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飲酒も喫煙も 大人がしたって別にかっこよくないじゃん
現在時刻午前4時46分
あたしは一体何をしているのだろう
日本にいた頃は時間が許せば永遠に眠れていた
睡眠は一定量を超えれば身体のどこかに吸収でもされるのだろうか
いくら早く寝ても いくら遅く起きても いつだって睡眠を欲していた
けれどこっちに来て生活リズムは一転した
語学学校時代 平日は毎朝8時半から授業があったので 遅くとも7時半には起床し 土曜は朝8時 日曜は7時半からのバイトだったので 朝早く起きない日がなかった
そのせいで今はどんなに遅く寝ようが 10時頃には必ず目を覚ます
人は健康的だの羨ましいだのと言うけれど 趣味が寝ることのあたしにとってこれはかなり苦痛なこと
出来ることならもう一生寝ていたい
あたしは昔から 大人になった自分 が想像出来なかった
大人になんてなりたくない とも思っていた
漠然と たぶん大人になる前に死ぬんだろうな と感じていた
背伸びをしすぎて自分のありのままの身長も忘れたあたしにとって 子供らしくない子供であること は一種のアイデンティティだったのかもしれない
だけど 明後日 あたしはそれを失う
怖くない わけがない
あたしは所謂 高齢出産の子 だ
1番歳が近い父方の従兄で12コ上
1番上の母方の従姉とは22コ離れている
まぁ勿論愛情というか かわいいかわいいの言葉をかけられ続け いつだって甘やかされた
だけど両親譲りの負けず嫌いがその甘ったれた楽な人生のレールを壊したのかもしれない
膝の上に乗せたあたしを片手であやし もう片方の手は缶ビールを握る大人達の会話がかっこよくて映って仕方なかった
大人たちが求める 子供が持つ特有のかわいさ と幼きあたしが望んだ 大人の会話に参加できるだけの背伸び の合流点が 子供らしくない経験値 だった
ちょっと大人達の真似事をすれば その大人達から頭を撫でられる
横一列の同級生から少し先に進めば それは驚きから成る称賛が得られた
気分が悪いわけがない
どのフィールドにおいても 最年少 は箔が比較的大きい気がする
未発達未完成である庇護の対象 が親を超えて羽ばたく姿を見て人々は その自由さと特別さに 可能性 を感じるのだろう
もう一生戻れることのない過去の自分 には 出来なかったこと
何より人口ピラミッドがひょうたん型の日本において 子供 は年々貴重な存在になっている
そして 稀少 はいつだって尊敬を引き連れてくる
あたしはそれを幼い頃から実感して活用してきた
もしかしたら 平凡で空っぽなあたし に あたし 以外の名前を付けて 特別 にしてあげたかったのかもしれない
平凡は一種の 無 だから
そして 特別なあたし は誰かの視線の先にいてその存在を認めてもらえる
子供の時間 は全員平等に与えられる有限な財産なのだ
だけどあたしは明後日 それを失う
1年365日のたった1日
世界人口の99.9%は いつもどおりで当たり前の日々を消化するのだろう
もう子供として振舞うことも 無条件に褒めてもらえることもない
今度からは褒める立場に回らなきゃいけない
すごいね
に飢えたこの身のどこから その言葉を絞り出して言うのだろうか
すごいね
と言われた記憶だけ抱きしめて死ぬには まだ早い と言われるんだろうか
もう片手で缶ビールを持つには十分な大きさになった
小さな頭を撫でるあたしの頭は もう誰にも撫でてもらえないのかな
午前6時43分
朝焼けがはじまった
これが大人になる ということなのか