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六次の隔たり

正しく知り合いを六人介せば会いたい人に会える理論らしい。面白いね。仕事、親戚の知り合い、友だちのツテ。六人辿ると会いたい人に会えるとな。

ここ1年、ソロ活動が続く彼らがポツポツ日本に来る機会が増えてきた。ここ1年で振り返れば長男を除く6人が訪日したことになる。

彼らが来日するニュースを見る度に少し、いや正直に言うとわたしの心は大分不安定になる。その日が来たとき私は正気を守っていられるだろうか。自国からの出発からおおよそ2時間足らずで日本についてしまう。恐らく平日だろう。馴染みの空港。知った街並み。ドキドキワクワクとなるだろうか。

オタ活とはなんだろう。夏の光、秋の香り、雨の匂い、お気に入りの書店の香り。よく干した洗濯物の香り。よく通う喫茶店のコーヒーの匂い。そういう大切さで愛せればどんなに楽だろうか。生活の一部でありながら生活を決して犯さない。愛おしいというのも種類があるのだ。私が持つ彼に対する愛はそれとは少し違うらしい。

それなりに都心に住んでおり彼らが訪れた所が身近だ。以前の職場。ランチで歩いた場所。あそこのお店の隣。あのビルのあそこの店舗か。あの看板は見ただろうか。この店員さんと話した?このメニューと迷ったかな?

知ったところで何も起きない。だからどうということはないのだ。どこに住んでいても彼らと私は全く違う世界線に居るのだ。3キロ離れていようが1000キロ離れていようが、それは同じなのだ。

ナムさんもこの景色を見ただろうか

まだバンタンを見て間もなく、好きだとかファンだとかいう自覚も何もなかった時、私は何か良くわからない全く根拠のない自信が芽生えたのを覚えている。

「私、将来この人達に会うな」

今となっては何故こんなことを思ったのか、そしてどうしてこんなことを覚えているのかもはや謎なのだ。当時は良くわからず身近なアイドルだと思ったからなのかもしれない。なんかとても失礼だな。知れば知るほど近くて遠くて遠いと知った今。なんなら7人を見ることはどうやらあと2年は待たねばならない。ただ、何故かこの記憶が謎に鮮明で、今更だけどちょっと、笑ってしまうんだ。おめでたいな、って。フフフ。

ささやかに応援しているつもりでザワザワするのは何故なんだろう。6人辿ってどうなるのだろう。辿って万が一彼に触れたとしてその先には何があるのだろう。ゴールも終点もない。人生の思い出になるのかな。それでなにか決着するのかな。到底そう思えないのだけれど。そこまで人間ができてない。人間性の問題なのか。思い出を持ってそのまま生きられる程私は人間が出来てない。よくわからないその次を期待するだろう(本当にヤバいよ自覚はあるのよ

その観点で言えばやっぱりライブだ。偶然じゃなく正当に真正面からアミを名乗れる。大声で愛を叫ぶこともできる。そこからの眺めは最高だろう。

だけど。
だけど。


たまに見かける目撃情報、偶然の出来事。プレス発表に現れた彼らに出会う人達。そういうのを見る度に胸がチクッとする。嘘。チクッとじゃすまない。何かがビリっと破れた音がする、何かが壊れるような。

今年の春の事。


良く行くお弁当屋さんに小さな女の子を連れたお父さんが居た。女の子は最高潮に機嫌が悪くてずっと怒ってて言うことを聞かなくて、何を言っても泣きじゃくっていて、お父さんが提案するお弁当全てを否定してた。これじゃいやだ、あれが食べたい、そんなにいらない、やっぱり食べたくない、もう帰りたい。お父さんいやだあっちにいって。何を言っても聞かなくて無邪気にお弁当屋さんの店内で感情を顕にする女の子をみて私は大変だなぁ、疲れるだろうなぁ、きっと夜よく眠れるな、などと呑気に思ったのを覚えている。

大人になると我慢することも覚えるし、何よりもそんなに感情を表に出すときまりが悪い。それなりに気持ちの発散の仕方や抑え方をテクニックとして纏えるようになる。理不尽なことも言われる日々も当たり前で対処してなんぼ、みたいな事は今までそれなりにやってきた。一応大人なんだ。

それでも。

胸から湧き上がってくる謎の感情に名前をつけるとしたらなんなんだろう。万が一生活圏内に彼が来た時に私はどうなるんだろう。

実際の所、普通に仕事をして、普通に食事をして日々の仕事をこなしてたまに窓をながめて。ため息を付いてまたモニタに向かうんだろう。夜はもしかしたら話を聞いて欲しい友人と一杯やるかもしれない。そんな中夕暮れがやってきて彼らは自国に帰っていくんだろう。去っていくんだ。そして日常が始まる。

私だって会いたい。なんで会えないの何もかもどうでもいいどうしたって会いたい、皆ずるいずるいずるい憎らしい。悔しい、どこにぶつけて良いのか全くわからない、あのお弁当屋の女の子のようになれたなら。少しは気が晴れるのだろうか。そんな場所が私にあるのかな。難しいな、きっと。


ずっとずっと。
ここの所吐き出せない想いがあってお焚き上げの気持ちでここに吐き出してしまいました。書いて吐き出して、もしかしたら明日消すかもしれない。

ただ普通に恋してる自分が少し馬鹿で、惨めで可愛そうで、扱いどころがわからない、そんな初冬です。

寒くならないでほしい。
何も叶わなくていいから、寒くならないで。



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