映画所感と
生まれてこの方同じ映画を3回も4回も観たことは無い。定期的に喉が渇くように同じ映像を見たくなるのは何故なんだろうか。円盤やコンテンツを見ているのと同じ気持ちなのかもしれない。元々広く色々観たいタイプではない。同じものを飽きるほど見返すのが好きだ。
初回に見たときはCSのTVで。ネットだと不安定だからと誘ってくれたお友達とワイワイ見たので内容よりも楽しくワチャワチャした感情だけが残像みたいに残った。持ち寄ってもらったお稲荷さんとピザが美味しかった。
映画館で初めて見た時、殆ど内容が頭に入ってこなかった。友達と一緒に見る予定だったそれは、我慢ができなくて初日に一人で見に行ってしまった。でもストーリーがある映画と違い、LIVEの映像なのでセトリや衣装は覚えているのだけれど肝心の心に残る瞬間というのは思い返せなかった。映画館用に若干編集されているその内容は、メンバーのメントの順番がありハイライトで我が推しがなんとなく喋る内容を憶えていたので目を伏せた。目をつぶって下を向いたことだけ覚えている。つまり、私は直視できなかった。コメントで彼が喋る順番が回ってくると何故か歯を食いしばった。見るのには勇気が必要だったんだ。
近場の映画館に夜22:00から足を運んで二人しかいないようなひっそりとした回もあった。でっかいカップに注がれていたLカップのビールは2曲目の終わりでなくなってしまっていた。正直、4DなのかScreenXかというよりも、最も今現在に近い彼らの歌声とパフォーマンスをとにかく見たかったんじゃないかと思う。
これが最後にならないよね?
段々と回数を重ねるとそれぞれのシーンの解像度はどんどん高くなっていった。例えばこのシーン。カウントダウンで去年のグラミーのビハインドを見ていたからなのか、マンネのメントはグッとくるものがあった。FIREのパフォーマンス中、下からの吹き上がる炎で怪我しなかったかしら?
3月に入り、徐々に映画館の上映スケジュールが変わっていく。2月当初、彼らの隣に並んでいたロードショーはもう鬼滅の刃ぐらいしか残っていない。見た後の帰り道は凄く満ち足りたような寂しいような気持ちで「これで最後かな」といつも思った。なのに数日経つと何故かまた足を運びたくなってしまっていた。何も変わらないのに。何度も観たのに。
好きな人のどこが好きなのか語れと言われるとうまく語れないように。映画の中で歌う貴方はどれも全部が一枚一枚絵画のようで全部を丁寧にファイリングして胸に留めておきたいように、なんだかハイライトとか、ここが素敵だったとか、そういうことが全然言えないのはなんでなのかな。ちょっと寂しいような気がする。口にしたら陳腐化すると思ってるのかもしれない。素敵な表現で表せたらいいのに。
エンドロールで、「30歳になって、真のアイドル美が生まれてきた気がします」、という声だけのシーン。帰ってきても、アイドルをやってくれるかな。ライブもやったら来てくれますよね?って聞いてきた貴方だからきっと歌う姿を見せてくれるかな。
甘い甘い余韻だけ残して、映画の季節が終わりポツポツとスケジュールの隣に3/16 終了予告の文字が並ぶ。時間が経つのは残酷だ。いつもは毎秒、毎分、毎日がどうしようもなく苦しくなる瞬間があるくせに、その瞬間だけはどうか3月が終わらないでと願う。