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満足と怠惰と向上




好きになる小説に出てくる主人公はいつだって かっこいい女 だった


女であること を存分に活かして生きて

でもどこかで達観していて

男を見る目を育てる ために高校生の内から毎日クラブに通い詰めて

だけど決して頭は悪くなくて

どんな時も芯を強く持って カツカツヒールを鳴らして歩いているような女が




実際は20年間生きて尚 彼氏がいたことは一度たりとないし

田舎過ぎる上に親がまぁまぁ厳しかったのでクラブなんてものにも行ったことはない

ファッションと素行だけはそちらの方向に向くという最低な成りの果てが ギャルだのヤンキーだの散々に言われた


大学生になったらバイト代を美容につぎ込んで イイ女というやつになってやろうと思っていた

だけで

高校を卒業した3月の終わり 桜の蕾が膨らみ始めた頃 日本から逃亡した




日本とは180度違う考え方 ファッション 顔の造り

着飾る ことが オシャレ ではないこと

痩せている ことが スタイルがいい のではないこと


どれだけ自分を愛せるか

どれだけ愛せる自分になれるか




日焼け止めと眉毛を描くだけの日々が続いた

服も日本から送ってもらった高校から着ているものばかり

出国前に買ったパンプスは1度も履いてない

服は1年でセール品を3着ほど


2つ上の日本人の友達と飲んでいる途中に言われた

あんたがちゃんとした服着てるとこ見たことないわ

彼女はこっちに来てからも人前では化粧を落としたことがなく こちらでは探すことさえ困難なストリート系のブランド品を扱う店を見つけ出しては散財していた


一方であたしは貯金を確実に増やし ただ着られればいい食べられればいい の生活をしていた

貯金は好きだし その額を見て幸せになれる

多分元々 金 への執着がすさまじいんだと思う

日本でオシャレを楽しめていたのは全て親の金だったから

自分で稼いだ金 となった途端に財布の紐は開くことを知らなくなった


それと同時にこっちに来て旅行に行きたいと強く思うようになった

いろんな世界を 景色を見てみたいと

そのためには貯金は必須だし その時には惜しみなく遣うだろう




だけど これでいいのか とも思い始めた

東アジア人であるにも関わらず 日本にいた時より人目を気にすることが減った

その分 心にゆとりが出来たと思う

だけどそれは言葉を換えればただの怠惰だ


あたしは今 自分の現状が好きだ

けれど決して かっこよくはない

大きな刺激を求めているわけじゃないけど このままで一生を終えるのか と思えばどこか虚無感もある


満ち足りるには少なすぎたし早すぎたかもしれない




着飾ることを再び覚えよう

自分の現状を受け入れる のではなく 自分を愛せる自分になろう


買ったきり 1度も着ていないワンピースとパンプスで外へ出よう

お菓子に費やしていたお金を美容へ充てよう


今ならもっときれいになれる気がしてるんだ




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