【みちしるべ#10】粂早穂さん~一人でも多くの人にオリエンテーリングを楽しんでほしい~(後編)
みなさんこんばんは。年に一度の、真の日本一を決める大会、全日本大会が週末に迫っていますね。
第10回のみちしるべは、全日本大会をもっと良い大会にしたいとアクションを起こし続けてきた大先輩、粂早穂さんをゲストに迎えてお話を伺います。
前編はこちらから!
後半では、日本オリエンテーリング協会(JOA)の理事に就任されてから、早穂さんがどのような想いで、どのようなアクションを起こされてきたのかや、大会運営の難しさ、抱える苦悩についてもざっくばらんにお話を伺いました。
来る全日本大会前に、ぜひ御覧ください!
ゲストプロフィール
JOA理事に就任し、起こした3つのアクション
ー2019年よりJOAの理事を務めていらっしゃるとのことですが、そもそもJOAという組織のことや、理事になった経緯を教えてください。
JOAは日本オリエンテーリング協会の略称で、サッカーでいうと、日本サッカー協会(JFA)のような、オリエンテーリングの中央組織です。私たちが皆公平にオリエンテーリングを楽しむための競技規則や地図図式等々のルールの整備や、他スポーツ協会との連携、選手の強化指針を立てたり、オリエンテーリングの普及を推進したりと、役割は多岐にわたります。
スポーツの中央組織が、適切な組織運営を行ううえでの原則・規範として、スポーツ庁が策定している、スポーツ団体ガバナンスコードというものがあります。その中に、組織役員の多様性の確保を図るため、「女性理事の目標割合(40%以上)」という指標があります。そこで、JOAでも、女性理事の割合を4割にしようという動きが出てきた中で、声をかけていただきました。
学生の時は、JOAのことを知らなくても、オリエンテーリングを楽しめたし、毎年全日本大会を開催してくれている以外に、JOAのことについて何も知らなかったし。それで、どういう人たちがやっているのかなとか、今までJWOC等へ派遣してもらってきたけど、どうやって組織されているのか、JOAってなんなんだろうなと思ったこともあって、引き受けるに至りました。
それで、最初は関東ブロック理事になりました。
でも理事ってすごく難しくて。お金をもらってないんですよね。そして、なおかつ、実行部隊じゃないんです。理事は、最後いいよっていうだけの承認機関で。理事になって、会議には参加して、思ったことは言うけど、承認機関であるから当たり前なんだけど、手を動かす当事者ではなくて。じゃあ誰が動くの、誰が手を動かすのって言ったら、なかなかそういう人がいなかったのが、すごく難しくて。みんなが思っているJOAって誰のことで、誰がどういう風に作り上げているんだろうというのが全くわからなくて、それでいいのかなと、最初は思いました。
ー社会人のお仕事と両立しながら、隙間時間で理事のお仕事をされていたんですよね。
そうです。当時は、何をするのか全然わからなかったし、それこそ、女性の割合を増やすためだし、いるだけでいいからと言われていたのもあって、当初の1年間は、ただいるだけという感じでした。
その中で、私より前に理事になっていた、瀬川くん(元JOA理事、現スプリント委員会委員長、2020~2021年度全日本スプリント選手権大会実行委員長、東京大学卒業)の存在がすごく大きくて。上の人との調整であったり、彼がすごく頑張っていたり苦労していたりするのを見て、力になりたいな、一緒にやったら面白いかなと思うようになりました。
また、自分の中でも問題意識があったんです。自分が学生の頃の全日本大会は、地方大会の一つのような位置付けに私は感じてしまって、日本一を決める大会にも関わらず、盛り上がっているように思えなくて。しかも、ちょうど私が理事になる年となる前の年の全日本大会で、競技不成立になったり、提訴が行われたりということもありました。その一方で私の周りには、卒業後も熱心に競技を頑張っている選手たちがいっぱいいて。国内の競技環境が、このままでいいのかなとすごく思ったし、自分が選手だったら悲しいなと思いました。
ーそのような問題意識の中で、早穂さんはどのようなアクションを起こしてきたんですか。
自分がこの3年間でやってきたことが3つあります。
1つ目は、アスリート委員会の立ち上げです。
