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【配信を拝診㉑】自らの安穏を捨ててでも彼奴を告発する勇気は有るか?! 周囲の保身によって男の狂気が野放しにされた実話ベースのサスペンススリラー映画『グッド・ナース』

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。( *¯ ꒳¯*)
 本日10月28日は群馬県民の日ということで県内の公立学校はお休み、とニュースで聞いて"学校が休みになる県民の日があるのはどの都道府県?"と気になって調べてみた、O次郎です。

ちなみに僕の出身は兵庫県ですが今も昔も県民の日は有りません。 参考:都道府県民の日
そういえば大学進学で上京してから首都近県出身の友人に
「〇月△日が県民の日で高校までは学校が休みだったから云々」って話を聞いて
「なにそれ?羨まし…(´・ω・`)」となったのを思い出しました。


 今回はつい先日Netflixにて独占配信開始となった映画『グッド・ナースです。
 米国ニュージャージー州の正看護師として働いてきた傍ら、80年代後半から00年代初頭の16年間に40人からその10倍近くの患者を殺害したとされる"ヘルスケア・シリアルキラー"のチャールズ・カレンをモデルとしたサスペンススリラー。
 彼と同僚となったICUのナースを主人公に、彼女がシングルマザーとしての疲弊した生活と生命にかかわる病で前後不覚となりながらも己の倫理観を奮い立たせ、管理責任を問われて隠蔽しようとする病院側を尻目に告発に動くストーリーです。
 作中のチャールズはいわゆるサイコパス的なパーソナリティーとは違った共感性の伴った苦労人であり、彼と友情を結んだ主人公エイミーが苦悩しながらもその裁きを希求する経緯が言いようのないリアリティーに満ちていました。
 主演のジェシカ・チャステイン及びエディ・レッドメインのファンはもとより、『実話ナックルズ』的なセンセーショナルな事件に惹かれてしまう方々、観るか否か迷っている向きには参考として是非とも読んでいっていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・・・・"トライやる・ウィーク"!!

兵庫県独自というか兵庫県発信の施策といって思い出すのはコレか。
僕が参加したのはまだ開始二年目の頃ですが、当時は当事者の我々としても保護者としても
「県内で少年の凶悪事件が起こったからその批判の矛先変えるために捻りだされたんだろうな…」
と冷ややかな空気だったのを覚えています。そして正直なところ、どこで働いてみたいかよりも
"どこの職場なら一週間だけのお付き合いでも快く迎えてもらえるか"で希望先考えてたような。



Ⅰ. 作品概要と見どころいろいろ

※日本語版ページがございませんので翻訳等でご覧ください。

 本作の作劇場でとみに重要なのがエイミーとチャールズの主役二人の関係性の描写でしょう。
 エイミーは新任で入ってきたチャールズに院内の慣わしを教え、別れた妻に付いていった娘に会えない身の上を慰め、チャールズはエイミーが秘かに抱える心臓病のハンデをサポートしつつ、シングルマザーの彼女が行き届かない彼女の娘達への配慮も示します。公私共に支え合ってはいますがあくまで親しい友人関係です。

恐らくは日本の作品、特に連続ドラマなら二人を恋愛関係に持って行きつつ盛り上げたでしょう。
尚且つ彼の犯したであろう罪と彼の公私に渡るサポートという私情とを天秤にかけて
盛大に悩み揺れ動く主人公の姿を劇的に描写したことと思います。

 ところが本作では主人公は己の命と失職、さらには子どもの世話の負担といったリスクをものともせず、短時間の内に決然と彼の罪を告発する決意を固めます。
 その過程が劇的でないからこそ実話ベースの重みがあり、作品全体の緊張感がより高まっていると感じられるのですが、逆にドラマドラマした演出と展開を期待すると些か肩透かしを食らってしまうと思います。
 この作品に、ひいては作品演出に何を求めるかで観る人によってかなり評価が分かれるであろうことは間違いないと思いました。

