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東京オリンピック2020オンラインパブリックビューイングの配信技術

とうとう、東京オリンピック2020が閉幕しましたね。みなさん、なにか印象に残った競技やシーンはありますか?僕にとっては、やはり空手がオリンピック競技化したことが一番の大きなことでした。賛否両論ありますし、僕自身どちらの意見も持っています。そういう考えについては、いずれ整理してブログに書こうと思います。

せっかくなので、伝統空手の競技を見てほしい。組手・形ともに。本来であれば、現地の日本武道館に行って仲間たちと応援したい(かつての道場と同門の選手の出場あり)、全国に散った大分大学空手道部のみんなとも集合したい。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響で集まれず、試合も無観客となった。残念ながらテレビ中継もないし。。。ただ、gorin.jpという民放オリンピック公式動画サイトで、全競技観戦することが可能だった。

前回のリオオリンピック・パラリンピックの際は、中西麻耶のパブリックビューイングをそこそこ企画した。

空手道競技も、より多くの人に知ってほしくて、毎年12月にNHKでJKF全日本大会の放送はあるのが唯一メディアに取り上げられる機会だったのだが、今回はオリンピック競技にもなったので、チャンスだった。

オンラインパブリックビューイングできるんじゃね!?

思いついたことはやってみる!ということで、人数は集まらなかったもののオンラインパブリックビューイングを行いましたのでその配信技術について紹介したいと思います。

なお、時系列についてですが
 ①8月2日(月)リハーサル、野球:米国VS日本戦を観戦
 ②8月3日(火)リハーサル、サッカー:日本VSスペイン戦を観戦
 ③8月4日(水)リハーサル、卓球を観戦(の前にアントレ最終発表会に出席)
 ④8月5日(木)空手競技初日。パブリックビューイング。女子組手宮原選手、女子形清水選手を観戦。終了後にアカデミーリハ
 ⑤8月6日(金)アカデミー。会場セッティング中に男子組手西村選手を観戦。配信技術に関しては前回記事参照。
 ⑥8月7日(土)空手競技最終日。6時間超のオンラインパブリックビューイング。やりながら、アカデミーの配信の反省会見振り返りテスト
となっていて、基本的には⑥の日の技術をここでは記します。

オンラインパブリックビューイングで必要な画面構成

パブリックビューイングとは、スポーツ競技やコンサート等のイベントにおいてスタジアムや街頭などにある大型の映像装置を利用して観戦・鑑賞を行うイベントのこと(Wikipedia)。スポーツ選手の地元や、フジテレビ系列が地上波で放送されない大分市においてAKB総選挙(大分出身指原莉乃の開票を見守る)などもパブリックビューイングが企画された。これを、オンラインでやるとなると必要な画面構成はなにか。

Live中継は、前述のオンライン配信サイトを使うのでブラウザベースでの視聴となる。ところが、オンラインでつながるのであれば視聴者カメラを配信したい。かとって、自分も競技を見る必要がある。つまり、

現地(スクリーン):競技Live中継
オンライン:参加者カメラ

という、それぞれ違う画面構成となる。・・・ん?なんか聞いたことあるぞ!!そう、我らがRolandのV-8HDの出番である。

V-8HDは、PreviewとProgram、そしてMulti viewの3画面出力が可能なビデオスイッチャー。そのうちMulti viewはいじり様がないものだが、PreviewとProgramは、加工前と加工後の画面を置くのが普通だが、それぞれ全く別の画像を出力することも可能である。Webブラウザーの音をスピーカー(プロジェクターからの音声)に出しながら、自分の声も配信にのせないといけない。音をマイクにのせないため(Zoomとでループしハウリングする?)にはPCからヘッドフォンで聞くべきか・・・。でも大画面で見るのに音はヘッドフォンはなんか寂しい。8月6日のアカデミーでもハウリングしてしまったため、その反省点も踏まえて最終的に行き着いた配線図がこれ。

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正直、何パターンもありリハーサルの中でさまざまなケースを検証しました。それぞれに、どういうトラブルがあったかとどう対処したか、なぜそうしたかったかなどを書いていくのでいつもより長くなるかも。その前に、そもそもオンラインパブリックビューイングをやってみてどうだったかを先に書いておきたい。