そもそも、JOAは委員会がたくさんあるんです。地図委員会、強化委員会、危機管理・コンプライアンス委員会等、いろんな委員会があるんですが、その中で、選手が公式に声を上げられる機関が存在していなくて。
競技規則等、ルールを作るにも、世界的には選手の声というのは、スポーツに関わる大事な存在として扱われている一方で、日本の環境ってあんまりそうじゃなかったから。
そこで、ちゃんと選手の声を集められて、かつ公式にJOAへ声を届けられる場所はすごく必要でした。それは時代的にも、世界的な流れもそうだったし、実際全日本スプリントでスポーツ仲裁が起きたことからもすごく重要だったし、ガバナンスコード的にも重要でした。いろんなことが重なって、アスリート委員会を立ち上げることができたのが、1つ、私のやってきたことです。
2つ目は、日本ランキング制度の整備、日本ランキングを活用した日本大会E権獲得制度の改正です。
全日本大会がなかなか盛り上がらない理由として、日本一を決める大会にもかかわらず、速い選手がE権を取得するのが難しいということがあったりして、出場資格の決め方が、公平ではないとまでいうと言い過ぎですが、ちゃんと日本一を決めるためのものになっていないと感じていました。
そういう環境を変えたいなと思ったこと、そして競技者にとって、1年に1度の全日本大会を目指すため、毎週ランキング大会に出場しながら、日本でオリエンテーリングを毎週楽しむ1つのモチベーションになったらいいなと思いました。
そのような背景で、西村さん(2019~2020年度全日本選手権大会プロデューサ、NishiPRO、京都OLC所属、京都大学卒業)にご協力いただきながら、日本ランキングの仕組みを整備することができました。これが2つ目のアクションになります。
3つ目が、全日本大会を、もっと良い大会にし、年に1度の、真の日本一を決めるための権威のある特別な大会にする、ということです。2020年からJOAの全日本委員会に参画し、2021年から、全日本大会の実行委員長を2年務めました。
全日本委員会は、JOAの委員会のひとつで、全日本ミドルロングの継続的な開催がミッション。事業者の方々にも委員になってもらって、開催地や時期、大きな方針を決めています。2020年から私が委員長をしています。
全日本大会実行委員会は、毎年の大会運営組織。開催地の県協会、そして事業者、ボランティアが一緒になってその年の大会運営をしている人たちです。今年は千葉県協会理事の平山遼太くんが実行委員長を務めてくれています。大感謝!!
日本の中で、オリエンテーリングの日本一はこの人ですと決められる機関・組織は、中央組織であるJOAしかないんです。例えば、日本学生連盟が、学生以外にも開かれた大会を開催して、1番になった人を日本一ですと言ったとしても、それは日本一になりません。日本一を決めるということは、JOAだけができることなのに、日本一の選手に対してのリスペクトを持つ人がすごく少ないように感じて。
インカレチャンプは、インカレチャンプってすごいみたいな感じになるけど、かつての全日本チャンプは、もっともっとリスペクトされて然るべきにも関わらず、自分が宮崎の全日本ミドルで優勝したときにも、ちょっと地方でやる大会で勝ってしまった、みたいに感じてしまって。
全日本大会を、もっと良くしたいなと元々思っていて、最初は別にアクションとして起こしていたわけではなかったんだけど、環境と周りの人のおかげもあって、アクションを起こしていくことができました。
全日本大会は、もうやる人が居なくて、このままだとなくなる、続かないという環境でした。それから、特に山川さん(2017~2018年度全日本選手権大会プロデューサ、YMOE、東京大学卒業)と西村さんの存在がすごく大きくて。お二人が、やっぱり全日本大会はちゃんと権威ある大会じゃないといけないよね、でもそれを自分たちが赤字覚悟でやるのも違うよねと言ってくださっていて。4年間、その二人がやってくださっていたから、その二人が築いてきたものがあったからこそ、自分のアクションに繋げられました。先ほど言った2つのアクションも、もちろんたくさんの人が関わっているけれども、全日本大会をもっと良い大会にするということも、自分だけじゃなくて、瀬川も含めて、本当にいろんな人がいたからできたことだと思います。
ー早穂さんの功績は、本当に偉大なものですよね。
