20マイクロ秒で晩ごはん
NHK『きょうの料理』に「20分で晩ごはん」という企画がある。
忙しい人に向けて、20分でメインも副菜も作ってしまおうというやつ。
毎回この企画は楽しみにしている。本当によくできている。番組の長さにもちょうど合っているし、講師の先生のアタフタする姿を見られるというテレビ的面白さもあり、何よりもレシピとして便利で重宝する。
いっとき、この「20分」がどんどん短くなった時期があった。「20分でも時間が長すぎるという視聴者の声に耳を傾けて」という。
傾けなきゃいいのになー、と思っていた。
わたくしが覚えている中で一番短かったのは「7分で晩ごはん」。
その後結構長い間この「〇分で……」シリーズは休止していたように思う。ちょっと前に「帰ってきた20分で晩ごはん」が放送された。時間は何事もなかったかのように20分に戻っていた。
さすがに番組側なり、講師の先生なりがあきれけえったのではないだろうか。
ものにはほどてえものがある。視聴者のニーズに応えていくと「20マイクロ秒で晩ごはん」に行きついてしまうのだ、こういうのは。
「20分」シリーズは、たぶん小林カツ代先生が発案したものだと思う。当時としてはかなりラディカルな試みだと思うけど、何と言っても20分というのが良い。献立として成立する数品を完成させるギリギリの時間だと思う。
しかし視聴者は、××で△△な視聴者は(伏字)「われわれ忙しい現代人は、20分でも長すぎるのだ」みたいなたわごとが、言説として成り立つと思ってしまうのだ。
あーやだやだ。バカバカしい。
この過剰な「言葉のひとり歩き感」は、料理界隈で結構感じることだ。
20分くらいかけてもいいだろ。