【最新作云々㉜】アクション有り、ロマンス有り、BL有り、歌有り、ダンス有り、抗英有り、そしてリアリティー無し...な超ウルトラスペクタクル満漢全席映画『RRR』
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
昨晩の会社からの帰宅途中、至る所で夜空を見上げてる人々だらけだったので、"こんだけ娯楽やら何やら氾濫してるのにまだ人は夜空の星にワクワク出来るんだな"となんか感心してしまった、O次郎です。
今回は洋画の最新映画『RRR』です。
屈強な青年二人が最初は敵同士として出会いつつも固い友情を結び、やがて圧倒的武力のイギリス領インド帝国に対して敢然と戦いを挑む姿を描く一大アクション叙事詩。
実在の独立運動指導者二人をモチーフにしているというのがウソのようなスーパーパワーぶりで、アベンジャーズのメンバーに居ても何の違和感も無いですがその心身の強靭さに加えて歌やダンスも人心を動かすほどのレベルなのでもうアベンジャーズを超えてます。
言ってしまえば"おバカ映画"なのですが、それをこれだけの熱量と規模(製作費7200万ドル超・・・『アベンジャーズ/エンドゲーム』の1/5ぐらいか)で作り上げてしまえばもうそれは偉大で崇高なるおバカでしょう。
インドの大作映画らしく三時間の長尺の中にこれでもかとアクション・音楽・ロマンスの見どころが詰め込まれており、いわゆる"娯楽映画"嫌いの方々にもこれだけのスケールで展開されるその映画娯楽の極北を是非ともスクリーンで体験していただきたく、感想をしたためる次第です。
ネタバレ含みます(といっても上記のあらすじだけでもう筋としては全部なんだけど…)ので避けたい方はご鑑賞後にどうぞです。
それでは・・・・・・・・・・・・"月は出ているか?"
Ⅰ. 作品概要
主人公二人は実在の独立運動指導者コムラム・ビームとアッルーリ・シータラーマ・ラージュがモチーフとのことですが、聞くところによると「あまりにも荒唐無稽に描き過ぎている」ということでそれぞれの親族から訴えられたものの「映画の内容が彼らの名誉を棄損するようなものでない」ということで事なきを得たとかなんとか……おおう。(゜Д゜)
僕が本作を知ったのはこの夏ごろのTBSラジオ『たまむすび』のコーナー"アメリカ流れ者"での町山智浩さんの紹介解説からだったのですが、未だその時点では国内の配給元が決まっておらず、Wikiのページも英語版のものしかありませんでしたが、早々に配給が決まってなにより・・・というよりかは超大作なので劇場上映は間違いないもののどこが配給するかの鬩ぎ合いだったのかな。
監督は、インドの大作アクション映画といえばこの人、なS・S・ラージャマウリ監督。『マッキー』で国際的に名を知られて潤沢な予算で絢爛豪華に大ヒットさせた『バーフバリシリーズ』でその手腕が頂点に達したかに思われましたが、本作でさらにそれを超えてくれた感が有り、さらなる超絶スペクタクル作を期待したいところですが、あんまり何年も作品間隔が空くのもじれったいところなので、熱さはそのままに作品時間を凝縮した作品を今後は期待したいところでしょうか。
・第一幕
物語冒頭は圧政を敷くインド総督スコット一行がアーディラーバードの森にあるゴーンド族の村を訪れて芸術の才能を持つ少女マッリを総督府のあるデリーに連れ去ってしまう事件から始まります。
武力で恐怖政治を敷くうえに現地民の処刑に際して"銃弾は奴らの命よりも貴重だ"と嘲笑して撲殺したりと、のっけからの勧善懲悪物語を示してくれてのめり込みやすいことこの上なしです。
そしてジャングル地帯を突き進むゴーンド族の救出部隊の戦士たちの登場。
部隊とはいいつつも実質ビームだけが異様に強いというのがこの時点で気にはなりますが、まぁチームものではなくバディーヒーローものということで納得。虎を鍛え抜かれた身体と知略で以てして生身で仕留めるくだりは本作の最初のダイナミックなアクションシーンにして、ビームのキャラクターを端的に物語ってもいます。
一方でデリー近郊の警察署での逮捕した独立運動家の釈放を求めるデモ隊と警察との攻防では、何百というデモ隊に揉まれながら首謀者一人を摘発する警官ラーマの異様な職務への忠誠と不死身ぶりでこれまた絶妙に巧みに彼のキャラクター性描写とアクションのケレン味を両立させています。どこかターミネーター感すら漂わせているかもしれません。
そしてビームの首都デリーに潜入しての偽名での潜伏生活。バイクの修理工に身を窶しながらも英国人の横暴ぶりで滾々と臥薪嘗胆のシンパシーを煽ってくれます。そうこうしながらも列車事故により発生した橋の大火の中で一人の少年を救うため、互いの素性を知らない英雄二人が運命的な出会いを果たします。
その後、総督公邸に住む貴婦人ジェニーとビームとの恋路をラーマが応援するロマンチック展開の一方で、ビームは彼女を伝手に首尾良く救出のターゲットであり自らの妹でもあるマッリを公邸で発見します。若く美しい女性にときめきながらもその裏で黙々とミッションをこなしていくビームの姿は最高にクールです。
そこからは雪崩れ込むようにして総督公邸への大襲撃シーン!!
