黒壁スクエアで食べ歩き……ではなく
長浜という街は、愛知県民の間ではあまり知られていないと思う。戦後時代や武将に詳しい人たちの間では、石田三成の出生地として有名だろう。琵琶湖北東部に位置し、北国街道や中山道が通ることもあって交通の要所として、また長浜城の城下町として古くから発展してきた。
現在はどうかというと、歴史的名所はもとより、琵琶湖という観光資源にも恵まれ、放っておいても人が集まりそうだが、さらに観光客がお金を落としていく場所が用意されている。それが黒壁スクエア。古い町並みを生かした飲食店や体験スペースが軒を連ねる。今風の店もあれば昔から連綿と続く商店もあり、外から来た者の目にはとても興味深く映る。
また、黒壁スクエアの中だけでも、オルゴール博物館、海洋堂フィギュアミュージアム、長浜市曳山博物館、ガラス作家のギャラリー&販売スペースなど、気軽に体験したり見学して楽しめる場所も多い。少し足を伸ばせば長浜城歴史博物館やヤンマーミュージアムなど、がっつり学んで遊べるところもある。さらに、水陸両用バスによる観光ツアーもあったりして、遊び尽くそうと思ったら一日では足りないぐらいだ。
名物料理も近江牛を使ったハンバーグに鮒ずし、鯖素麺、のっぺいうどんなどこの土地ならではの料理がたくさん! うっかり今風のカフェでお昼を取ったことが悔やまれる。(ただ、どこも値段に比してボリュームが少ないと感じたのは、昨今の値上げラッシュの影響なのか)
楽しそうなところは数多いが、最大の収穫は「お灸」との出会いだった。少し前にネット記事で体調管理にお灸が効果的という話を見たばかりで、なんとなく気になっていたところに、「お灸の無料体験」という看板が目に入ってきたのだ。せんねん灸のお店だった。疲れなら身体のあちこちに溜まっている。試してみたいツボには事欠かない。
というわけで、ドキドキしながら無料体験を申し込んだら、忙しそうにしていたおばちゃんが手慣れた感じですぐに引き受けてくれた。火を使わないカイロみたいなタイプ、熱くない初心者向けのタイプ、お香のような匂いのアロマ系のタイプなど、注意事項を話ながら色々試してくれて、ツボの見つけたのコツも教えてもらって、これは買うしかないでしょう、という感じでアロマ系100個入りをお持ち帰り。あとで紙袋の中をのぞいたら手引書のほかにオマケとしてお試し用お灸がいくつも入っていた。いい感じの商売だなあと思った。
長浜だけでなく、米原や彦根を見て回ると豊かな土地だなあと感じる。目につくのが農地の多さと古くて立派な家の多さだ。資源と交通路を兼ねた琵琶湖の影響が大きいのだろうけど、長年にわたる経済的な余裕と人の行き来があってこそ文化も育つのだろうな。ごく当たり前のことかもしれないけどね。