 話をキャラクターに戻しますが、主人公のエイミーは非常に誠実な人物です。仕事では激務の中でも笑顔を忘れず、ルールは遵守するも患者第一で寛大な判断を下すこともあります。加えて私生活ではシッターを雇っていますが、娘たちとの十分な時間が取れないことや感情的な限界から怒ってしまうことに深く後悔している姿は見ていてとても辛いものでした。

病院の保険を取得できるまでにはあと半年勤めねばならず、
それまでは手術も傷病手当も受けられず、
失職のリスクから自らの病気についても隠さねばなりません。
仕事からの帰宅時、車の中で一人眉間に皺を寄せて溜息を吐く姿は非常にリアルであるとともに、
これだけの労苦を背負ている人が相当数いらっしゃるであろうことを感じて言葉を失いました。

 対するチャールズですが、上述のように自らの都合のために平然と他人を害する一面的なサイコパスキラーとしては描かれていません。
 彼がエイミーの娘達を可愛がったのはエイミーの信頼を取り付けるためではなく彼自身が自分の娘に会えない辛さを投影したものであり、思いやりと共感性のある人間としての面も持ち合わせています。

なかでも特筆すべきは、エイミーがひた隠しにしていた心臓病を
チャールズが娘に明かすよう強く促したくだり
です。
彼女の上の娘にもしもの母の発作に対して冷静に対応できるよう噛んで含めるように
言い聞かせる姿に嘘は無かったように思えます。

 実際のチャールズは作中で描かれていないアメリカ海軍時代を経てナースへ転職していますが、人生の各過程で苛烈ないじめを体験していたようです。さらにこれも作中ではオミットされていますが、勤務先の様々の病院で殺人を犯しながら自殺も何度も試みていたようです。
 先妻と築いていた家庭で飼い犬を虐待したことが離婚の引き金となったとのことですが、己の中から湧き出てくる衝動を抑えられず、意味付けにも至っていないところが問題の根の深さを感じさせます。

 そして本作では彼の類稀な連続殺人の遠因として、病院の隠蔽体質も鋭く指摘しています。
 弁護士とがっちりスクラムを組んで証拠隠滅や口裏合わせを行う様はまさに企業国家アメリカ!という感じですが、己に類が及ばないことが確約されない限り悪を糾弾出来ない組織体制が如何におぞましく、そして悪の側にとっては以下に都合が良いものであるかがよく分かります。
 そしてもっと突き詰めると、病院のような組織はさて置いても、物語の舞台となった病院より以前にチャールズが勤めていた病院の同僚やその関係者がなぜ一人も彼の罪を告発できなかったのかが不可解でなりません。確たる証拠は無かったにしても、本作でのエイミーのようにそのあたりの足固めは警察に任せるとして一先ず訴えて出ることは出来た筈です。
 ここにもう一つ、組織論理にどっぷり浸かってしまう恐ろしさも衝いていると思いました。

ユーロクライム映画の極北『殺人捜査』(1970)。
ローマ市警の本部長が愛人の娼婦と口論のあげく彼女を殺害してしまう。
警察の捜査が進む中、彼は自白するが、当局の上層部は誰もそれを認めない......。
権力機構の無謬性を最後まで冷淡にこき下ろします。
踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012)も
捜査一課の刑事による犯行を隠蔽しようって話だったからその類いか。
ていうか、もう10年も経ってるのね・・・。
パレード』(2010)もまぁ…組織ではないけど
ルームシェアの関係性を守るためにはどれだけ後ろ暗い事も
全て隠蔽してたということで。

 また、終盤は犯罪の物的証拠不足に因る自白を求めて警察のバックアップの下にエイミーがチャーリーと相対することになりますが、ここの展開も極めてリアルでオフビートです。
 例えば彼女の真意に気付いて彼女や彼女の娘たちにチャーリーが牙を剥いたり、あるいは彼が完全犯罪を企図して完全に口を閉ざすといった盛り上げ演出は有りません。

