杜野凛世のGRAD編あああああぁぁぁ……
つい先日アイドルマスターシャイニーカラーズを始めたド新参者の私が、杜野凛世のGRAD編をプレイし、感情と涙腺がぐしゃぐしゃになってしまった。
そこで、章別でストーリーの解説や考察を行い、自分なりに整理をはかっていきたいと思う。
※本noteでは、杜野凛世のGRAD編のネタバレを多分に含みます。
もしまだプレイされていない方がいらっしゃれば、
まずはあなた自身でプレイされることを強く勧めます。
初めに:凛世の世界
以前私がnoteにまとめた内容の復唱となってしまうが、以下に少し抜粋させていただく。
WING編を通じて、凛世の世界の視野は拡がった。
翼を得て、高いところに向かって飛び立てるようになったものが得られる景色のそれであろうか。
前提としてGRAD編は、恐らくはWING編の後日談、アイドル活動を経る中で新たに生まれた目標に加え、"凛世自身の不変の目的"と向き合うための物語であろう。
序章:ほんよみ
本章は展開されているコミュの内容をそのまま読み取る要素が強く、ここで語るべきことはそこまで多くない。
が、以降の物語に繋がる箇所の紹介を含め、2つだけ。
今回凛世が役を受けた話の結末において、「問い合わせてみようか?」と投げかける=役づくりのためにそれを知るための手段を提案するプロデューサーに対し、「感じてみたい」=感性を通して知る、と凛世は返す。
また、
一見するとただのプロデューサーと凛世の対話のように思えるが、プロデューサーが語る部分に着目してみると、
『一見、ふたりの見分けはつかなかった』
→ここは"「あ」を伝える(伝えたい)凛世"と、"「あ」の言葉を届けられない凛世"を比喩するものであり、これはすなわち、プロデューサーが「伝えたいけど伝えられない感情を有している凛世」という概念を認識していないことの現れであると推察する。
GRAD編をプレイするまでは、凛世をあらわす言葉として「奥ゆかしい」という言葉が相応しいと感じていた。
奥ゆかしいとは、奥+ゆかし(行かし)=(あなたの)心の奥にゆきたいという語源から生まれた言葉である。
凛世が「奥ゆかしい」故、以降の章においてはその奥ゆかしさからの脱却にフォーカスが当たり、"凛世の奥に触れようとするプロデューサーの行動"と、"プロデューサーやファンの皆さまの心の奥へと向かい、真意を届けるための凛世の営み"は紡がれていく。
→その分からなさも包括して「奥ゆかしい」凛世という偶像は、私たちプレイヤーの、凛世に対するファーストインプレッションに相似する。
加えて、
『絶対に博士の想いを裏切らないようプログラムされている』
とは、プロデューサー(ひいては凛世)の真意が相手に伺い知れずとも、プロデューサーに対する凛世の立ち振る舞いは変わらないことの比喩に繋がる。
(穿った見方をするのであれば、「何が動機かは分からないけど凛世は俺の事を慕ってくれているんだな!」という事実をプロデューサーが認識し続けるのに、残念ながら真意は不要である、ということだ。)
※ここでは少女βに関する説明であるものの、少女αと博士の関係においても、博士はその真意に触れることは叶わなかったが、αが「博士を想い慕う」という事実はずっと変わらなかった。
以降のコミュにおいても、プロデューサーの目線に沿って、ドラマのストーリーの読みわけが行われている点は着目するポイントであろう。
1章:she
ここの"she"が「αの側面の凛世」、「βの側面の凛世」なのかは、断定には至ることができない。
当たり前に考えれば「あ」のみのコミュニケーションでは日常会話に支障をきたす事から、プロデューサーが「あ」を受け持ったと理解するべきなのだろうが、あくまでも「あ」はプロデューサーに向けられる言葉としておかれている。
あくまでも凛世は、コミュニケーションや表現の全てにおいて「心をこめて」おこなっている。
そして、このスタンス自体は以降の物語において変容することは無い。
…もう一度言うが、凛世は初めから、凛世自身としては、プロデューサーやファンの皆さまに対する愛情表現を成しているのだ。
ただし、それが正しく対象者に届いてはいない。
ダンストレーナーからのコメント(AI、アンドロイドみたい)に対する凛世の心の靄は、ボイストレーナーからの言葉も重なり、より濃くなっていく。
ここで、凛世は自身の届けたい姿と現状(プロデューサー以外の第三者から評価されている姿)に乖離があることを、違和感として漠然と感じるようになる。
ただし、その直後の会話においては、プロデューサーとは「あ」という言葉で通じており(それによって「凛世の拠り所としてのプロデューサーには正しく伝わっている」という錯覚を得て)、安堵の思いを持つ凛世。
凛世の「世界」は、プロデューサーとの出会いによって拡がりを見せた。
"ドラマ上の物語(=αに対して博士から共有される「世界」)"と、"凛世とプロデューサーが共に拡げた「世界」"のあり方がシンクロしており、少なくとも現時点において、プロデューサーと共に拡げた世界に対し、凛世が絶対の信頼を持っていることが示唆される。
2章:「あ」を持たない少女+GRAD予選
前章で凛世が感じていた違和感の答え合わせが始まる。
プロデューサーも、ダンストレーナーからの凛世に対するフィードバックは受けており、それは「ダンストレーナーでもどうする事の出来ない要素」であることが強く提示されている。
一方凛世にとっては、トレーナーの曖昧な回答も合わさり、"何故かプロデューサー以外の人に想いが伝わっていない"という問題に変換され、解決策の糸口も見つかっていない。
そもそも凛世がそれのような想いを有していないのではないか?