ー実は、早穂さんが初めて実行委員長を務めた2021年度の全日本大会が、私の初めて参加した全日本大会でした。すごく小さいお子さんから、ご年配の方まで、老若男女が生き生きされていて、活気があって、輝いて見えましたし、皆さんが本当にまぶしい笑顔で表彰台に上がっている姿を見て。本当に、オリエンテーリングは尊いスポーツだなと思いましたし、その時、大会の最後に、涙されながらすごく熱くスピーチされている、なんかすごくかっこいい女性がいるなと思った記憶があって。当時、オリエンテーリングを始めたばかりで、早穂さんのことはきちんと存じ上げてなかったんですけど、女性の方がこんなに大きな大会を仕切っていてかっこいいなと心から思いました。
ーOK-Infoによる、年間の優秀大会を投票によって決定し表彰する企画、OKアウォードでは、すべての部門で受賞されています。
ー木口も実はベストメモリー部門に投票し、このようなコメントを投稿していました。
ー日本一を目指す、素晴らしく魅力的な大会が、年に1度開かれることが、皆さんのモチベーションになっているというのは、肌感としてとても感じています。Strava(ランニング記録アプリ)を見ていても、全日本大会に向けて、社会人の方々がトレーニングされている投稿を見かけます。早穂さんの狙いのように、全日本大会がモチベーションとなって、オリエンテーリングを楽しむ人がたくさん増えているのは、本当に凄いことですよね。今年の大会も、とても楽しみです。
ほんとに嬉しい。ありがとうございます。
続けることの難しさ
ー全日本委員会を組織されて、新しい体制でその全日本大会を作っていったとのことですが、全日本大会でも、JOAでも、多様な考え・経験を持つ人、世代が違う方々、いろんな人をまとめる必要があったと思います。その中で、苦悩されたことはありますか。
最初は、もちろん大変だったこともいっぱいあるけど、最初ってすごく気合いが入るよね。「すげえことやってやろう。」みたいな感じになるじゃないですか。そういった勢いで行けたところもあるかなと思います。
全日本大会を、もっと良い大会にしようと行動した最初の2年は、最初だったし、やっぱり物珍しいですよね。みんな同じ課題感を持っていたし、コロナだったし、そういうのもあって、みんなが「やんなきゃね」「やろうよやろうよ」みたいな感じでした。上の世代も、「とりあえずやってみたら。」と。
もちろん、ほんとにたくさんの人が協力してくれたおかげとは思うし、2年目も、その火というのはあまり途絶えてなかったし。協力してくれた人がすごくいっぱいいましたから。
でも、やっぱり、続けることは本当に難しくて。
これは本当に、ただただ難しいとしか言えないのですが。環境も変わるし、周りの人の環境も変わるし、頑張ろうよと言っていた人たちの環境が変わって、じゃあ下の世代の人と一緒に頑張りたいとなったときに、下の世代はこれがあるのが普通だから、それに対してなんか自分たちがしなきゃって、やっぱりなかなか思いづらいのはもう仕方ないと思うんですよね。例えば、木口さんも、初めて出た全日本が2021年のブランシュたかやまの大会であったように、そういう人たちが増えてくると、空気感として、今みたいな全日本が開催されるのが普通なんだってなるよね。それはありがたいし、2年間頑張ってきたからなんだけれど。しょうがないんだけど、そうするとだんだん惰性でしかできなくなっていって。最近本当にすごく難しいなと思っています。
全日本大会にも、オリエンテーリングそのものにも、日本のオリエンテーリング大会すべてにずっと、私は「愛の選択」をしてきたつもりでした。愛を持って、自分は選手じゃなくて運営をやるんだという選択をしてきたつもりでした。でも、最近は、自分が全日本大会をやっているのは、全日本大会がこのままでは続かなくなるのではないかという恐怖でしか自分の選択をできていないことに、気づいて。自分の中でのモチベーション維持はすごく難しい。
今年の全日本大会は第50回になりますが、これまで50年間続いてきたことは本当に奇跡なんだなって思います。それは別に全日本だけじゃなくて、インカレもそうだし、それこそオリエンテーリング自体も、地域クラブも、いろんな人のアクションが積み重なってここまで来た、本当に奇跡の産物だなと思っていて。
