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美しさと夢





夢をみた。


命を知る夢を。



とあるアヒルがいた。

そのアヒルは子どもがいた。


その子どもは
幼いながらに
色んなことを悟っていた。

アヒルは親だけど
アヒルはアヒルなんだと。

神ではなく不完全なものなんだと。

近すぎても遠すぎても
不和がうまれるのだと。


子どもはアヒルが大好きだった


理由なんてなかった。


ただアヒルの笑顔をみると
子どもはとても嬉しかった。




歳を経て
アヒルは老いて
子どもはアヒルになった。



愛されたアヒルは
これからも愛してもらえると

大人になって仲をより深めたいと
群れの中で過ごしていた。



愛されたアヒルは
子どもを持つことになった。

姿形がちがう
愛しい子ども。


愛されたアヒルは
まず老いたアヒルに紹介をしに行った



老いたアヒルは
とても歓迎していた。


愛されたアヒルは
たまに見せながら
子どもを大切に育んでいた。


愛されたアヒルは
育て方を学びながら同時に
こうするのが安全な
生き物であると説明を
老いたアヒル言い

知識の交流を深めようとした。


だけど
老いたアヒルは
姿形のちがう子どもを

同じように
生き物なのだとは
そこまで思えなかった。

説明をしても
「そんな事ないさ」となぜか
笑いながら流し

可愛らしいものとして
とても触りたがった。


愛されたアヒルは
なによりも命だから
この子の事をもっと知らないと

か弱い命は
小さなミスだけで
すぐに落ちてしまうよ
だから知識が足りないから
しばらくは触らないと
約束を守ってね

まっすぐに説明した。



愛されたアヒルは
老いたアヒルに愛を持って
育ててもらったから

容易なことだと思っていた。


ある日
老いたアヒルは

触りたさに勝手に
持ち上げていた。


姿形がちがうから
うまく持てなくて


あと少しで床に落とすところだった。



愛されたアヒルは
怒った。


頭に血が登って
怒鳴らざるをえなかった。



老いたアヒルは
子どもから
怒鳴られたことにプライドが傷つき

話し合おうとしなかった。


愛されたアヒルは
それに驚きながらも
何よりも子どもを守らないといけないと
思い


一生触らないと
約束をさせた。



しばらくして
謝罪をされて

なんとか信用しようと
平穏を取り戻せたある日



老いたアヒルは
また持ち上げていた。


それを他のアヒルから
伝わった



愛されたアヒルは
信用ができなくなり
老いたアヒルへの愛が壊れてしまった。



アヒルは
何度も息を整えてから

丁寧に

譲れるものを全て譲って

これは可愛いおもちゃではなく
たったひとつしか命がない
生き物なのだと
説明を試みた。

そして
せめて持ち上げる前に
聞いてくれ

知識を擦り合わせて
2人で
命を守る知識を深めようと

説明してみた。


それには答えず
でも寂しそうだったから。
置いて出かけたあなたが悪いじゃない



笑いながら話した。


アヒルは
老いたアヒルの笑顔が大好きだった。



アヒルは
老いたアヒルには
届かないと強く悟った。

2人のことならば
ゆっくりゆっくり伝えたり

アヒルが譲れば良いけれど

か弱い命でそれでは
だめなのだと。


脳が老いたのだ。


アヒルは

とてもむごいことが出来る
アヒルだったことを悟り


そして

命はとても流動的で
いつ命を落としても
とても自然的であると

強く思った。



この世の姿は
とてもあやうく
恐ろしく

美しい面を
美しいとは思わなくなった。


ただただひたすらに
ダイナミックであった。



愛してるこの子の
1番の幸せを願い


手を離し
迎え入れたのが悪かったと

まだ伝わらぬその子に謝った。



その子の安全を1番に願い
何かあった時用に用意しておいた
アヒルが住む群れより
安全である可能性が高い群れに

連れて行った。


片割れを無くした感覚とアヒルは
生きていくと

決めていた。



それでも
アヒルは


この世を案外愛せるものだと
思った。



他の仲間たちと
笑い合って生きていける未来が

確立してると知っていた。


生きていれば
ダイナミックさが
成功に向けて起きることも知っていた。


ただそれを知っていこう。
と静かに決めていた。






--盆地に住むお山の日常--
/ 創作編  


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