つながって思い出した”オリンピック”というもの

最初は軽い気持ちで『やってみてもいいんじゃない?』で試してみた。最初のリハは、それで野球の米国戦を見た。それが、意外と良かったんですよね。オリンピックってなんだかんだミーハーになるし、だいたいサッカー戦は知り合い同士で集まって観戦しながら宅飲みで盛り上がり試合後はウィイレをやるという経験は誰かしらあるでしょう。一緒に集まって歓喜するというのを、そう言えば忘れてたなと思い出した。オンラインになっていろいろな人が人と人とのつながりが希薄になったというが、方法はある。オンラインで繋がって日本を応援するのは、集まって応援する臨場感を十分感じた。むしろ、これだと観戦リスクはゼロなので、会自体になにか言われることもない。心置きなく楽しめる、その開放感もプラスに働いたと思う。野球だけでなく、卓球やサッカーも同じ。空手に関しては、僕が1人で興奮しすぎたこともある。

あと...解説、実況の人ってすごいなと思った。意外と、喋り続けるってすごく難しいことです。

では、前置きはこの辺にして配信技術の紹介です。

前提:Live中継画面は配信に乗せるか否か

大きな前提として、競技のLive中継を配信に乗せるか否かで大きく違ってくる。画面はV-8HDでどうとでもなるが、音の出入りがどうなるか。

配信したい、自分の声はマイク入力(マイク→Notepad 8FXでZoomの「マイク」設定をNotepad 8FXに)で配信にのせる。Live中継の音声はWebブラウザーからくる。これを、配信に乗せるなら同じようにNotepad 8FXに入力する。乗せないのなら・・・う〜〜ん、、、。。。

結論からして、映像や音の配信速度、遅延などから最適解はスイッチャーを使って画面構成をして、みんなで同じ画面を見ながら盛り上がるのが最適解だという結論に至ったので、以下それを前提に話を進めます。

というわけですが、この音制御をソフトウェアでやるかハードウェアでやるかが問題になる。というか、一番シンプルなのはソフトウェアを使ったやつなんですよね。(心が折れた)

ソフトウェア「Loopback」でやるとシンプル

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※スクショじゃなくてすみません

SafariがLive中継の音、USB Audio Deviceがマイク、Zoom Audio DeviceからはZoom参加者の声が聞こえる。そのZoomの音はそのままV-8HDに渡して、そこの出力から現地プロジェクターに渡す。Zoomマイクに渡すのはZoom Audio Deviceであり、Safariの音とマイクの音のみが渡され、Zoomの音が帰らないのでハウリングは避けられる。

Loopbackを使うと本当に、楽。

ところが欠点もある。それぞれの音量調整は、volumeの大きさで調整できるのだが、それ以上のことはできない。さらに、調整はソフトウェア上で行う。配信PCでは、今回のパブリックビューイングの場合は、Zoomホスト+Live中継画面(デュアルディスプレイ)±Zoomピン当て画面(ハイブリッドSPLIT画面やるとき)の管理ですでに忙しい(汗)。やはりここでも、ハードウェア化できることはハードウェア化するという大原則が例外なく当てはまる。

RODE WIRELISS GO IIの弱点と対策

なんだかんだで長く使っているRODE WIRELISS GO II。受信機1台につきマイクが2台ついているお得品と思いきや、受信機が1台なのでそれぞれの音量バランスの調整ができないことが弱点だった。マイクはマイクで全指向性で鬼のような集音性を持つため、1台は単一指向性のラベリアマイクで運用するはめになった。このラベリアマイクも、指向性が強すぎてわずかにずれるだけで音が小さくなる。一方で、RODE Interview GOで運用する方はそのまま全指向性なのでとにかく拾いまくる。第22回大分県麻酔科学アカデミーのときは、手元の受信機でそれぞれのマイクのON/OFFを切り替えるという驚愕の手作業をしていた(そして当然、マイクを間違える・・・)。

この解消法ですが、WIRELESS GOIIの受信機は、マイク1とマイク2をMIXする方法と、LとRに分けるモードとがある。

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これで、L/Rにわけて、それぞれLINE入力すればいい。

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これで、見事に1台の受信機をL/Rにわけて2台それぞれのマイクをそれぞれで音量調整ができるようになった。マイクの音はLINE入力。PCからの音(ZoomやWebブラウザ)はUSB接続で入力。ミックスしたものをAUX outでV-8HDに渡して、V-8HDの音をそのままZoomに配信する。

また、この方法でやるとなぜか会場スピーカーから自分の声が出ているのに、ハウリングが起きなかった。GAINをこれでもかとめいっぱい上げても全く起きない。

Notepad 8FXでマイナスワンを作るには、PCからの入力(Zoomの音が乗る)のAUX outをゼロにしないとZoomの音がまたZoomに帰っていくのでハウリングが起きる はずなのに。。。なぜかはわからないが、なんかできた。音問題については、何でできなかったのかわからない問題や、何でできたかわからない問題がそれなりに起きる。周術期セミナーのときも問題になった2台のマイク問題が、ようやく解決できた。

