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9月の「これ見てきたよ」シリーズ
最近、立て続けに規模小さめの展示や演劇を見ることがあって、思うところはあるものの、あまりきちんと紹介できないので、備忘録を兼ねてざっくり書いておく。
・小劇場系の劇団(オイスターズ)による野外劇鑑賞。プロの集団だけども、恐らくそれだけでは食っていけない世界なのでは…? と想像する。技術はしっかりしていて、安心して演じられる世界に入って行ける。ただ、その作品世界はちょっと独特な感じ。底に流れる思想は現代を反映している部分あり、時代遅れに感じる部分あり、絶望と開き直りがチラチラ見える自虐ネタあり。中の人達はどんな気持ちで演じているのだろう。場所は笹島ライブ駅を降りてすぐ、一号公園と呼ばれるところ。お洒落なSCやSCと見紛うつくりの大学、高速道路や高架線路に挟まれた…というよりは囲まれた、中川運河沿いの公園で、非常に面白い立地だった。笹島ライブ駅周辺はお洒落なビルが並ぶだけでなく、高速道路や線路や運河などが交わるため、非常に立体的で近未来風な街になっている。
・小泉八雲『怪談』にインスパイアされて版画や写真作品を制作した、日本とアイルランドの画家たちの作品を紹介する展示を見た。作品数40点と小規模ながらも全国を巡回する予定とのこと。クオリティは高く、個人的にはとても好きなテーマだ。しかし世間的にはニッチすぎて集客には苦労しそう。だからギャラリーではなく、あえて複合施設である文化の家で開催し、アイルランドフェスと同時開催に持ち込めたのはラッキーだったと思うし、それを見込んで愛知会場として文化の家を提案した人はさすがだと思った。戦略大事。
・豊田市民芸館へ「ある鑑賞家の眼」を見に行く。こちらも骨董をメインに持ってきた渋い内容で「大人気!」というわけではないが、ぽつぽつと途切れなく来館者はあり、内容は超一流。有名作家の作品ではなく、収集者本人が「良い」と思って集めたものを展示しているので、無名の品であれ来歴のはっきりしたものであれ、必ず心惹かれる何かを持つものが揃っている。ひたすら「……良い」と感嘆のため息をつくか「可愛いー!」と黄色い声をあげるか、仲間たちと「このお皿には何を盛りつける?」で盛り上がるなどしていた。もともと古民家をギャラリーにしているので、展示スペースは決して広くないし、点数もそんなに多く出せるわけではないが、少数精鋭の展示で見せ方が素晴らしい。茶室で一服できるのも良し。
・長久手市内のギャラリーで画家さんの個展。押し入れで眠っていたという若い頃の作品から近年のものまで30年分?くらいの時間の幅がある。作風や技法の変化があって面白いし、その人の精神史みたいなものも垣間見えて興味深い。美術館で見かけるような有名な画家さんではないが、その人を形作っている芯のようなものが見えるところが良い。適切な例えかどうかわからないが、アマチュアで小説を書く人たちの作品と同じような匂いがする。個人の内的世界と外の世界がうまく折り合わなくて摩擦が起きているような感じ。それで懐かしくなってつい、自家製本の絵本を買ってしまった。もちろん、ささやかな投げ銭的な意味もある。
・世の中には、美術館や大きな劇場で作品を発表する機会のある有名なアーティストがいる一方で、アマチュアとして作品を作ったりコンサートを開催する人たちも多くいる。さらに、この両軸の中間、第一線で活躍するプロとアマチュアの中間にいる作家も少なからずいる。例えば、芸術大学を出たが一般企業に就職し、趣味として作品作りを続けているが本音は作家として自立したい人たち。その人達の受け皿となるギャラリーや展示施設、あるいは発表できる場が十分に確保されていると文化が豊かになるだろうなと思う。
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