自分自身も、JOAや全日本大会に向き合うことがすごく難しくなっています。自分が最初に全日本大会をやりますと言ったときは、3年やりますと言っていたので、今年の千葉の大会でおしまいなんですが、やりながら、次やる人を探せばいいと思っていました。それこそ政治とかもやってこなかったし、学力も高くないし、オリエンテーリング界は学力が高い人や仕事ができる人がたくさんいるから、私ができるんだったら、誰でもできるだろうと本気で思っていました。
でも、やっぱりなかなか難しい。何が正解かわからないこと、今うまくできているように見えていることを、他の人に引き継ぐっていうのは、こんなに難しいことなのかというのが、改めて最近気づいていて。結構自分の中で、正直どうしようかわかんなくなっていて。ごめんね、暗い話で。
ふと顔を上げれば、自分のやりたいペースで大会運営に参加している人たち・仲間がたくさん周りにいる中で、自分がお金ももらわずに、生活の中で、全日本がどうしたら続くのかを考え続けるのは、難しい。
本当は、ここで難しいと言わずに、こういうことが楽しいから、もっといろんな人と一緒にやりたいですみたいな華々しいことが言えれば、もっと他にもやりたいっていう人が出てくるんだろうなっと思って、どういう風に話そうか、すごく悩んだんだけど。でも、そういうことを隠しても仕方がないので…。大会に行ったり、今の話を聞いたりすると、こういう人たちのためにやってきて本当によかったと思うし、これからも続いてほしいと思うけど……。でも、そうだね、なかなか、自分がこれ以上やるのは、結構きついかなと思っています……。
だけど、オリエンテーリングを仕事にして、お金を稼いでいる人たちも周りにいて、その人達にすごく支えられてここまで来たから、その人たちの食い扶持とかも守らなきゃいけないし、その人たちも全日本だからって言って安く受けてくれたりとか、そういうのもあって。宮西(2020~2023年度全日本選手権大会競技責任者、宮西山野精図、東北大学卒業)の存在とか、すごく大きくて。そう、ずっとね、一緒に競技責任者をやってくれていたんだけど…。彼が、自分のライフワークと言ってくれているから、自分がこういう風に、ちゃんと正面から全日本に向き合えてないことは、すごく申し訳ないし、続けたいと言って頑張ってくれている人たちもそうだし、選手の人たちに対しても、すごく申し訳なくて。
でもね、なかなかやっぱり、これだけすごく難しさを感じているからこそ、他の人にやろうよって言えなくて。やっぱり、その人のどれだけの時間を奪って、どれだけの気持ちを奪っちゃうんだろうと考えれば考えるほど、やろうよって声をかけられなくて。運営に誘うだけでもすごく最近きつくて。1回の運営でも、その人の時間も奪うし。もちろん楽しいと思ってくれる人もいるけど、タイミングタイミングで仕事が忙しくなったり、睡眠時間を削らせてしまったりもするし。そういうのを見ていると、1年の運営でさえも、本当に申し訳ないというか、なかなかパワーがいるのに、さらに将来の全日本を一緒に考えようというのは、なかなか難しいし。同じ役割を誰かに担わせることが、申し訳なさすぎて。自分もそういうモチベーションでいるし、今本当に悩んでいて…。ごめんね。こんなこと言われても困るよね。
私はこれに対して答えを今は持っていないし、もしかしたら、イタリアに行ったら投げ出しちゃうんじゃないかなと思って怖い。ほんとに怖い。だけど、投げ出したとしても、自分は自分の役割を果たしたと思うし、他に役割を感じてくれた人がいたり、何か別の形があるならば、全日本大会は本当に、続いてほしいなとすごく思う。それは全日本大会という形じゃなくてもいいけど、日本で、オリエンテーリングを楽しむ人たちが楽しめる環境が続いてくれれば、いいなと思っています。
ー早穂さんがいたからこそ、みんなが楽しみにして、もはやみんなの生きがいにさえなっている全日本大会があると思っていて。自分だけでなく、同期や後輩もすごく楽しんでいて。参加してみて、楽しいなと思った人や、オリエンテーリング愛が深まった人たちが、今後、全日本大会に参画したり、誰かに繋がっていったりすると良いなと思います。
ーお金が出ない中で、お仕事と両立して活動する必要があったり、他の競技に比べると、仕組みが整備されていない印象を受けるのですが、他の競技の全日本大会はどういう風に回っているのでしょうか。
