、一体いくつなんだと気になり出したあなたこそ数学の素養をお持ちです。興味大事。
この比の値を$${x}$$とおきます。つまり、短辺に対して長辺が$${x}$$倍として$${x}$$を求めていきます。
元の長方形の短辺は$${1}$$としていいです。どうせ比なので。それに対して長辺を$${x}$$とおいておけばいいのです。
切り取った後の小さい方の長方形はどうでしょう。短辺は$${x - 1}$$、長辺は$${1}$$ですね。
これらの比の値が等しいのだから
$$
x : 1 = 1 : (x - 1) \\
\dfrac{x}{1} = \dfrac{1}{x - 1}
$$
あとはゴリゴリと$${x}$$を求めていけばいいですね。計算は出来なくてもいいです。先人が作ってくれた道具を使えば解けるんだと言う事を知っていれば、自分はやらなくとも計算できる人がやってくれるので。
$$
x(x - 1) = 1 \\
x^2 - x - 1 = 0\\
\therefore x= \dfrac{1 + \sqrt{5}}{2} = 1.618\dots
$$
「符号、プラマイじゃないの?」と言うかた、鋭い。2次方程式の解の公式としては符号は$${\pm}$$ですが、マイナスを採用すると長さもマイナスになってしまうので。プラスだけです。
そして同時に定義であった「とある長方形が、それから正方形を切り落とした残りの長方形と相似である時、短辺に対する長辺の比を黄金比と言う」と言う性質を満たす比は一通りしかない事が分かったのです。一通りしかないので定数です。それを$${\phi}$$(ファイ)と呼ぶことになっていて、$${\phi = \dfrac{1 + \sqrt{5}}{2} = 1.618\dots}$$だと突き止めました。突き止めた体験を胸に刻んでおきましょう。覚えなくていいです。知りたくなったらまたやり直せばいいんです。覚えたい人はぜひ覚えて下さい。
で、本当に面白いのはここからなのですが、長くなって来たので続きは次の記事で。