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『GOTCHA!』の何がすごいか語らせて

『GOTCHA!』見ました? 先日公開されたポケモンとバンプのMV。
見てない? 興味ない?
ポケモンに一度でも触れたことあるならかならず刺さります。たとえ引退したトレーナーであってもです。

見ました? すさまじい情報量ですよね。 正直初見では…というか何回みても目が追いつきません。感想や考察をあさればあさるほど、見過ごしていた芸の細かさに圧倒されるのです。ここでは順を追って、このMVで何が起きているか、何がすごいかを語っていきます。

『GOTCHA!』のここがすごい!

テレビをつけるようなエフェクト。ゲームボーイ調のドットから始まります。

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「おとこのこが 4にん せんろのうえを あるいてる…… ▼」
初代やそのリメイク作品、SMUSM。そのはじまり、部屋にあるテレビを調べると表示されるメッセージです。
意味するところは『スタンド・バイ・ミー』ですね。ひと夏の冒険をえがいた傑作ジュブナイル。MOTHERシリーズより受け継がれる、ポケモンの原点です。

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次、男の子と女の子の写真が連続して入るシーンです。
PiPiPiアドベンチャーみたいなイーブイが目をひきますね。ピカチュウのデフォルメもかなり挑戦的で、これまで培ってきたイメージから敢えてハズそうという気概を感じます。

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男の子がピカチュウに似たこけしもってますね。こけしに似たピカチュウを後からプレゼントされたのでしょうか。

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ノートの上に寝そべってるピカチュウ、駄犬感あっていいですね。顔によじのぼるシーンもネズミぽくて新鮮。イーブイの前足の動きもだばだばしてて、90年代の亡霊を感じますね。すばらしい。

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ここ、日本語が使われているのが興味深いですね。
ふつうポケモン世界を描くなら、ガラル文字をはじめとしたポケモン世界の文字を使うと思うんですよ。実際、公式WEBアニメ『薄明の翼』ではガラル文字が用いられていました。これは男の子や女の子がポケモン世界よりも現実にちかい世界にいるという演出なのかもしれません。

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寝落ちしたおかあさんを尻目に、男の子がテレビ(スクリーン?)を見るシーン。「……ぼくも もう いかなきゃ!」ですね。冒険のはじまりにこれ持ってくるのは見事としか。

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女の子の髪型が初代ポケモンのCMに出てきた女の子をもとにしているらしく、要素の回収がすさまじい。

次、歴代タイプエキスパート。モニターの向こう、ジムリーダーや四天王、キャプテンにしまキング・しまクイーンたちが続々と出てきます。

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みず→でんき→ほのお→こおり→ほのお→いわ→くさ→どく→エスパー→ゴースト→あく→むし→フェアリー→ドラゴン→はがね→ノーマル→かくとう→ひこう

タイプ相性を意識した流れになっています。各タイプのエフェクトも魅力ですね。ジャンプで地震回避する女の子はなんなの…?

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歌詞とMVのリンクも見事。「太陽の」でソルロックが登場。それを見つめるのはネイティオ。このポケモンには一日中太陽をみつめる生態があります。細かすぎる。
「歌を」のシーンでプクリンたちが歌った影響で、ドラゴンタイプエキスパートたちが眠っている描写もすばらしい。

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クロバットを尻尾だけで退かせるピカチュウや、枠にとらわれないあくタイプエキスパートたちも魅力。驚いてるミカンちゃんやぐねぐねしてるアカネちゃんもかわいいし、いわタイプやむしタイプのエキスパートたちの反応もおもしろい。

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相棒とはぐれたトレーナーとポケモン。ビルには歴代の伝説や幻、ボスのシルエット。不安をあおる演出が効いています。ここの色調は『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』を思い出しますね。
ネタバレ回避にもなっており未プレイに優しい。地面にうつる影は善人組でしょうか。

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そして歴代主人公たちのシルエット。主人公同士の絡みってなかなかレアですね。トウコに手をひかれるメイ、これ以外ない描写。そしてカルムと目があうと歴代のエンカウント演出で画面遷移。ここのアイデア傑作すぎる。
ここまでの歌詞が「いま目があえば笑うだけさ 言葉の外側で」なのも目と目があったらポケモンバトルってことですね。テレレレレというギター音もエンカウントを意識させます。

サビ。歴代チャンピオンたち。シロナさんかっこよすぎる。
めまぐるしい動きでハートをわしづかみにするされた。

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ダイゴがメガメタグロスをくりだしてからミクリへと移る演出。エメラルドとORAS両方を意識していますね。エピソードデルタ後の交代劇へと思いを馳せられます。

