020:フェロモン調香師
その昔、私の匂いを感知すると全自動で勃起して先走りでスーツにシミ作っちゃう
かわいそうな体質になってしまった(させてしまった)人がいた。
それは職場の同僚だったので、給湯室で鉢合わせてしまっただけで勃起して「ああどうしよう…」とよくボヤかれた。
かわいそうに。(他人事)
柔軟剤、ヘアトリートメント、香水、どれかのようでどれでもない香りが常にダダ漏れていたらしい。
自分で知覚しようがないのでわからない。
汗かいた夏の仕事後だろうがお風呂の後で何も付けてなかろうがいい匂いがするらしい。
いや普通に汗臭いのしかわからない。
精液と同じで体臭というのも主に食事と生活習慣が影響してくる。
中国には桃娘(タオニャン)という「乳離れした女の子に桃しか食べさせずに育てると体液も体臭も桃の香りがして、血肉を喰うと不老長寿になる」なんて都市伝説がある。
極端な例えだが、まあそういうことだ。
肉ばっかり食べていると獣っぽい臭いになるし、野菜やフルーツが多ければ癖のない匂いになる。
食品添加物たっぷりのコンビニ飯やお菓子やジュースが多ければ毒素が溜まって巡るので嫌な臭いのもとになる。
疲労ストレスお酒タバコ寝不足は自律神経が乱れて汗腺のコントロールが崩れるので脂汗が出て臭くなる。
要は、健康な食事と生活をしていれば基本的には嫌な臭いにはあまりならない。
加えて人間は素晴らしい本能を持っている。
生命体としての生存率と適応力と進化をしていく上で、遺伝子の多様性を求めるためにその遺伝子を匂いで判断できるようになっている。
簡単に言うと自分と似た遺伝子同士では子の遺伝子のバリエーションが乏しくなるので、なるべく遠い遺伝子を取り入れて選択肢を多くできるようにしたい。
近い遺伝子同士、例えば親子で子を作ろうとさせないために、娘は父親を臭いと思うように設計されているのだ。
不衛生で臭いのはまた別として、この遺伝子的相性による匂いの良し悪しと
その人の習慣によって調香された匂いの良し悪しはどちらが優先されるのだろうか。
柔軟剤やボディクリーム、ヘアミスト、香水の類はたくまで外付けの香りで後から加えた香料。
あくまでベースは先述の二つの匂い。
良質な体臭と香料の組み合わせはもはやフェロモンだ。
遺伝子はどうしようもないけれど、習慣と外付けはコントロールできる。
ぜひフェロモン調香してみてください。
自覚はないけど私どうやらめちゃくちゃいい匂いらしいので多分いいフェロモンです。知らんけど。
匂いだけは保管も効かないし確かな形もなく「こんな匂い」と一言で表現するのも難しい。
全く同じものを使って香りをつけても同じ匂いにはならない唯一無二で再現性が難しい。
だからその人の匂いが好きになったら本人の生身からリアルタイムで嗅ぐしか術がない。
残せないから記憶の中でさらにどんどん研がれた印象だけがこびりついていく。
儚いねえ。