それは、プロデューサーに対する表現の中で、第三者から見て否であることが明らかとなる。
想いを乗せるという行為と、それが相手に正しく伝わるという結果が十分条件でないことを、凛世は知ることとなる。
しかし、その違いに対する解決策は未だ見えることは無い。
GRAD予選では、自己表現のあり方を考えるがあまり、周り(ファン)の声は凛世に届かず、凛世がステージ裏を去る中、ファンの歓声は鳴り続ける。
プロデューサーが見守るしかなかった理由としては、冒頭で記載のとおり、"αとβの凛世がいる"ことを知らなかったからであろう。
そしてそれは、凛世が「あ」を表現出来ているときとそうでないときの違いが捉えられていないことの証左となりうる。
3章:she/she
ここでは、凛世とプロデューサーの食い違いが、少女αと博士のそれと重なる。
結局のところ、プロデューサーは「思いやりの履き違え」によって凛世とのコミュニケーションを易しく殺すことになる。
と言っているが、プロデューサーが凛世に対して取ってしまったアクションは博士のそれと変わらない。
博士はαの真意に触れることを恐れ、声を取り上げてしまった。
プロデューサーが恐れているのはなんだろうか。
凛世の真意?それとも、凛世の悩みを聞いて、(それが凛世の恋心ということを知らずとも、)それに向き合う事が出来ない、解決することが出来ないかもしれないということだろうか。
4章:いたかった
ここで、プロデューサーはようやく凛世の抱えているものの正体に気づくこととなる。
そして、凛世は「プロデューサーさまに会いたかった」と返す。
ここで、「会いたい」という言葉を、目的→目標→手段のレイヤー別に落として整理してみようと思う。
・凛世の真の目的=プロデューサーと"あいたい"=プロデューサーと一緒にいたい
・凛世の目標=凛世の心の内を見せたい(これは、プロデューサーだけではなく、第三者に対しても、である)
・目標を叶えるための手段=プロデューサーと文字通り会いたい→何故なら心の内の見せ方(というより伝え方)が分からないため
凛世がこの手段を取ろうとした理由は、プロデューサーの前で披露したダンスについて、ダンストレーナーに褒められた経験から、プロデューサーの前だと凛世が"それ"を表現出来ることの理由を見つけてもらうためであると私は推測した。
また、「いたい」転じて「いたかった」、これはコミュの中でも示された「プロデューサーに会いたかった」という意味と、凛世の心の苦痛のダブルミーニングと取るべきであろう。
海岸で、凛世は、ちゃんとプロデューサーに対して、想いを伝えることが出来たのであろうか。。
GRAD決勝〜5章:he
誰かに想いを伝えるためには、凛世の中にある特定の感情だけを押し殺しては届かない。そして、それだけを押し付けても足りない。
全てを伝えることの正しさ、そしてそれを正しく受け取ることの大切さを、凛世はGRAD決勝までに得ることができ、GRAD決勝において確証を得られたのだろう。
そして、"he"は、凛世に何をこたえるのだろうか。
「あ」とは「少女αに残されたもの」であり、そして「心を突き動かされるもの」の意であり、「心の内を表現するためのパーツ」として存在=少女βには有されることを認められなかったものである。
想いの根幹は「あ」にあるという前提において、「あ」以外の49音にて得られるのは、事実としての「博士を想い慕い、傍にいる」という状態だ。
凛世は今、"プロデューサーさまのお傍にいる"という目的を達成している。ファンに喜んでもらえるようなパフォーマンスが出来るようにもなった。
しかし凛世の目標は、「皆さまの期待にお答えする」ことであり、目的(真意)は「プロデューサーさまの傍においていただき、凛世の傍にいる」ことである。
事実としてだけでなく、真意の元で凛世の想いが叶うことを、ただただ願うばかりである。
結び
想いを伝える、というのは、大変なことだ。
伝えてしまえば全てが終わってしまうかもしれない。だから、それであれば伝えない方が良いのであろう。
しかし、この想いは決して───。
そんな想いを、あなたは抱いたことはあるだろうか。
それを誰かに抱いたことのある人間であれば、伝える大変さは、その決定には葛藤が多分に含まれることは、多くを語らずとも既知のものであろう。
そして、その葛藤の量に対し、想いをすべての言葉で相手に伝えることが出来た人は、どれだけいるのだろうか。
このコミュで変えたいものは、このコミュを見るまでの私たちだ。この私たちとは、杜野凛世担当Pだけでなく、全てのプレイヤーである。
GRAD編で記されていた物語とは、プロデューサー(ひいては私たちプレイヤー)の凛世という偶像の破壊、そして、あなた自身の心の中にある想いを伝えるためのエールである。
もうすぐ、夏がやってくるな。
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