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BWからBW2へのバトンタッチをハイタッチでしめす演出、100点!
やはりネタバレ回避で未プレイにもやさしいですね。エフェクトや背景がBW2チャンピオン戦に準じた色合いなのもすばらしい。

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BW2のメイとヒョウ、Ptのコウキとジュンのタッグバトル。
歴代でもタッグバトルが印象深いコンビです。

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XYよりトロバ、サナ、ティエルノ。みんななかよしかわいい。
「君のそばで」という歌詞にのせてこちらへ指をさしてくるの、反則ですね。

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BWからチェレン、トウコ、ベル。「せーの!」と同じ並びですね。
時が流れBW2。駆けるキョウヘイと歩くチェレンとベル。2年という歳月。表情が見えないぶん想像が広がります。BW2は前作の正統続編として発売された、歴代シリーズでも特殊な作品です。

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XYよりセレナ。ポケモンのむら、ななしの洞窟での激闘ですね。
「魂がここだよって叫ぶ」をミュウツーにもってくるの完璧。
サイコキネシスをみずしゅりけんで迎撃するゲッコウガ。総選挙ナンバーワンの風格です。あくタイプだからサイコキネシスが効かないというロジカルな展開でもある。

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SMよりハウ、グラジオ、ヨウ。
ノリノリでポーズきめたグラジオをおしのけるヨウくん後で怒られてそう。

つづいてミヅキ、リーリエ。

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(茴_茴)
ふたり仲良くノーマルZ、効果抜群急所瀕死。というか「泣いたり笑ったりするとき」にアローラ組もってくるの原作理解度高すぎますね。

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BWよりトウヤ・トウコとゼクロム、Nとレシラム。
理想と真実の英雄がたがいを見つめる。決意にみちた眼です。白と黒。強烈なコントラストでBWのテーマを見事にあらわしている。

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そしてHGSSよりコトネ、シルバー。
Nとシルバーには悪の組織のボスの息子という共通点があります。しかし浮かべる表情は真逆です。「ポケモンとは道具なのか相棒なのか」。解けない命題に頭を悩ませるN。ポケモンを道具だとうそぶきつつも冒険の果てに自身の答えをみつけだしたシルバー。BWで投げかけられた命題。ここにひとつのアンサーとして過去作をもってくるのがしびれます。答えはとっくの昔に出ていた…!

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つづいてRSE、ORAS。ライバルとユウキ・ハルカ。
チャンピオンロードの出口で呼び止められるのはルビサファ準拠ですが、服装はエメラルド版。舞う彼岸花はORASから追加された要素ですね。わずか数秒でマイナーチェンジからリメイクまで余すことなく要素をひろっているんです。
このシーン「近くで」と歌われている。先をいくライバルではなく、追いかけてくるライバルにピッタリの歌詞。

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初代よりグリーン。腕組みポーズは公式イラスト準拠ですね。液晶めいて緑がかる色調もあっぱれです。
初代では本来、四天王戦を勝ち抜けばチャンピオンになれるのですが、すんでのところをグリーンに先を越されてしまいます。真のチャンピオンはどちらか。雌雄を決するべく、殿堂目前の廊下にてラストバトルがはじまるのです。まさに「特等席で」。あくどい表情ながら彼の純粋な感情が透けて見えます。

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後ろのカイリュー像がおもしろいと評判ですね。四天王大将のしわざでしょう。

HGSSよりヒビキ、レッド。
シロガネ山、彼らだけの頂上決戦です。
ここのパート1/4倍速でもまだ目が追いつかない。異常。

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レッドの手持ちはあと三体。ラプラス、リザードン、そして場にはカメックス。ここのリザードンHGSSのドット絵に準拠していますね。

カメックスが高速回転、つづけてハイドロカノン。バンギラスは岩でガードするも決壊。直撃寸前に交代。
ヒビキの表情は険しいが、口角は上がっている。くりだしたのはデンリュウ。ハイドロカノンの余波を泳ぎきり、カメックスへと電撃をあびせかける。
焦るカメックス。攻撃の余波でレッドの帽子がふきとぶ…。

この攻防がわずか5秒。トップレベルのポケモンバトル、そのすさまじさを思い知らされます。

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バンギラスはシロガネ山にしか生息していないポケモン、ヨーギラスの最終進化系です。ここまで育てあげたヒビキの執念を感じられます。もしかすると一度負けてから再挑戦しにきたのかもしれません。

