【最新作云々㉑】伊坂幸太郎さんの日本にあるまじきスケール感がハリウッド映画化でバッチリフィット!! 殺し屋犇めく新幹線でケチなスリのブラピが襲われトホホのホ...なハードラック映画『ブレット・トレイン』
結論から言おう!!・・・・・・・こんにちは。( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
一昨日前の9/6は豪ちゃん先生の77歳の誕生日だったらしく、先生の作品で一番好きなのは何かなと考える、O次郎です。
今回は最新公開映画『ブレット・トレイン』についてです。
ブランクを経て復帰したばかりの裏社会のスリの仕事がマフィアのボスの息子の身代金強奪だったことにより、舞台となる新幹線内で繰り広げられるボスを付け狙う殺し屋たちの抗争に巻き込まれていくアクションスリラー映画。
ビターで皮肉に満ちたストーリー展開にほんの少しの救いがウリの伊坂幸太郎さん原作作品なのですが、本作に関してはめっぽうコメディー色が強く、ラストは爽やかに終わらせてくれる上にスプラッター描写も控えめのため、そのあたりのいつもの伊坂さんイズムが苦手な人にも楽しめるアクション映画に仕上がっています。
伊坂さんファンもそうでないアクション映画好きも参考までに読んでいっていただければ之幸いでございます。一応、サスペンス要素も有るのですがネタバレいたしますので予めご容赦を。
それでは・・・・・・・・・・・"地上最強の男 竜"!!
Ⅰ. 伊坂幸太郎さん原作映画にまつわるあれこれ
調べてみたら本作含めて実に15本も有ったのでアクション映画に限定しますと、『ゴールデンスランバー』(邦画版2009年・韓国版2017年)と『グラスホッパー』(2015)です。
日本が舞台なのに様々な銃器やらそれを操る殺し屋やらが大挙して登場するので面食らいますが、対する主人公が平凡などこにでもいるようなお人好しでしかもその人の良さを悪漢どもに利用される展開が多く、本作でもその傾向が強いため、どの作品にしても日本にあるまじきスケール感ながら主人公は到って等身大なうえに偶然の重なりから悲惨な目に遭うため、感情移入どころか自己投影の余地を残しているところは流石だと思います。
また非力な主人公が巨悪に立ち向かうものの、一矢報いるぐらいで打ち倒すカタルシスは無く、その代わりに巨悪がそのデタラメで邪なエネルギーゆえに自壊していく、あるいは状況の推移の中で主人公など歯牙にもかけなくなっていく皮肉を孕んだ幕切れも特徴的でしょうか。
本作もそうしたドラマツルギーの延長線上に有りますが、過去のアクション映画化作品に無かったようなコメディー色やハリウッド基準という要素がどう転んだかは以下にその良し悪しの要点を、ということで。
Ⅱ. 個人的ヒャッハー!!な点
・ハリウッド映画化による人物背景の説得力
"レディバグ"(ブラッド=ピット)と"プリンス"(ジョーイ=キング)が元々日本人設定だったということでホワイトウォッシングとの非難を受けているということですが、全体的に見ると様々な人種が入り乱れてるので、殺し屋たちのバトルロワイヤルとしてはさして不自然とは思いませんでした。
主人公を入れ替えた(ファーザー→レディバグ)ことについても、自分の息子の命を盾にしたプリンスに終始いいように使われてつつ最後もエルダーに見せ場を持ってかれたファーザーよりも、悪運の重なりで方々の殺し屋から襲撃されて逃げ回るレディバグの方が映像化の映えは大きく、媒体に合わせての改編であってストーリーとの整合性もまずまずだったように思います。
何より、いつもはアクション作品では超強い(無双ではないのでたまにラッキーパンチもらったりするけどそこも良い)かもしくは戦いを避けて飄々と上手く立ち回ることの多いブラピが、やる事成す事悉く裏目に出て余計な手間を負い、しかも強さはほどほどなうえに相手を殺さない、というしみったれたオジさんぶりを披露してくれたことが本作の最大の功績だと思います。
・キレッキレのアクション中でも人死にが出ても笑っちゃう巧みなコメディーセンス
このへんはコメディ-描写の巧拙云々よりも原作が日本人作家ということでテイストの問題だと思いますが、新幹線車内ゆえの小ネタがいちいち面白いです。
使い方のわからないスマートトイレで水塗れになるブラピや、車内販売の炭酸水の異様な高さに辟易…。"レモン"が異様に拘る『きかんしゃトーマス』へのリスペクト描写が実は犯人探しに役立ったり。
事件の元凶である"ホワイト・デス"率いるマフィア集団が般若の面を被っているのは別の意味で苦笑してしまいますが、そのへんはまぁ敢えてステレオタイプな世界的イメージを優先してということでしょうか。
他にも、一般乗客に配慮しながら殺し合うくだりだったりと、どこか可笑しい場面満載で血生臭さが緩和されるのは苦手な人には助かるかも。
・真田広之さんの殺陣がバリバリの現役!!
原作版の主人公"ファーザー"の父親にして、過去に自身の属するヤクザ組織を"ホワイト・デス"に乗っ取られた上に妻を殺された初老の男"エルダー"。
序盤から中盤にかけては電話でのやり取りのみですがそこから車内へ参戦し、足取りの覚束無い杖付き老人の見た目は何処へやら、遂に誘き出した"ホワイト・デス"との一騎打ちでチャンチャンバラッチャーンバララ~ッです。
還暦を過ぎたとのことですが、ハリウッドでは60~70代の現役のアクションスターが沢山居ることですし、真田さんにもまだまだアクション頑張って欲しいと思ってたところだったので本作での切歯扼腕ぶりは頼もしい限りでした。
非アクションの文芸作品でも既に十分に評価されてますし、本格的にアクションにカムバックして欲しいものであります。
Ⅲ. 個人的ムムムッ!!な点
・劇伴音楽のオールディーズのミスマッチぶり
作中の格闘シーン等で突如としてカルメン・マキさんや坂本九さんのオールディーズナンバーが朗々と劇判として流れる。
おそらくは場面や展開とのリンクに鑑みれば分かる人には解る通好み演出かとは思うけど、そもそもが終始コメディータッチなのでそこに場面に一見ミスマッチな曲を重ねられると食傷気味になってしまうというか…。
世界的なウケを考えても、中年以上の音楽好きには通じるかもしれませんが若い世代にはただただ珍奇に聞こえてしまうかも。
・謎が謎を読む展開の結末の詰めの甘さ
「"ホワイト・デス"に因縁のある人物ばかりが社内に集められたが、それこそが"ホワイト・デス"側の罠だった」という王道の種明かしで、それ自体は良いのですが、そうした引っ張った末の解り易い展開をするならその後のどんでん返しも用意して欲しかった、というのが正直なところです。
最後に現れたサンドラ=ブロックの思惑だったり、"レディバグ"ブラピが殺しをやらなくなった理由だったり、伏線を忍ばせる余地は多分に有ったと思うので、せっかくの密室空間だからにはミステリー要素ももう少し強化して欲しかったところではあります。
Ⅳ. おしまいに
というわけで今回は最新公開映画『ブレット・トレイン』について語りました。
血生臭いアクションシーンよりも殺し屋たちの軽妙な掛け合いのほうが際立つアクションコメディーなので、いわゆる”ポップコーンムービー”としてみれば申し分のない出来だと思います。
反面、いつもの伊坂さん作品のようなダーティーさやミステリー要素を期待すると些か肩透かしな印象を受けるかもしれません。
ともあれ、ブラピ主演映画に新しい色が加わったということは間違いないところかと思います。
今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・どうぞよしなに。