【お茶師日記7】 お茶師と体力
2019年 5月17日
お茶師は茶工場の中で、どのような労働をしているでしょうか。
自動化していない製茶ラインの場合、お茶師は茶葉の状態をチェックし機械を調整することや、取出し(次工程への搬送)のタイミング判断のため、機械から機械へと動き回っています。また、生葉の集荷場、荷造り場、事務所へ行ったり来たりしています。
ほぼ8時間の勤務で何歩くらい歩くかをスマホアプリで計測すると、自分の場合毎日2万歩程度です。また葉打機や粗揉機では茶葉のチェックや、取出しの際の掃き出しのため、毎回踏み台を上ったり下りたりします。本当はそんなに動かなくてもよいのかもしれませんが、私の場合いろいろ心配になって無駄な動きが多いのです。
全身の筋肉に負荷のかかるような仕事は少ないのですが、手で茶葉を握ったり、指先で強くこすり合わせたり、箒で掃きだしたりするには握力と手首を酷使することになります。おかげで、茶期が始まってから、右手がしびれたような感覚と手のひらや手首の痛みが続いています。そして製茶に入ったら決まった休憩時間も昼休みもないため、気が付くと8時間全く飲まず食わず、ということもあります。おかげで体重が3キロほど減りました。
茶期も終盤になり、我が茶工場は180キロ型自動ラインがフル稼働で、自分が主に担当するマニュアル式120キロラインは、小口の受託加工と遅場所の多い人の持ち込みだけになりました。
5月17日に少し長時間製茶し、この日で私の一番茶の出番は終了となりました。相変わらず失敗は多く、最終日はまた大きなミスをしてしまいました。1つのホイロで、粗揉機での風量調整をかなり少ない設定にしたままにしてしまい、水分が非常に多い状態で揉捻機に入れてしまいました。揉稔機の揉盤がぐっしょり濡れているので気がつきました。ちょうど工場に来ていた機械のエンジニアに相談し、すぐに揉稔機から取り出して一度中揉機へコンベアで送り、スルーさせて再度粗揉機へ戻す、という私には思いつかない操作をして何とか事なきを得ました。
他にも最後の2日間は、何度も蒸機の投入口に生葉が詰まって溢れてしまう現象が起きました。終盤は芽の大きさにばらつきが大きく、非常に尺の大きな芽が含まれてきたためです。蒸機への投入流量を適切に調整すればいいのですが、あまり流量を抑えると能率が低下してしまうため抑えたくない。そのせめぎ合いの結果です。このように、相変わらず毎日が不具合や思わぬミスの連続で茶期を終えました。
私のような「なんちゃって茶師」と経験を積んだ生産者の違いは何でしょうか。
1つは、思わぬ現象が起きたとき、ラインや機械の構造から、どのように対処すべきかを経験的に蓄積していることです。機械の調整はもちろん簡単な修理はやってしまいます。
もう1つは瞬発力と持久力だと思います。作業や機械の操作(取出し、着火、調整)を非常に手早くこなし、個々の動作に時間をかけません。例えば、私は精揉機の着火や温度調整に非常に時間がかかり、その間に他の機械の調整が遅れてしまうことが度々ありましたが、彼らはそれを素早く的確に行います。これを瞬発力とすれば、持久力とは、朝、摘採をして生葉を搬入し製茶作業を夜遅くまでしても作業がぶれないことです。遅くなって動作が緩慢になったり、ミスをしたりということが見られません。
つくづく、プロだと思います。