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デンリュウは金銀の発売前からプッシュされており、序盤で手にはいる電気タイプでもありました。ともに旅をし、ともにレッドに挑んだプレイヤーは少なくなかったのです。そんなデンリュウをこの大一番にもってきたのは、慧眼というほかありません。
また、さきほどグリーンがフシギバナを連れていたことから、ゼニガメこそがレッドが最初に選んだ相棒だと推測できます。レッドの最初の相棒をデンリュウは追い詰めたということです。

これまでの流れ、チャンピオンロード→VSチャンピオン→VS裏ボスなのがアツい。

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ふきとんだ帽子は女の子のリュックにいるピカチュウへ。雨空が晴れ、先行きの明るさを感じられるシーンです。
ここの天候変化にホウエンの伝説ポケモンをあててくるのが憎いですね。照明の色も藍色・紅色です。細くちぎれた雲はあのポケモンが通りすぎたあとなんでしょうか。

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女の子が駆け出し、ピントは窓ガラスの文様へ移ります。
この文様はガラル地方、ワイルドエリアをあらわしていますね。遠景にナックルシティが見えます。

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ガラルパート。次々ジムリーダーが登場します。フレームから察するにドローンロトム視点ですね。

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いまさらですが短い時間でキャラを立たせるのが抜群にうまいですね。解釈が無限に一致する。シアン・マゼンタ・イエローのライティングもよい。

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ビートのそばにマクロコスモスの二人がいて趣深い。
腕時計も光っていますね。

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マリィの頬をもちあげてむりやり笑顔にさせるモルペコ、最高。
解釈一致の向こうがわ、予想を超えて期待をうわまわる。最高。

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ダンデのパーティもインテレオン加入にあわせバリコオルが起用されている。原作再現に余念がない。バリコオルをここまでカッコよく描くの、プロの手腕。
ホップ、ダンデそれぞれのもつ御三家に矛盾がないの、作りの丁寧さを感じますね。

そして背番号227、初代ポケモンの発売日を背負うマサル・ユウリ。ダンデとの頂上決戦です。このマサルとユウリが重なるシーン、主人公は表裏一体なんだと感じられていいですよね。

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「魂がここがいいと叫ぶ」。英語版では"our souls cry out that this is where we belong." 主語が複数形になっている。ダンデが、主人公が、そしてポケモンが。純粋に勝利を願っている。すばらしいですね。

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キョダイカキュウVSキョダイゴクエン。ここのシーン、レッド戦と好対照をなしています。
かたや吹雪、山頂での野試合。かたや火の海、満員のスタジアム。かたや交代を駆使した高速戦闘、かたやキョダイマックスポケモン同士の決戦。それでいて、どちらも最強へ挑むチャレンジャーという構図は変わりません。
勝敗の行方は……ポケモン剣盾をクリアした方々にならわかるはずですね。

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帽子は男の子の連れるイーブイへ。そして男の子とピカチュウ、女の子とイーブイの再会です。ザシアンとザマゼンタものんびり昼寝しています。平和そのものです。

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モニター越しにみつめるのは歴代の博士たち。プレイヤーをポケットモンスターの世界へいざない、主人公の旅立ちを見送る存在です。
オーキド博士の悪ガキみたいな表情が、グリーンを思い起こさせます。ソニアも博士枠なのがうれしい。

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次に歴代御三家たち。ツタージャだけおすまししていてかわいいですね。
しかし終盤に博士と御三家もってくるセンス。この物語はいま、ようやくスタートラインに立ったんですね…。

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旅のリスタート。帽子をかぶって、彼らの冒険がはじまります。帽子で世代交代をあらわす演出、おしゃれ…。

道の曲がり具合が1ばんどうろめいているの最高ですね。旅は当然1ばんどうろからはじまる。そうやってはじまった。

旅立ちを祝福するのはサブウェイマスターらとバトルシャトレーヌたちです。進行方向を示してるサブマス、これしかない人選。出発進行! 最後、クダリがいつもの表情に戻るのも芸が細かいですね。
手をふるバトルシャトレーヌたちもかわいい。というか映像化はじめてでは…?

