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ライブハウスと感染症対策

はじめに

 昨日(8/10)、久しぶりにライブを観に行った。場所は渋谷REXキャパシティは300人。このコロナウイルスの影響下で、何故? と言う人も、ふざけている、と言う人もいるだろう。もちろん本日のアクトを観たかったのもあるが、何より佳境に立たされているライブハウスの現状を知りたくてライブに行った、という意味合いも強い。本記事では本日のライブの感想を踏まえながら、実際に体験してきたライブハウスの感染症対策についてありのままにお伝えしたい。ライブに行きたい方や、ライブをしたくてもできない方々の背中を少しでも後押しできることを信じて。

背景

 本日観に行ったライブはPOIDOLという、所謂ヴィジュアル系バンドの解散ツアーの初回ライブである。筆者の友人のツテもあり、今回ライブを観に行くことに決めたのだが、2か月前ぐらいから行くかどうかずっと悩んでいた。懸念事項は皆さんと同じで、場所が渋谷であることや、世間でパッシングされることの多い所謂ライブ会場に行くこと、不特定多数が多い密集した屋内にいること…。あげればキリがないくらい、不安な要素は多かった。それでも行くことにしたのは、ずっと応援していたPOIDOLの解散ツアー初回のライブであることもそうだが、この時勢を踏まえたライブハウスの対応についても実際に見てみたかったからだ。なにかとやり玉に挙げられることもあるが、だからこそ会場側が何の対策もせずライブを実施するなどとは考えにくかったから、何か対策が講じられているだろうという期待も込めて、今回観に行くことに決めた。
結果として、自分の想像以上の対策が講じられていた。

ライブハウス・運営側としての対策

 繰り返しになるが、今回ライブが行われた会場は渋谷REXというハコであった。ゲストとして登録して入場したため、開演ギリギリでの入場となったが、まず驚いたことに入場する前に『質問票』の記載がマストとなっていた。その内容は下記のとおりである。

新型コロナウイルス感染症の会場での対策について
政府・業界団体策定のガイドラインを遵守致します。
<店舗>
 ① 施設の消毒
 ② 換気をこまめに行う
 ③ 収容人数の制限
 ④ 社会的距離の確保
<お客様へのお願い>
 ① 社会的距離の確保(2メートル以上・最低1メートル) <飛沫感染対策>
 ② 来場者同士の接触・場内における会話・大声の声援は控えるようにしてください。
 ③ 入場時の手指消毒の徹底。公演中もマスクの着用
 ④ 検温・質問票へのご協力
※質問票の情報が必要に応じて保健所等の公的機関へ提供され得る事をご理解下さい
<来場を控えて頂く方(入場をお断りする方)>
 ① 来場前に検温を行い、発熱(37.5度以上)がある場合。
 ② 咳・偏頭痛・倦怠感などの症状(軽度なものを含む。)がある場合
 ③ 平熱以上の熱がある方、5日以内に平熱を超える発熱をされた方
 ④ 新型コロナウイルス 感染症陽性とされた者と濃厚接触がある方
 ⑤ 過去14日以内に政府からの入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国、地域等への渡航歴のある方

 *参考:https://ruido.org/rex/

 上記内容のとおり、入場する前に事前に『質問票』が配布されており、そちらに名前や連絡先、渡航歴や感染歴などを明記したものをライブハウス側に提出する必要がある。入場の際にはしっかり検温もされ、好きな数字を言うだけになっている名ばかり検温よりもよほど丁寧に実施されていた。この他にも、1枚300円程もするフェイスシールドを来場者に対し無償で配布したり、ライブハウスの主な収入源であるドリンクをカップではなくペットボトル(お茶 or 水の500ml)でドリンクチケットと交換したりと、考えられる対策は全て実施している姿勢が感じ取れた。開場時間が17時であったことや、終演時間が19時半頃であったことなども、ライブハウス側の配慮だろう。
 そしてやることが多いであろうにも関わらず、ライブハウススタッフの方々は慣れていない筆者に対してとても丁寧に接してくださり、また私の疑問・質問にも丁寧に答えてくださったことには頭が下がる思いである。この場を借りて改めてお礼を申し上げたい。

 *当日配布されたフェイスシールド

演奏者側としての対策・配慮

 ライブを行う側の配慮も、今回は特に強く感じられた。まず声を出してはいけないのである。ライブに行ったことが一度でもある人にはご理解頂けると思うが、演奏中のコール&レスポンス、アクターを呼ぶ声、感激の声、様々な歓声がライブハウスではつきものである。しかし今回のライブでは原則発声禁止で、曲中・曲間に歓声が上がることはなかった。アクターを見に来る女性がよっぽど多いであろうヴィジュアル系のライブで、だ。実際男性の来場者数は筆者含め3名ほどしかいなかったように見えた。
 また観客同士の距離もソーシャルディスタンスが保たれているのである。実際元々のキャパシティ300人に対して、100~150人ほどしか入場していなかったようであった。普段揉みくちゃになることの多いライブという場所では、考えられないほど距離感があるのである。筆者の体感としては、朝の通勤電車の方がよっぽど人が密接していると思ったほどだ。アクターも無理に煽ることはなく、その場から動かないように振り付けを踊るよう指示したりと、配慮に満ち満ちたライブであった。普段は強気なほどに煽るバンドであるのに…。
 曲と曲の間、たまにMCが入っていたが、その時には会場内にある空気清浄機が全力で稼働し、また入り口と出口の扉が開かれていた。本来であればMC中とはいえ公演中に扉が開くことなど防音上の都合等で考えられないのだが、これも感染症対策のひとつとして講じるべきと判断された内容だったのだろう。

 これまで述べた対策内容に関しては、何よりも観客の理解がとても深いと思う。対策を長々と述べてきたが、当然ながら反故にする人がいれば何の意味も為さない。イベントという一種のお祭りにしては、来場者と出演者、また会場の意思がかなり統一された空間だと感じた。

 とはいえ、公演内最後のMCでボーカルが言った「しみじみライブって良いな」という一言には、演奏できる楽しさを噛みしめると共に、従来の演奏が出来ないことの歯がゆさも感じられる一節であったように思えたのは、筆者の考えすぎだろうか。

総括

 これまで述べた内容が、このコロナウイルス影響下におけるライブハウスのひとつの回答である。もちろん対策がなされていても、クラスターが起こらなかったとしても、まだまだこうしたイベントを行うには時期尚早だと思う読者の方も数多くいると思う。その考えを否定するつもりは毛頭無い。感染症が根絶された世界で、何一つ不安無くライブを心から楽しめる世界になってからでも良いのではないかと思う人もいるだろう。ただ、必死に知恵を絞って、なんとか飯を食おうとしている人たちがいて、今回のライブの開催に漕ぎつけることができたということも事実である。その努力を広める一つの要素になればいいと思い、本記事を書いたつもりだ。不当な批判や被害がなくなり、少しでも現場の努力や知恵が実を結べばいいと、心から願っている。

所感

 ここからは本当にただの感想になる。
 ヴィジュアル系のバンドに来る女性(いわゆるバンギャ)は、イメージ的に少し熱狂的な方が多いと思っており、過去何度か行ったライブでも激しく髪を振り乱したり、大声をあげたりしていた方が多かったので正直今回のライブでも少しトラブルがあるのではないかとワクワク…もとい、ハラハラしていた。だが見事に統率されてライブに参加していた彼女らには、その対応の柔軟さに驚くことしきりであった。愛すべる対象が目の前にある女性というのは、実はとても理性的で冷静なのかもしれない…。

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