やはり、スポンサーの存在は大きいように見えます。オリエンテーリングはそもそも名前が知られてないスポーツなのもありますし、オリエンテーリング界としてもあまりお金稼ぎが得意ではないので、お金のやりくりが難しいのは、一つの側面としてあります。
でも一方で、海外とかだと特に、別にお金が出なくても運営することが、楽しくて、ボランティア精神でやっている人たちも、すごく多いし。
私も、楽しいときは、全然お金をもらわなくてもいいと思うのだけど、どうしてもやっぱり仕事が忙しくなったり、ちょっときついなと思ったときに、お金がない状況は、義務感を感じづらくて。そこに私はすごく難しさを感じてしまったけど…でも、人それぞれだと思うし、プライスレスで、この活動を通して、人との繋がりができて、そこからまた新しいキャリアが繋がっていく人だってもちろんいると思うし、捉え方次第だとは思うのですが、スポーツという文化自体が、お金もらえなくても楽しめる、楽しもうとする人たちが多い世界っていうのはあるのかなって。武井壮も、フェンシング協会の会長を無報酬でやっていたと聞くし。
難しいよ。今回、こういう質問があるんだろうな、学生さんにこんな話をしてどうするんだって、思っていたけど、でも、やっぱり木口さんのOKアウォードの嬉しいコメントを読んで、こっちも本気でぶつからなきゃなと思ったので。はい、そんな感じで悩んでおります。
ーいつも、参加する側として楽しんでばかりで、裏側のことはあまり知りませんでした…。
楽しんでくれる人がいるのが重要だから。さっきも少し、牧さんに話したけど、1人でも多く、楽しんでほしいし、そう思ったときに、OKアウォードに書いてくれたみたいに、言葉にして、ありがとうって伝えてくれる人が1人でも多いと、運営する側も、やってよかったなって思える。
運営するのは本当に大変なことだし、運営側もいつも完璧ではなくて、色々思うことがあるときもあるのはもちろんわかるけど、やっぱり、競技を楽しみながらもふと、今日どういう人がこの大会を、地図を作っているのかなとか、ちょっとでも想像したりとか、それを言葉だったり、行動に変えていってもらえたらいいんじゃないかなと思いますし、みんなが役割を担わなきゃいけないとか、そんなことは、私は思わないから、ただ、自分が、楽しみだなって思ったときに、そういう風に、ちょっとでも言葉にしたり、行動に移してもらえたらありがたいかなと思います。楽しんでいるだけなんでとか、そんな謙遜したり申し訳なく思ったりする必要はなくていいと思う。そういう人たちがいてこそだから。
一人でも多くの人に、オリエンテーリングを楽しんでほしい
ー全日本大会を変えたり、選手の声を聞くアスリート委員会とか立ち上げたりして、すでに色々変化を起こしてきたと思います。
ーもっと日本のオリエンテーリング界で変わってほしいこととか、こういう風になったらいいなとか、そういった理想像はありますか。
私、オリエンテーリングってめちゃくちゃ楽しいスポーツだと思っていて。小っちゃい頃からオリエンテーリングしかしてないお前が言うなよって感じで、何とも比べてないんだけど、確固たる謎の自信があって。
こんなに楽しいものだから、1人でも多くの人が楽しんでほしいな、もっともっと楽しんでほしいなって思うし、オリエンテーリングに出会った人たちが楽しめる場所がたくさんあることが、私の描く理想のオリエンテーリング界かな。木口さんがトップの選手みたいに走れるようなりたいと言ってくれていたけど、速く走る速いナビゲーションは何にも変え難い面白さがあるんですよ。インカレまでだと、そこに到達できる選手は本当に一握りだから。そういった、さらに高いレベルがあることを知ったり、そこを目指して練習したりできる環境があればいいなというのも、私にとって描いている理想です。
もうちょっと現実的な話で言うと、今、個人競技としての大きな大会が、全日本大会だけしかなくて。全日本大会の運営を維持しているだけで大変なのに、理想すぎるよねって感じなんだけど、本当は、年に2回ぐらい大きな大会があった方がいいなという風には、ずっと思っていて。
全日本大会の下に、公認大会、その下にランキング大会があってという構造にはなっているけど、正直、現状の文化・構造の中で、探って探って、悩んで悩んで、見出した現状の最適解で。まだ正直、道半ばだなと思っていて。