多分、ハイブリッドでも行ける

以上。会場スピーカーから現地の声を出しても、ハウリングしないシステムを組むことができた。Zoom同士のハウリングも起きないおまけ付き(なんで?)。

実は、サマーセミナーやテクノロジー学会のような大規模学会と、アカデミーのような中小規模のハイブリッドセミナーの大きな違いはにあった。オフライン会場のマイクの音を、オフライン会場にも流すかどうか。流す場合は、そもそものハイブリッドとか関係なしに会場マイクとスピーカーでのハウリングが起こりうるため音響スタッフの力を借りる必要がある。アカデミーのような20−30人規模の会議室でのセミナーでは、オフライン演者の声はオフライン参加者向けには肉声でよく、会場スピーカーから流すのはZoomからのオンライン演者の声のみで良かった。今回は、会場スピーカーに会場演者の声を出しても問題なかった。

もちろん、大規模学会ではマイクの本数も多く結局は会場音響さんの力を借りる必要はあるし、セミナー規模によってはPC台数も増えるためNotepad 8FXの入力端子では足りなくなるので、依然として大規模クラスのハイブリッドセミナーの完成形はサマーセミナーの時ので変わるわけではない。

ただ、これで会場に音を流してもハウリングが起きないシステムが組めたので、ハイブリッド(競技を応援する人がオフラインでも可)パブリックビューイングも可能だと思う。

おわりに

ここまで来ると、むしろコロナを言い訳にできないと言い切ってもいいと思う。感染症対策なしに闇雲に集まってしまうのも、現在の社会背景上慎重に判断しなければならない。感染対策チームの定期院内メールでは、毎回「感染者は何かしらの観戦リスクが高まる行動をとっています」と注意喚起されているし、実際その通りと残念ながら言わざるを得ない。飲み会も会食も、オンラインだと思いっきり楽しめる。記事にはしていないが、ハイブリッド会食というものも今年のゴールデンウィークに企画して、オフラインで集まった会食にオンラインで参加するというハイブリッドで、非常に楽しく感染リスクに怯えることなく堂々とマスク無しで飲んで食べて笑った楽しい会も実施してきた。もちろん、食事は会食会場のものをテイクアウトしました。やっぱ、感染対策のstay homeは最強だと思った。コロナPCR陽性者に対する誹謗中傷や差別的な目線は良くないとは思う。だが、中には感染しても仕方ない行動をしている人もいるのは確か。オリンピックも、コロナ禍での開催については賛否両論あった。言うまでもなく、代表選手にはまったく罪はなく、なんならあれほど開催反対の声の中でのトレーニングや試合出場にもっていくモチベーション維持やメンタルは想像できないほど過酷だっただろう。世界中から持ち込まれるというが、オリンピック関係者は厳格な行動制限がなされていて、選手村内での観戦はあったもののそこから東京の一般人への感染があったのだろうか?オリンピック関係者はすでにワクチンを打っているのでは?。ワクチンを打っても、ウイルス排出量は変わらないというデータもある。

症状はなくてもPCRすればウイルス量があれば陽性になるため、オリンピック関係者からも新型コロナウイルスPCR陽性者がある程度出ることは想定できる。そこからの感染拡大があるかどうかで議論しないといけない。

「オリンピックをやってるんだから、飲み会やってもいい」といって結局行動制限が浸透しなかった。オリンピックの開催にどれほどのお金が動いているか考えると、オリンピックと飲み会を比べるのも変な話。「緊急事態宣言は出しても意味がない」というのは、結局は国民一人ひとりの行動次第である。確かに政治的な要素もあるかも知れない。飲食業をはじめとして業界によっては工夫はできるだろうが制限は保証なしに受け入れられるものでもないだろう。たった12日間の完全ロックダウンでコロナは行き場を失うはずなのに、全員が全員域が揃わないからもう1年半過ぎちゃったよ。ここはコロナについて述べる場所ではないのでこの辺にしておきます。この意見は私個人の意見であり、所属機関や関連団体の総意ではないことを予め断っておきます。

ただ、できるかな?と思ってやってみたオンラインパブリックビューイングは、いわゆる新しい生活様式の一つとして大きな可能性を感じさせてくれた。

みなさんも、どうでしょうか。オリンピックらしさを取り戻せますよ。

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