なんとしてもチャーリーを挙げようと逸る熱血刑事ダニーと、
硬軟併せて冷静に機会を伺う老練刑事ティムもなかなかのいぶし銀な存在感。
ちなみにダニー役のナムディ=アソムガは
アメフトから俳優兼プロデューサーに転向したという異色の経歴の持ち主だそうで。

 最終的に幾度にも渡るエイミーの懸命な説得でチャーリーはゆっくりと自らの殺人の告白を始めますが、そこには深い悔恨というよりも自分で自分の行動の原因とその結果の受け止め方を見失って狼狽える姿がありました。
 
 そもそもの要因は彼の幼少期から受け続けた不遇な扱いと上手くいかない人生のステップへの焦燥や悲憤からのものと思えますが、これだけの夥しい数の被害者を出すに到ったのは病院組織の狡猾なリスクヘッジと秘密主義が背景にあるのは間違い無いでしょう。
 そして、出来るだけ相手にリスクを押し付けて利益だけを最大化しようとするモラルを失したビジネスが行き過ぎると巡り巡って人の命までリスク換算されてしまう…そんなメッセージも孕んだ作品だと思いました。



Ⅱ. 監督だったりキャストだったりにひとことふたこと

・監督 - トビアス・リンホルム

第88回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされた『ある戦争』(2015)。
デンマーク陸軍指揮官の主人公がアフガンの最前線で部下を守るために
夭逝した航空支援が結果として民間人への誤爆を招き、帰国後に軍法会議に召集されてしまう…。
どれだけの正義感で以てしても決して上書き出来ない罪悪感の物語。

 人間の内心のアンビバレントな感情を描くとピカイチな監督です。
 監督作ではありませんが、共同脚本を務めた『偽りなき者』は冤罪と偏見で社会的地位を失う男の話で、デンマーク版『それでもボクはやってない』という具合で胸糞に挑む覚悟のある方にはおススメです。

・エイミー役 - ジェシカ=チャステイン

女神の見えざる手』(2016)
銃規制強化をあらゆる手で潰そうとする一大権力に敢然と立ち向かう
孤高のロビイストの戦いを描いた法廷ドラマ

 最近は『AVA/エヴァ』でアクションにも開眼した感が有りますが、真っ赤なルージュがこれほどピッタリな女優さんが他に居るでしょうか?!
 『ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命〜』のような人情譚も良いのですが、『モリーズ・ゲーム』のような高飛車な佇まいが一番しっくりくるように思います。

・チャーリー役 - エディ・レッドメイン

リリーのすべて』(2015)
世界初の性別適合手術を受けた人物リリー・エルベを題材とした夫婦の愛の物語。
現況で彼の主演作のナンバーワンはコレですね。

 『ファンタビ』シリーズも勿論良いのですが、憂いを帯びた役柄だと特に光りますね。
年齢とキャリアからして次期ジェームズ=ボンドに・・・・ちょっと線が細すぎるか。(´・ω・`)



Ⅲ. おしまいに

 というわけで今回はNetflix独占配信映画『グッド・ナース』について書き書きました。
 上にも書きましたが、キャストの華々しさに反して作風はかなり渋く、かなり硬派寄りの演出だったように思います。劇場公開が主眼の作品は動員数を稼ぐためにも爽快感は半ば宿命ですが、本作のような配信メインの作品は差別化のためにも監督の個性のためにもこうしたカラーの作品が増えるのは良いことかもしれません。また同時に観る我々の側もジャンキーな濃い味を求めずエッセンスを楽しむ境地が必要なのかも。
 実際、僕も正直なところキャストのネームバリューで本作を視聴した部分がかなりあるのですが、キャスティングも作風も両方渋い配信作品なぞございましたらコメントにてご教示いただければ恐悦至極にございます。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




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O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)
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