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ミュウ。忘れちゃいけない。一番アップになるカットが2:27なのは意図的なんでしょうか。セルアニメみたいで『ミュウツーの逆襲』を想起させますね。

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最後。誰かがこちらへモンスターボールを投げて〆。
誰なんでしょうね。若いころのオーキド博士に似ているけれど、微妙に髪型がちがう。誰でもないのかもしれません。

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GOTCHA! ポケモンを捕まえたとき「やったー! ***を つかまえたぞ!」とメッセージが出ますが、英語版だと"Gotcha! *** was caught!"になります。

ここまで151秒! なんなんだよこの完成度。
ふいうちで集大成をぶつけられて、私の情緒はもうボロボロです。ほんとうにありがとうございました。

最後、おかあさんとスクリーンを映してスタッフロールなのもしゃれてますね…。イヌヌワンもよう見とる。


…さて全体的な感想にうつります。

まず曲。BUMP OF CHICKENの『アカシア』。植物の名前を冠していますね。ボーイミーツガールの歌なのか、ポケモンとトレーナーの歌なのか、はたまた主人公とライバルの歌なのか…。固有名詞を使っていないため、解釈はいかようにも広がります。ただわかるのはこれが名曲ということだけです。

フルも聞きましょう。二番もすばらしい。
ちなみに歌詞も公開されています。これはいいものだ。
https://www.bumpofchicken.com/news/detail?id=3307

BUMP OF CHICKENは1996年に結成されたバンドです。初代ポケモンと同い年ですね。つまりポケモン直撃世代=バンプ直撃世代。四倍弱点。
前身となるバンドは初ライブで『スタンド・バイ・ミー』をはじめとした曲を演奏したそうです。デビュー年、原点。どちらも共通しており、今回のコラボには運命的な出会いを感じずにはいられません。


次は映像。監督は松本理恵。こだわりぬいてクオリティを出すことに定評があるそうです。実際とんでもないクオリティでした。151秒に24年を圧縮するんじゃない。

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まずオリジナルキャラクターの男の子・女の子がよかったですね。短い尺で歴代トレーナーに負けない個性でした。
男の子とピカチュウはたがいにそっけない。でもいざはぐれたとなればピカチュウは表情を見せなくなるし、男の子は頭の上にイーブイを乗せたがらない。そして再会するとピカチュウはとんでもない勢いで男の子の顔に覆いかぶさる。もう終生のパートナーですね…。

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女の子とイーブイもいい。ずっと快活とおもいきや、卓球大会準優勝で涙をこぼすなど深みのあるあじわい。それを慰めるイーブイのめんどうみのよさも効いている。

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そういえばタイプエキスパートのパートでイーブイが攻撃くらいまくっていたの90年代ギャグ漫画の手つきを感じる。電撃くらって骨みえるの、もはや古典芸能。

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男の子・女の子の対比も印象的でした。
生まれたころからポケモンがいた女の子。いなかった男の子。
前者が最新作チャンピオンの帽子をかぶり、後者が初代主人公の帽子をかぶっているのも示唆的です。男の子のTシャツがGBモチーフ、女の子のリュックがSwitchモチーフなんて考察もありますね。男の子と女の子は、初代プレイヤーと剣盾プレイヤーの隠喩なのかもしれません。

そう考えてみればこれまでの映像、本編の致命的なネタバレは避けているんですよね。古参をさんざん喜ばせつつ、新規や引退勢の楽しみを奪っていない! これは達人のワザマエですよ。
引退勢といえば「男の子はピカチュウが見えていない=引退勢の隠喩」なんて解釈もありました。ほんとさまざまな解釈ができる作品だ。

そういえばこのMV、本編の登場人物はモニター越しであるかセル画調、もしくはシルエットの形でしか出てきませんね。こうした演出のため、逆説的に男の子・女の子を現実世界の人物だと感じやすくなっているのかもしれません。

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現実といえば最後のシーン。「誰か」がこちらへ手をふってくるじゃないですか。あのシーンめちゃめちゃよくないですか? まるで第四の壁をこえて、こちらをMVの世界へと巻きこむような…。私やあなたもこのMVの登場人物だといわれたかのような…。これまで映ってきた歴代主人公は「レッド」や「ヒビキ」じゃない。「あなた」が名づけ、旅してきた主人公そのものなんだといわれたようで…。ポケモンをプレイしてきてよかった。


歴代のトレーナー・ポケモンたち、これまでの冒険をてんこもり。郷愁をさそう圧倒的物量。それでいながらボーイミーツガールにポケモンとの別離・再会をのせて、爽やかな後味。

かつてのトレーナーに、ベテラントレーナーに、そしてこれからトレーナーになる人々へのラブコール。


いやぁ………………。すばらしい……………………………………………………。私はポケモンが好きなんだな。

もいっかい見てきます。ありがとうございました。

さいごに

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さらにさらに! エキスパンションパス同梱版も2020年11月6日より発売! キミもキョダイマックスエースバーンでチャンピオンに挑んじゃおう!

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(おわり)

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