キャッシュとディッシュ
『文學界』2020年08月号
約093枚/400字詰め換算
現金とお皿──と言ってしまえばミもフタもないですが、でもまあ、要するにそういうことです。いわゆる〝打ち出の小槌〟みたいなところもありますけど、じつは似て非なるものというか、けっこうロクでもない代物なので、よくよく考えてみたら、あまり欲しくなれない物かもしれないです。
この作品にかぎらず、どの作品でもたぶん同じだろうという気がしていますけど、なにか概念や思想のようなものがあって、それを文章表現に落とし込むといったことはしているつもりがなくて、その時々で、こういうふうに書きたい、こういうふうにしか書きたくない、というような、好き勝手な書き方をしています。
「キャッシュとディッシュ」の後、しばらくして「パーミション」を発表しましたけど、この2つを通って流れている書き方は、じつは今もまだ途切れてはいなくて、3つめを出したいと企んではいるものの、なかなか思うに任せないのが文学的な現実です。