ゴールドランクの大会が全日本大会で、全日本の次に盛り上がるような、シルバーランクの準・全日本のような公認大会があって、毎月のように日本ランキング大会が開かれていく、というのが実現すると良いなと思っています。
運営するのも本当に面白いから、その運営者の楽しみを奪いたくなくて、ここでやりたいって、大学生が頑張って開く大会だったり、地方で、この地方のオリエンテーリングを守りたいっていう方々が開く、素朴で、あたたかい大会だったり、そういう大会もランキング大会にしていきたくて。そういうところでは、もしかしたらE権(選手権クラス出場資格)取得を目指す選手から見たらギリギリな大会に思えるかもしれないけど、それは、大会数がたくさんあればそういうのは薄まっていくというのが、私たちが考えている、今の制度なので。そういう大会もあるよね、と広い心でみんなが参加できる、構造のオリエンテーリング界になればいいなと思っているんですけど……、いやー、難しいっ。全日本を繋げていくことさえも難しいので、理想の話にはなりますが。
でも、話していけば、もしかしたら誰かが共感してくれるかもしれないし、言うのはタダなので。一応、そんな風に私は考えています。実現できるかどうかは、なかなか難しいですけどね。
走ればいいんじゃない
ー最後に、学生に向けてメッセージを頂きたいです。
ー日本代表選手、オフィシャル、大会運営、JOA理事、全日本大会実行委員長等々、色々な立場から、オリエンテーリングに関わってきた先輩から、目標だったり、不安だったり、色んな気持ちを抱えている学生に向けて、メッセージをお願いします。
私も多分、今学生だったら、めちゃめちゃ就活は不安だと思う。今の時代は情報過多だし、昔と違って、何が正解なのかも自分で決めるみたいな時代だから、それは、すごく難しいし、悩むことだろうなと思います。でも、その一方で、選択肢がいっぱいあることはすごく幸せなことでもあると思うし、1回やってみて、それが正解じゃないなと思ったら、別の正解を自分で探すこともできるし。それこそ、別に仕事だけじゃなくて、いろんなことやってみようと思って、もしかしたらこういうお金にならない活動をする中で、別の自分の新しい強みやできることが見つかって、それをまたお金に変えたりとか、自分のやりがいに変えたりとか、自分の世界に繋げられることができるなって思うから。
不安になることもあるのはすごくわかるし、当然だと思うけど、一歩アクションしてみてもいいし、それが正解じゃなくてもいいし、それが正解になればラッキーだし。という風に思います。
ー私は、オリエンテーリングと仕事の両立に不安があります。
オリエンテーリングと仕事の両立は難しいよね。私は難しかったし、今でもそう。それこそ自分がした選択が正解だったのか、すごく悩みます。11月に30歳になりますが、20代は、とにかく自分のやりたいこと、競技も、運営も、仕事も、たくさん、たくさん、フルにアウトプットできる時間だったなって、すごく思っていて。学生の時よりも、お金はもらえるし、一方で、できることも増えていくし。人といろんなことをやるときにも、人と色々過ごしていく中で、こうやってやっていったらいいのかなみたいな、だんだん見えてきたりもするし、経験、時間、お金、色々なことを含めて、20代って、体力もあって、何でもできるから。
アドバイスとしては、走ればいいんじゃないかなって。いろんな意味でね。トレーニングってだけじゃなくて、走ればいいんじゃないかなっていうのが、振り返ってみて思うことです。ただ、私は体を崩して家族に迷惑をかけてしまったから。本当に体とまわりの人は本当に大事にしてほしいなとおもいます。
感想~インタビューを終えて~
最後までお読みくださりありがとうございました。
全日本大会、全力で楽しみましょう🔥
ここでは載せきれなかったお話は、ポッドキャストにて聞くことができます。
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【次回予告】
11~12月ごろ 伊藤樹さん (設楽町/三河OLC所属、横浜国立大学卒業)
11~12月ごろ 松澤俊行さん (松塾、東北大学卒業)
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