いつもの音楽ホールで展覧会を見てきた話
この2~3年は、とんとコンサートに足を運ばなくなった。我が家が緊縮財政を敷いているからというのもあるが、美術館ボランティアを初めたり、美術展ライターの仕事を始めたりして、それまで音楽に割いていた時間がごっそり美術館へ足を運ぶ時間へとシフトしたのが理由としては一番大きい。
ところで、名古屋近郊で活動している「フィアールカ管弦楽団」というアマチュアのオーケストラ団体がある。もともとは「四季オケ」としてグラズノフの「四季」を演奏するために立ち上げられた楽団だけども、無事に最初の演奏会を成功させた後、名前を変え、ロシア系の楽曲を中心に据えたプログラムで演奏している。
実は知り合いが何人かフィアールカで活動しており、演奏会のプログラムが何であるかとか、練習の様子などがSNSで流れてくる。昨年のメイン曲はシェラザード、ことしは展覧会の絵とプロコフィエフ7番(難曲)。それで、勝手に親近感を抱いていたところ、うまいことタイミングが合って先日10月8日の演奏会にお邪魔することができた。
先に謝っておくが、どうせアマオケだし熱と勢いで乗り切る演奏かなーと最初は少し見くびっていた。が、その予想は嬉しい方に外れることとなる。
オープニングはボロディン「韃靼人の踊り」。
冒頭のホルンちょっと自信なさげだな頑張れ~と、最初は気楽に応援していた。だが、曲が進んで場面が変わった頃から音楽が化けた。
おや? 中央アジアの草原が見えるような……? げっ騎兵隊がやってくる!
どんちゃん騒ぎ来たー! やれやれ去ったか。あ、また来た!
という具合に見える、見えるんです。
続いて手強いプロコフィエフ7番。管楽器群は全体的によくやっていたし、何より低音域と打楽器チームが安定しているので、難曲ではあるが、安心感をもって聞くことができた。
最後はみんな知ってる「展覧会の絵」。ムソルグスキーが画家の友人の遺作展を見て得たインスピレーションをもとに作曲した作品だ。具体的に10作品の絵を音楽にしている。これこそ、音楽から「絵」が見えなくては話にならない曲だが、フィアールカはちゃんと展覧会を見せてくれた。フィナーレの「キエフ(キーウ)の大門」では、威容を誇る大門の前に立っているような心持ちになり、現在のウクライナ情勢を思うと切なくなった。
画が立ち上る音というのは、上手い下手とはあまり関係なくて、もちろん音程やリズムが合っていることは大前提だが、それだけでできるものでもない。表現力が豊か、というのも少し違う。たぶんセンスの問題……と言ってしまうと話が進まないので、もう少し具体的に書くなら、演奏する側が曲の内容を映像として脳内に描くことができればそれが自ずと伝わるというか、そのためには、曲の読解力が重要になってくるということ。
今しがた「センスの問題」と書いたばかりだが、実際、フィアールカは全体的にセンスのあるオケだと思う。音楽だけでなく、パンフレットのデザインの秀逸さとか電子チケットが使えるとか、若い人が頑張っていい具合に目配りがきいている。さらに特筆すべきは、女性奏者の服装。黒服ではなく、鮮やかなドレス姿で実に華やか!
きっとB型率が高くて(※)居心地がよいオーケストラなのだろうな。
(※注 今の時代、いわゆる血液型占いにはなんの根拠もないことがわかっています。「B型=マイペース、変人」という推測は、たとえ事実がそうであったとしても控えましょう)
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