西洋のスパイ映画ならここからの緻密な潜入計画や味方内での策謀の云々をドラマに仕立てますが、そうした小細工はスッパリ割愛してとにかくスペクタクルに振っている思い切りの素晴らしい事といったらないです。
ここが二幕構成の内の一幕のクライマックスなのですが、その一対多数の絶対的劣勢を覆す飛天御剣流も真っ青なビームの無双状態に対して絶対的なライバルとして立ちはだかるラーマの構図が鳥肌モノです。
そこまで恋に仕事にグルメにエステに義兄弟関係で固く結ばれていた二人が袂を分かって対立し、ランボーVSターミネーターとばかりに超人対決を行います。
部族の情を一身に背負ったビームに同情を示しはしますが、並々ならぬ使命を負ったラーマとそれでもやはり強大な英軍の力に屈し、奪還作戦が失敗してビームが囚われる一幕のラストはなんともヤキモキさせられますが、インターミッションのテロップが入るあたり、本国ではホントに休憩が入るのでしょう。実際にこれほどの長尺ならトイレ休憩ぐらいは入るとありがたいところなのですが…まぁ一日の上映回数とかの大人の事情は有りますわな。
・第二幕
で、第二幕の序盤はラーマの出自のお話。
出身地の村を英軍に襲撃されて夥しい数の仲間と父母弟まで殺されるという少年期の永遠のトラウマを追いつつ、"村の人間すべてに銃を授けよ"という元警官だったレジスタンスの父の遺言を実行するため、恋人の涙を振り切りつつ村人の希望を一身に背負って臥薪嘗胆のこれまでの青年期を過ごしてきた積み重ねが語られます。
ここでも連綿とした抗英のドラマを語りながら絶望的な戦力差を戦い抜いた村でのアクションシーンが際立っており、何十ものエッセンスが妙味を形成しています。
ビームの処刑を同族で実の妹でもあるマッリに見せつけようという嗜虐の極致のような英軍の処罰が下りますが、絶対に諦めない救出部隊のフォローも相俟ってマッリの救出とビームの脱出が叶います。
実はその裏に村の運命を背負った使命よりも友への信義を重んじたラーマの血の滲むような変節によるサポートも有ったのですが、それがビームには伝わらず敵同士のままにお別れする二人の姿がなんとも切ないところです。
・・・が、さすがにこれ以上の尺は割けないのか、故郷の村でただ一心にラーマを待ち続けていた恋人シータが上京してきてビーム一行に途中でニアミスし、ラーマがいかに信念の下に生きる男かを訴えてビームの心を動かします。ビームにしてもマッリを故郷へ連れ帰るまでがミッションなので本来ならば何を置いてもそれに専念すべきなのですが、朋友の危機を憂いて変節し救出に向かいます。
そしてチョチョイのチョイと裏切りの罪で囚われのラーマを救出してからは待ちに待った英傑二人の共闘シークエンス!!
残り30分程度の尺しか残っていないので若干物足りなさが残るかと一抹の不安がよぎりますが、それが杞憂に終わるどころか"これ以上やるとさすがにやり過ぎだな…"となるぐらいの濃縮還元無双バトルが幕を開けます。
英軍総督府と首魁夫婦を仕留めての堂々たる凱旋帰国でラーマとシータが涙の再会を果たしますが、他方のビームの下には例のジェニーの姿が…。
"彼女は例外的に許すんかい!"とか"親族が成敗されたのにその下手人たるビームの下に馳せ参じるんかい!"とかいうツッコミは有りますがそこは野暮というもの。
アクション映画としてのカタルシスを最高の形で用意しつつ、ビームがラーマへ「読み書きを教えて欲しい」と文武両道の寛容さのメッセージを残しつつ終わるところがまたニクいところです。
Ⅱ. おしまいに
という訳で今回は洋画の最新映画『RRR』について語りました。
"圧政からの解放"というテーマは掛け値無しのカタルシスをもたらしてくれますが、これをインド→韓国・中国、イギリス→日本に置き換えて考えてみると・・・・・・と考えるとなんともはや…というところです。
S・S・ラージャマウリ監督はこれからもスペクタクルアクションを期待されるのでしょうが、これだけ大作向けな職人が正反対に極私的で内省的な物語を撮ったらどうなるのだろうなとちょっと意地悪な興味も持った次第です。
ともあれ、今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・どうぞよしなに。